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RailCologne [ドイツ鉄道 書籍]

 ドイツの大きな駅の書店に入ると、必ずといって良い程、鉄道コーナーがあり、所狭しと書店やDVDが並んでいる。日本の鉄道書に比べると、ドイツの鉄道書は一つのテーマを深く掘り下げたものが多く、資料性の高いものが多いように感じる。今回紹介する"RailCologne"はその名の通り、ケルンの鉄道、それもケルンの象徴である大聖堂を中心に、わずか数kmの範囲の鉄道に特化した本である。
 私は定期購読しているToday's Railwaysの書評欄でこの本の存在を知った。ドイツ語に加え、英語での解説も加えられているとのことで興味をひかれたが、マイナーな出版社から出ているためか、amazonなどでも扱っておらず、ドイツの鉄道書専門店に注文して、この度ようやく入手することができた。その内容は、これまで購入したドイツの鉄道書の中でも、最高と感じる素晴らしいものであった。

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 "RailCologne"の副題は"Eisenbahnstadt Koeln, Railway City Cologne"である。最初はケルンが鉄道の街?とも思ったが、この本を読み終えると、まさにケルンこそ鉄道の街、と思えるから不思議である。私自身も2005年から2007年の間にドイツに3回行った中で、MuenchenでもBerlinでもなく、Koelnだけは3年連続訪れ、行き交う列車を眺めたのであった。そんなケルンの鉄道に、様々な視点から迫ったのがこの一冊である。
 本書はドイツ鉄道の全面協力のもと、2年かけて制作された。240ページに280枚の写真が収録されており、一般人では立ち入れない場所からの貴重なものが大半を占めている。解説もドイツ語と英語の2ヶ国語となっている点が嬉しい。
 冒頭はケルンの様々な鉄道シーンを捉えた写真で始まる。

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 最初の章は、ケルンの鉄道の黎明期についての解説である。ケルンに最初に鉄道が開通したのは19世紀前半である。"RailCologne"は写真集と表現しても良いくらい写真中心の構成となっているが、さすがに19世紀の写真は限られているのだろう、この写真についてはテキスト中心の構成である。しかし、この章を読むと、現代のケルンの鉄道が様々な私鉄を統合した結果生まれたものであることが理解できるのである。それに旧ケルン中央駅の建造中の写真など、少ない写真はなかなか価値がある。

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 第2章は19世紀末から第二次世界大戦前までに、発展してゆくケルンの鉄道を扱っている、この時代になると、写真も増える。本ブログでも紹介したHohenzollern橋のオリジナルの姿も、図面と共に詳細に紹介されている。さらに、Ep.IIで活躍する蒸気機関車の数々を眺めるのも、なかなか楽しい。

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 第3章は、第2次世界大戦で壊滅的な打撃を受けたケルンの鉄道の、戦後から1950年代にかけての復興の歩みを紹介している。Hohenzollern橋も深刻な被害を負ったが、それでも1946年には橋の末端部分がケルン中央駅の入替用に使われている写真もあって、実に興味深い。さらに、41形が牽引するLorely-Expressが中央駅を発車する写真など、模型ファンにもたまらないだろう。

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 第4章は、この本の大きな特徴の一つである。この章はケルンの鉄道を空撮映像で紹介している。1枚1枚の写真を眺めるのは本当に楽しい、路線図と共にこの章の写真を眺めれば、ケルンの鉄道の構成が非常によく理解できることだろう。空撮映像を盛り込むという発想にはただ脱帽するほかない。

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 次の章以降はケルンに集まる各路線と要衝となる駅を紹介しており、この本のメインと言うことができよう。。以下に章立てを示す。
- Frechen-Koenigsdorf - Cologne-Ehrenfeld
- Stommeln - Cologne-Ehrenfeld
- Dormagen - Cologne-Nippes
- Cologne-Nippes Junction
- Leverkusen Centre - Cologne-Muelheim
- (Leverkusen-)Opladen - Cologne-Muelheim
- Bergisch Gladbach - Cologne-Muelheim
- (Cologne-) Porz-Wahn - Cologne/Bonn Airport - Cologne-Kalk
- Bruehl - Cologne-Eifeltor
- Marshallig Yard Cologne (Cologne-)Gremburg
- Cologne-Messe/Deutz - Cologne Deutzerfeld
- Marshalling Yard Cologne-Kalk North - Cologne-Poll - Harbour Cologne-Deutz
- Cologne-West - Cologne South - South Bridge
- Cologne Main Station
- Private freight lines and industrial sidings

