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InterCityExpress - Die Entwicklung des Hochgeschwindigkeitsverkehrs in Deutschland [ドイツ鉄道 書籍]

EK-Verlagの発売する車両解説書は、豊富な写真と共に、歴史、技術からデザインから、運用まで非常に幅広い解説を詳細な資料とともに掲載している。数年前からEisenbahn Kurier誌ではICEの解説書の予告が出ていたが、首を長くして待っていたが、延期に次ぐ延期の末、この度ようやく発売になった。

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この本では、最初に高速列車の開発史を概説している。19世紀末からはじまるドイツにおける電車や気動車の歴史はもちろんのこと、フランスの鉄道高速化の歩みについては非常に詳しく紹介されている。鉄道において、フランスはそれほどに大きなライバルである、ということなのかもしれない。一方、新幹線に関する記載は比較的あっさりしている、面白いのは唯一の日本の写真がJR東日本の試験車"Star 21"である点である。さらに高速新線の建設やトランスラピッドにもページを割いている。

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続いて、ICEの車両毎の解説へ移る。車両解説の全体的な特徴として挙げられるのが、その車両の開発に至るまでに登場した試験車両を詳しく紹介していること、そして開発過程で検討された様々なデザイン案(外観・車内共)が多くのイラストやモックアップともに紹介されていることである。もちろん、図面や諸元表も収録されているし、製造中の写真も豊富である。台車やパンタグラフ、電機部品などもそれぞれ紹介され、技術解説も万全である。
車両解説のトップバッターとなるICE-Vは外観から車内、さらに機器の類まで丁寧に解説されているが、例えば車体構造は勿論として、シートの構造まで詳しい解説がなされているのは驚くほかない。そして、1985年の公開から、試運転、さらに引退までの足跡も美しいカラー写真とともに紹介されている。TGVとの関係について触れられており、DBが一時TGVの導入を一時検討したことを紹介し、ICE塗装を施されたTGVの図面まで掲載している。

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最初の営業用車となるICE 1の項で、何といっても面白いのはICE 1のデザイン案である。何と、Pininfarinaによる外観のデザイン案が掲載されているのである。そのデザインは、何となくETR450を思わせる。もちろん、実際のICE 1の方が私は好きであるが、貴重なイラストであることは間違いない。
ICE 1の項も技術解説に多くの項が割かれているが、その後に続く試運転の様子が興味深い。営業運転については、最も歴史があるだけに、他の車両に比べても特に詳しく紹介しており、アメリカツアーも4ページにわたって特集している、さらに、これまで行われた改造工事や更新工事の解説、そしてEschede事故についてもページが割かれている。

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ICE 2にも基本的にICE 1の項と同じ構成で、ICE 1との相違点には特に強調されている、車内情報案内装置まで詳細に解説されているのは安心するほかない。営業運転についても、当初存在した2編成から制御客車を除いて連結した長編成列車に始まり、Berlin-Hannover高速新線を軸とした営業運転について紹介し、最後に台湾高速列車受注のためのPRに運転された、TGV Duplex用中間客車を連結したEurotrainについても触れている。

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ICE 3の項は、試験車ICE-Sが最初に詳しく紹介され、その後デザインについての解説が続く。こうしてみると、現在のICE 3のデザインも、様々な案の積み重ねの上に存在することがよく理解できる。国際運用を含めた様々な運用はもちろん、最新の本だけに、Koeln脱線事故から始まる車軸問題や、スペイン・中国等への輸出についての解説や、2010年に登場予定の3次