 どの章も、1ページ程度でその区間の歴史と現状を概説し、ポイントとなる個所の写真を数ページにわたって掲載する構成となっている。解説は決して詳細というわけではないが、多彩な写真とそのクレジットだけでも十分に楽しめる。また、写真は2008年以降に撮影された新しいものが中心であるが、何点か蒸気機関車の時代の写真も収録されているので、往時の雰囲気を味わうこともできる。
 これらの中でも興味深いのは、Cologne-NippesやCologne-Muelheimなどのジャンクションである。ケルン中央駅付近にいるだけでは到底理解できなかったが、ケルン周辺は様々な路線が入り乱れ、様々な旅客列車・貨物列車が複雑に合流・分岐すること、そして中央駅で見られるのは旅客列車のごく一部に過ぎないことがよく理解できるのである。また、Cologne-Grembergの操車場の写真は貨物列車ファンにはたまらないだろうし、ケルン中央駅の北西に広がる車両基地Betriebsbahnhof、Deutzerfeldの車両基地、Opladenの車両解体工場、私有企業による専用線なども非常に興味深い。中央駅についても、我々が普段から目にする駅構内は勿論のこと、信号所から、構内放送を担当する女性の写真まで収録していて、その視点の多彩さには驚かされるのである。巻末には廃駅などの写真も収録されている。

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 嬉しい配慮としては、付録としてこの本の内容に沿った地図が添付されていることである。地図を眺めながら、一ページ一ページをめくれば、間違いなく時間を忘れて没頭できることと思う。

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 なお、本書の紹介や、補足資料は以下に掲載されている。
http://rail-cologne.de/

 本書は「ケルンの鉄道」というテーマを通じて、まさにドイツ鉄道の魅力を感じられる良書である。本書を見終えて、私は次回ドイツに行く機会に恵まれたら、ケルン周辺をじっくり探訪しようと強く思っている。

BUNTE BUNDESBAHN - Die farbigen Jahre der DB 1980 bis 1993 [ドイツ鉄道 書籍]

 ドイツ鉄道の魅力というと、大型の蒸気機関車と、様々な客車列車を思い浮かべることだろう。1980年代はTEEも殆どなくなり、ドイツ鉄道にとって決して華やかではないが、全国で客車列車が走り回り、いかにもドイツらしい鉄道シーンが展開された時代とも言える。1980年末から1984年秋までドイツに住んだ私にとっても、1980年代のドイツ鉄道には特別な思い入れがある。
 最近、定期購読しているToday's Railwaysの書評欄で紹介されていた"BUNTE BUNDESBAHN"はまさにこの1980年代のドイツ鉄道を扱っており、早速購入した。

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 “BUNTE BUNDESSBAHN”は1980年~1993年という、ドイツ連邦鉄道Deutsche Bundesbahn末期をテーマにした写真集である。解説はほとんどないが、その代わりカラー写真が豊富に収録されており、車両のイラストも随所に盛り込まれている。
 少し変わっているのが、章立である。第1章は緑・青・赤一色に塗られた機関車達を扱っている。110形、151形、218形といった、現在も活躍する機関車の写真も収録されているが、特に興味深いのは1980年代初頭で引退したE94、E18、V200といった古典機の最後の活躍ぶりである。

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 第2章は近郊輸送・ローカル輸送で活躍した列車を扱っている。Schienbusに貨車を連結した編成など、直ぐにでも模型で再現したくなる。さらにE94、145形などの古典機から、212形、215形、110形など様々な機関車にけん引されたSilberllinge客車の編成、420形電車、614形気動車、当時の新型S-Bahn編成など、地元の足として活躍した様々な列車達の姿を眺めるのは実に楽しい。
 第3章はいわゆるタルキス塗装の車両を特集している。タルキス塗装は地味な塗装であるが、どの機関車にもなかなか似合っているし、ドイツの風景に非常によく溶け込んでいる。

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 第4章はIC特集、ここでの主役は言うまでもなく103形である。1980年代のフラッグシップだけのことはあり、写真の点数も多いところが嬉しい。もちろん、110形や111形牽引のICの写真も掲載されているが、その中でも103がたの美しさは格別である。

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 第5章は昼行・夜行の長距離列車を扱っている。この書籍の中でも、写真が最も面白いのはこの章であろう。雑多な客車を連結した国際列車は、ヨーロッパ鉄道ならではの魅力である。そして、それらD-zugを牽引する110形や111形の写真を眺めると、これらの機関車の全盛期がまさにこの時代だったと感じさせる。

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 第6章は国外で活躍するDBの機関車がテーマである。主役は181.2形であるが、110形や111形、E94などがオーストリアを走る姿もなかなか魅力がある。ドイツに住んでいた頃、E94を見た記憶は全くないのであるが、1980年代前半はまだまだE94が活躍していたのである。
 最後の第7章はドイツ鉄道の新塗装を扱っている、すなわち、各機関車に施されたOrientrot塗装から、IC、IRからローカル用車両、S-Bahnまで、様々な車両の新塗装を紹介している。現在、Orientrotの機関車は既に数えるほどしか残っていないことを考えると、これら比較的新しい写真もなかなか貴重である。そして、今になって振り返ると、この時代の塗装も、それはそれで味わいがあると感じるのである。

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 この書籍に収められた写真には特別な列車も特別なイベントも登場しない。一枚一枚の写真はあくまで日常の鉄道風景を切り取ったものである。しかし、鉄道の最も美しい姿は、日常当たり前のように走る姿であると思う。そして、”Bunte Bundesbahn”は80年代を走り抜けた車両達の日常を鮮やかに蘇らせてくれるのである。

Bahn-Jahrbuch 2010 (BahnExtra 1/2010) [ドイツ鉄道 書籍]

GeraMondから毎年6回出版されるBahnExtraは豊富な写真と程良い解説を収録し、ドイツの鉄道誌の中でも好んで購入している。毎年、最初の号はBahn-Jahrbuchと称して、前年のトピックスを的確にまとめた年鑑となっており、特に重宝する。先日、その最新号を入手したので、簡単に紹介したい。

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表紙は、2009年にICE代替列車で活躍した103 245である。

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巻頭には動力車の最新の配属先をまとめた小冊子が付属する。現代ドイツ鉄道の車両ファンには有用であろう。2009年1年間の様々なトピックスに関連した写真に続き、DBの2009年について概説している。

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経営状況やMehdorn氏からGrube氏への社長交代、経営上の問題、さらにGrube社長へのインタビューも収録している。

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大きなページを割かれているのが、車軸問題に端を発したS-Bahn Berlinの混乱である。問題の原因や対応などの解説は勿論のこと、趣味誌らしく、Berlinで代替列車に活躍した車両たちも紹介している。


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同じく車軸問題で混乱にしたICEについての項もあるが、昨年詳しい解説がなされているためか、今回は代替列車に使用された車両の紹介が中心である。

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引退が近い110/139/140形、引退したもののトラブルに苦しむ610/612形の代替用に復活した614形、さらに火災事故が相次いだRegioShuttle RS1と車両関係の記事が続く。

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新型車両は2009年は少なかったが、Voith Thurbo製液体式ディーゼル機関車Maxima、さらに何と昨年Meiningen工場で新製された蒸気機関車99 2324が紹介されており、比較的マイナーな車両たちであるが、興味深いところである。

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この後はドイツ鉄道の1年間を、分野ごとに整理している。日付順にまとめられていて便利である。DBだけでなく、民間運営会社、鉄道事故、鉄道産業の動向、保存鉄道まで整理されている。また、ドイツだけに限らず、スイス・オーストリア・さらにヨーロッパ諸国を中心に、世界のおもな鉄道ニュースについても触れられているが、日本については0系の引退が短く伝えられているだけであった。

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最後に2010年の鉄道に関する主な予定がまとめられているが、特にドイツ鉄道175周年に関する主要イベントの一覧表は重宝するところであろう。

最後にこの本で紹介された主なトピックスを簡単にまとめておこう。

<2009年トピックス>
DB全般
・Mehdorn社長辞任、Grube社長就任

DB旅客輸送
・S-Bahn Berlinの混乱
・ICE車軸問題

DB貨物輸送
・RailonからDB Schenkerへの名称変更
・車両刷新の進行

車両
・423形や143形+x-WagenがBerlinでS-Bahnの補完列車として運用
・103形や110形、DB Cargoの182形、MRCEのTaurusがICE代替列車に運用
・引退が迫る110/139/140形
・火災事故が相次いだResioShuttle RS1
・Meinigen工場で新型SL完成 (99 2324)
・182形DB Regioに移籍、RE Cottbus-Leipzigに投入
・440形の本格運用
・Bombarider製TRAXX F140MS、186形登場
・611/612形のトラブルと614形の復活
・ICE 1/ICE 2置換用のICX計画
・Talgo引退
・110/139/140形に引退が迫る

鉄道産業 (発注)
・ICE 3・改良車を15編成発注
・S-Bahn Stuttgart用430形を83編成発注
・Franken地方やHessrn地方向けにTalent 2をはっちゅう

ドイツ以外
・Cisalpino AG消滅
・Wien Hauptbahnhof建設工事
・イギリスで392形運用開始

2010年の予定
・ドイツ鉄道175周年 (様々なイベントが予定)
・ADLER復活予定
・Talent 2デビュー
・247形ディーゼル機関車は登場
・Hamburg-Koeln-Express運転開始 (車両は元OeBB 4010形)
・Hamburg S-Bahn用474形改装

InterCityExpress - Die Entwicklung des Hochgeschwindigkeitsverkehrs in Deutschland [ドイツ鉄道 書籍]

EK-Verlagの発売する車両解説書は、豊富な写真と共に、歴史、技術からデザインから、運用まで非常に幅広い解説を詳細な資料とともに掲載している。数年前からEisenbahn Kurier誌ではICEの解説書の予告が出ていたが、首を長くして待っていたが、延期に次ぐ延期の末、この度ようやく発売になった。

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この本では、最初に高速列車の開発史を概説している。19世紀末からはじまるドイツにおける電車や気動車の歴史はもちろんのこと、フランスの鉄道高速化の歩みについては非常に詳しく紹介されている。鉄道において、フランスはそれほどに大きなライバルである、ということなのかもしれない。一方、新幹線に関する記載は比較的あっさりしている、面白いのは唯一の日本の写真がJR東日本の試験車"Star 21"である点である。さらに高速新線の建設やトランスラピッドにもページを割いている。

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続いて、ICEの車両毎の解説へ移る。車両解説の全体的な特徴として挙げられるのが、その車両の開発に至るまでに登場した試験車両を詳しく紹介していること、そして開発過程で検討された様々なデザイン案(外観・車内共)が多くのイラストやモックアップともに紹介されていることである。もちろん、図面や諸元表も収録されているし、製造中の写真も豊富である。台車やパンタグラフ、電機部品などもそれぞれ紹介され、技術解説も万全である。
車両解説のトップバッターとなるICE-Vは外観から車内、さらに機器の類まで丁寧に解説されているが、例えば車体構造は勿論として、シートの構造まで詳しい解説がなされているのは驚くほかない。そして、1985年の公開から、試運転、さらに引退までの足跡も美しいカラー写真とともに紹介されている。TGVとの関係について触れられており、DBが一時TGVの導入を一時検討したことを紹介し、ICE塗装を施されたTGVの図面まで掲載している。

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最初の営業用車となるICE 1の項で、何といっても面白いのはICE 1のデザイン案である。何と、Pininfarinaによる外観のデザイン案が掲載されているのである。そのデザインは、何となくETR450を思わせる。もちろん、実際のICE 1の方が私は好きであるが、貴重なイラストであることは間違いない。
ICE 1の項も技術解説に多くの項が割かれているが、その後に続く試運転の様子が興味深い。営業運転については、最も歴史があるだけに、他の車両に比べても特に詳しく紹介しており、アメリカツアーも4ページにわたって特集している、さらに、これまで行われた改造工事や更新工事の解説、そしてEschede事故についてもページが割かれている。

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ICE 2にも基本的にICE 1の項と同じ構成で、ICE 1との相違点には特に強調されている、車内情報案内装置まで詳細に解説されているのは安心するほかない。営業運転についても、当初存在した2編成から制御客車を除いて連結した長編成列車に始まり、Berlin-Hannover高速新線を軸とした営業運転について紹介し、最後に台湾高速列車受注のためのPRに運転された、TGV Duplex用中間客車を連結したEurotrainについても触れている。

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ICE 3の項は、試験車ICE-Sが最初に詳しく紹介され、その後デザインについての解説が続く。こうしてみると、現在のICE 3のデザインも、様々な案の積み重ねの上に存在することがよく理解できる。国際運用を含めた様々な運用はもちろん、最新の本だけに、Koeln脱線事故から始まる車軸問題や、スペイン・中国等への輸出についての解説や、2010年に登場予定の3次車(407形)の解説も、想像図とともに収録している。力が入っているのは、Paris直通に向けての、試運転に関する記載である。この直通運転が実現されるまで、以下に大きなエネルギーが割かれたか、ということが伝わってくる。

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ICE-Tの項はPendolinoから始まる振子列車の開発史から筆を起こしている、面白いのは様々なデザイン案、特に先頭同士を連結した場合の貫通路の案は、実車が貫通路がないだけに非常に面白い。大きな変更が加えられたICE-Tの2次車の解説や、オーストリア直通を含めた詳細な運用に関する記載も詳しい。ICE-Tは風光明美な場所をはすることも多く、実際収録されている写真も特に美しいものが多い、この項で最も目を引くのは、DBがSBBで活躍するICNを導入することを検討した際に用意されたと思われる、ICE塗装を施されたICNの想像図である。なかなか悪くないデザインである。続く、ICE-TDの項では、デンマーク直通という最新の話題も、最新の豊富な写真とともに詳しく紹介されている。

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現役車両の解説に続いて、2階建て車両や広幅車体など、次世代ICEの様々な案が、定員や重量との試算とともに解説されている。次世代のICEの具体像はまだ見えていないが。様々な検討がなされていることが伝わってくるのである。
最後に用語解説と年表、さらに車両リストが収録されている。

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全体として、専門家でも満足できるであろう詳細な解説を行いながら、美しい写真を豊富に収録し、比較的気軽に楽しむことができる。ICEの解説本の決定版、といっても決して過言ではない一冊である。

Neubau-Dampfloks (Eisenbahn Journal Sonder-Ausgabe 4/2006) [ドイツ鉄道 書籍]

RiGで最も手薄な分野が蒸気機関車であることは否定できないところである。それというのも、蒸気機関車は技術的に難解でについてはやや敷居が高く、まとめるには労力が要ること、さらに篠原正瑛著「全盛時代のドイツ蒸気機関車」という圧倒的な名著がすでに存在しており中途半端なものを作っても・・・という思いがあるからである。とはいえ、蒸気機関車には抗しがたい魅力があるのも否定できない。黒い車体の中で華やかでいながら重厚な赤い動輪は、格別な美しさが感じられるのである。鉄道模型でも蒸気機関車は特別な存在である、煙を吐き、サウンドを響かせて走る蒸気機関車を眺める楽しさは、電機にはない。
蒸気機関車まで手を出したら、いよいよ鉄道趣味に際限がなくなるので、私は長らく深入りするのを避けてきたが、最近いろいろな蒸気機関車のモデルを見ているうちに、興味をひかれるようになってきた。そんな中で購入したのが、この一冊である。

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Eisenbahn Journalのこの特集号は、いわゆるNeubaulokを特集したものである。これは戦後、ドイツ連邦鉄道DBが、DRG時代から活躍する蒸気機関車を置き換えるために開発した機関車を特集したものであり、具体的には10形、23形、65形、66形、82形を紹介している。これらの機関車には、ネジを用いない、溶接で製造された罐をはじめ、様々な新技術が応用され、従来の機関車にない高性能を実現した。しかし、すでに蒸気機関車の時代は終わりつつあった。唯一23形は105両が製作され、蒸気機関車の時代が終焉を迎えるまで活躍したが、その他の機関車は製造両数も少なく、活躍期間もわずかであった。

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そんなNeubaulokを紹介した本書は、比較的オーソドックスな構成となっている。巻頭に現役時代の姿をとらえたグラフを配し、開発の経緯や新技術の内容を貴重な写真とともに紹介している。図面や、完成当時の形式写真も豊富に収録し、それらを眺めるだけでも大いに参考になる。詳細な諸元表はもちろん、機関車の価格まで掲載されているのは興味深い。

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運用に関する記載はこの本の中でも最も素晴らしい部分かもしれない。運用全般の概説に続いて、機関区ごとに配置車両の変遷を詳細に記している。例えば、23形がF-Zug "Rheingold"や"Lorely-Express"を牽引していたことなど、大変興味深い。急行用の10形は実働年数が約10年、どんな運用に就いていたのか、興味を持つ向きも少なくないだろう。
ところで、運用の項を読んでいると、特に23形は配置機関区がこまめに変わっており、電化の進展に伴い、蒸気機関車の活躍する範囲が次第に狭まっていく様が伝わってくる。Neubaulok達が本来期待された活躍を十分できなかったのは何とも惜しいことである。

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各形式の保存機の現状についても紹介されている。比較的車齢が若いこともあり、23形などは動態保存されている機関車も少なくなく、これらが走る姿を眺めたい向きには大いに参考になるであろう。しかし、DBが製造した最後の機関車23 105はNuernbergのDB Museumの火災で大きな損傷を受けてしまったが。

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最後に各ゲージ、各形式の模型についても触れられている。

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01や03、あるいは44など、DRG時代から活躍する機関車を差し置いて、とりあえずNeubaulokに注目した理由は・・・・察しの良い方には分かってしまうかもしれない。実はDVDも発注してしまった。そのうち、これらの資料を元に、RiGでも蒸気機関車を少しづつ紹介したいと思う。

DB-LOKOMOTIVEN UND TRIEBWAGEN (Eisenbahn-Kurier-ASPEKTE) [ドイツ鉄道 書籍]

 DBの動力車とその所属先をまとめたEisenbahn Kurierの増刊号が発売になった。これは毎年出ているもので、6月1日時点でのリストが掲載されている。

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 構成は毎年ほぼ同じである。冒頭ではテキストで、この1年間の動力車のトピックスをまとめられている。例えば、ICEの車軸問題に関連して、DispolokのTaurusが117形として運行されたこと、Berlin-Warschau間のECの牽引に186形3両が投入されたこと、422形・440形の新規投入、Essen所属の420形の廃車など、3ページにわたって簡潔に触れられ、さらにTEE塗装やタルキス塗装、Orientrot塗装など旧塗装で残る車両のリストも掲載されている。

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その後は各動力車の美しいカラー写真が1~2枚ずつ、そして動力車のリストがひたすら並ぶ。リストは車番と所属先だけ記された、いたってシンプルなものである。


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貴重なのは事業用車やDBの動態保存車両も含んでいることである。

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読んでいて格別面白いというものではないが、資料性は十分である。このようなシンプルな構成なので、持ち運びには便利なので、ドイツ旅行でちょっと見かけた車両を調べるために携帯するにも便利だし、購入した鉄道模型の実車の現状を調べるにも良い。
以前紹介したEisenbahn Atlasと並んで、現代ドイツ鉄道を楽しむには欠かせない一冊である。
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Eisenbahnatlas Deutschland (Ausgabe 2009/2010) [ドイツ鉄道 書籍]

新潮社から発売されている「日本鉄道旅行地図帳」が売れに売れているらしい。新聞やテレビで繰り返し報道され、本屋でも平積みで、現在の鉄道ブームの象徴的である。私も遠方へ出かけるときには持参して眺めている。確かに旅の楽しみが広がり、重宝する存在である。この手の本が人気を博すというのは嬉しい話である。しかし、不満がないわけではない。縮尺が小さくて細かい線形は分からないし、鉄道設備も車庫など非常に限られたものを紹介しているだけで、内容が奥深いとはいえないのである。廃線区間を示すのは良い試みであるが、全体としては地理の授業で使うような地図帳の域を出ないのである。そしてmそのように感じるのは、圧倒的に素晴らしい鉄道地図帳の存在を知っているからである。日本ではなく、ドイツのものではあるが。


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SCHWEERS + WALL社の“Eisenbahnatlas Deutschkand”。その2009/2010年版が昨日Amazonから届いた。私は3年前に古い版も購入したが、その精密な鉄道路線図、そして情報量の多さに驚いた。2007年のドイツ旅行では常に手元に置き、地図を眺めながら、車窓風景の移り変わりを心行くまで楽しんだ。特に、ICE 3のラウンジ席に座った際には、このEisenbahnatlasがどれだけ旅の楽しみを増幅させてくれたことか。


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新版は私の持っている古い版より確実に進化している。シルバーを基調とした落ち着いたデザインの表紙を開くと、ドイツ鉄道のインフラ部門のトップ、Stefan Gaber氏の挨拶が入れられている。ということは、ドイツ鉄道のオフィシャルな性格も持った本ということが出来るのであろう。続いて、古い版では見られなかったドイツの鉄道路線の概説と最新の変化が述べられる。こういう基本情報は案外紹介されることが少ないだけに大変貴重である。

しかし、この本の本領はやはり、その先の地図の部分である。ドイツ全土が1:30000の縮尺の地図上に、鉄道路線が全て載せられている。しかも、幹線の複線・単線、ローカル線の複線・単線、ナロー路線、貨物専用線、休止路線、廃線、建設中路線まで詳細に区別され、ラックレール路線はその旨が示されているし、Kursbuchnummer 時刻表上の路線番号や、各路線の運行担当会社も明記されている。さらに電気方式、駅の区別(旅客駅、S-Bahnの駅、貨物駅など)、工場や保存鉄道も紹介され、トラムやU-Bahnの路線、ロープウェイなども記載、トンネル(全長も含め)、橋梁、電気方式の変更地点、勾配、フェリー区間、空港など、想像できる全てを掲載した鉄道地図帳と言えるだろう。もちろん、山は頂上の標高も記載され、通常の地図帳に近い感覚も十分に残されている。

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大都市部は1:100000、または1:50000の地図も添えられ、痒いところまで手が届くような、実に丁寧な構成である。そして、これだけ内容が充実しているのに、実に地図が見やすいことには感心させられる。ないものと言えば配線図かもしれないが、配線図は細かすぎて、しばしば路線の全体像を見えにくくする。そういう意味でも、この地図は極めてバランスよくまとめられている。

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私はこの本をAmazonで購入したが、国内模型店でも扱っているお店があるようで、入手は比較的容易である。これ一冊で、ドイツ旅行も、あるいはドイツ鉄道の展望ビデオ鑑賞も、何倍にも楽しいものになるに違いない。是非お勧めしたい。

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20 Jahre InterCityExpress (BahnExtra 6/2004) [ドイツ鉄道 書籍]

ドイツの鉄道関連書籍の主要出版社のサイトは時々確認し、ICE関連の書籍は殆ど逃さず購入している。とはいえ、入手して大変満足できるものもあれば、逆もある。GeraNova社のBahnExtraシリーズは2カ月に1回の割合で出版される雑誌で、一つのテーマに特化して豊富な美しいグラフと程良い解説を収録し、よく購入するが、2004年末のICE特集号には購入当初はあまり満足できなかった。しかし、最近になって見直してみると、BahnExtraらしい、実によく出来た一冊であることを感じた。

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ドイツの鉄道誌といってもEisenbahn JournalやEisenbahn Kurierはニュースや解説記事、さらに模型関連の記事が多い。日本で近いのは、鉄道ピクトリアルあたりかと思う。資料的価値は大変高いのであるが、写真の質はいま一つという感もなくはない。そんな中でBahnExtraは写真が豊富で、2ページを大胆に占める美しい写真も少なくなく、鉄道グラフ誌とも言いたくなるよう特異な性格をもつ。

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他の雑誌なら、巻頭でICE開発に至るまでの鉄道高速化の歴史を叙述するところだが、このBahnExtraのICE特集号は、ICE 3のコックピット物語から始まる。ある日のICE 610、Stuttgart→Mannheimまでの様子を記録しており、ICEの日常が伝わってくる。

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ICEの変遷に関連する様々なグラフが続いた後、ICE-Vの解説である。しかし、この本に共通していることであるが、車両解説は一車両で4ページ、記述内容も比較的浅く、資料的価値という点では他に劣る部分がある。ICE-V車両解説に続く年表にしても、細かい記載は避けている。

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しかし、重ねて言うが、この本は本質的にグラフ誌なのである。次のICE工場の章はそのことを再認識させてくれる。ICE車両の工場整備の様子を写真を中心に簡潔にまとめている。車内でこれを読んだら、ICE車両が如何に整備されているか、乗客にも伝わり、良い宣伝になると思う。

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ICE 1、ICE 2と車両解説が続いた次には、この本らしい、デザインに関連した章が続く。Alexander Neumeisterの簡単な略歴と共に、様々なモックアップの写真やデザイン画を掲載している。それらを眺めていると、このデザイナーの発想の自由さ、多彩さが伝わってくる。現行のICE 3が霞んでみるほどに、様々な案が出されては消えていき、その過程の先に現在のICE 3があることが理解できるのである。

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ICE-Sや高速新線、ICE-T、ICE-TDの解説の後は、Eschede事故をはじめとするICEの事故・トラブルにもページを割く、負の面にもきちんと触れる辺りはドイツの鉄道誌らしい。ICE 3の車両解説の後は、この本を特徴づけるカラー・モノクロの美しいグラフが並ぶ。

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この雑誌に、ICEの歴史と技術をまとめた資料としての存在を求めると失望すると思う。しかし、ICEの日常を紹介する読み物という視点では、私はこれ以上のものは思い浮かばない。暇な時にパラパラ眺めたり、あるいではベットで寝る前に見るには、実に楽しい一冊であり、ICEの魅力を十分に堪能できることと思う。
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103 - Portraet eines Klassikers (Eisenbahn Journal Extra-Ausgabe 1/09) [ドイツ鉄道 書籍]

ドイツ鉄道趣味といって、日本にはない大型蒸機、如何にも大陸的な客車列車、国際列車、高速列車、ローカル鉄道、トラムまで実に多様だ。そんな中にあって、ドイツ鉄道の中で最も幅広い人気を誇る車両というと、やはり103形であろう。103形は模型も各社から繰り返し製品化されているし、書籍・雑誌も何種類も発売されている。Eisenbahn Journalは私の知る限りで3回、103形の特集号を出しているが、先日、4回目の特集号が発売になったので、早速入手した。

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構成はこれまでのEisenbahn Journal特集号に通じるものがある。最初にグラフが数ページ、続いて、最初の章で試作型のE03→103.0形を計画から製造工程、デビュー、TEEなどでの活躍、試験機、そして保存に至るまでを豊富な写真(しかも60年代の写真も含め、大半がカラー)と共に紹介している。
第2章では量産機103.1形の製造工程と技術解説である。図面や機器配置図も収録されている。

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第3章は塗装の変遷、各塗装につきRALナンバーを含めてまとめており、さらに各塗装について、その塗装をまとった機関車のナンバーまで記載されているのは、特に実物のナンバーまでこだわるような方には嬉しいだろう。イレギュラーな塗装にも触れてある。
第4章は年表である。第5章では103形の活躍の軌跡が、運用を中心にまとめられている。TEEやICはもちろん、ローカルや貨物列車まで、様々な列車を牽引する103形の写真が収録され、103形の最も華々しい時代に思いを馳せることの出来る。模型ファンにとっては編成も参考になるであろう。私を含め、多くの方にとって最も楽しめる章であろう。

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第6章では晩年の姿と廃車にスポットを当て、その次の章では103形の現状、特に保存状況についてまとめられている。保存先や塗装まで記載されているので、これからドイツへ103形へ見に行こう、という場合には大いに参考になると思う。

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第8章では103形を用いた様々な試験についてまとめ、最後に製造・廃車年月日や所属機関区を載せたリストを掲載している。この他にもLove-Paradeの臨時列車をまとめた小章などもあり、全体として思った以上に充実している。
以前、同じEisenbahn JournalのICE特集号を紹介したが、それと比べても、103形に対象を絞っている分踏み込んだ内容まで収録されており、大変満足の出来る1冊である。

DVD “Abschied von der 103”も付録としてつき、価格は15ユーロである。103形ファンならず、ドイツ鉄道ファンに広くお勧めしたい。

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http://www.eisenbahn-journal.de/art/700901.html
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Eisenbahnrevier Ruhrgebiet [ドイツ鉄道 書籍]

ルール地方はヨーロッパでも有数の人口集中地帯であり、鉄道ネットワークの充実振りもドイツ一と言って間違いないが、ドイツ鉄道趣味の世界ではどうも存在感が薄い。模型メーカーもゲッピンゲンやニュルンベルクなど南ドイツに多く、製品も自然南ドイツを走る車両が多いように思う。
私は幼い頃、Essenに住んでいたこともあり、ドイツ鉄道の中でも特にルール地方は最も興味のある地域である。そんなルール地方の鉄道を紹介した本を発見し、購入したので紹介したい。

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Eisenbahn Ruhrgebiet
by Joerg Hajt, Podszun-Motorbuecher, 2006
ISBN 3-86133-419-4

最初の章はルール地方の鉄道の歴史を概説している。19世紀からの主要駅の発達を追うと共に、工業地帯らしく炭鉱や工場へのヤードの様子も紹介され、このルール地方の発展に鉄道が不可欠だったことが伺える。貨物列車の変遷も興味深い。44形をはじめとするSL、V200やV300などが牽引する貨物列車、さらに430形電車や216形牽引の客車近郊列車など眺めるだけでも興味深い写真が続く。

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次の章はS-Bahn Rhein-Ruhrの歴史を紹介している。111形がS-Bahnで活躍する姿は私には懐かしい。143形牽引の編成や、最近ルール地方に復活した420形の姿も収録されている。

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その次の章では貨物列車や旅客列車を運行し、ルール地方の鉄道輸送でも大きな役割を果たすようになった、様々な私鉄を紹介、実にカラフルでDBにない楽しさがある。
最後の章ではICEからローカル列車、貨物列車まで最近の車両を豊富な写真で紹介している。こんな車両がルール地方を走ってたんだ、という新鮮な発見も多い。

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このように地域別にまとめた鉄道書はドイツでは数多い。特定地域の鉄道に注目すると、ローカルから貨物、長距離高速列車まで様々な鉄道が研究対象となり、実に興味深い。今回購入した本は、綺麗な写真と共に、ルール地方の鉄道をよく纏めている。こうなると、ルール地方の鉄道の変遷を模型で再現したくなる。困ったものである。
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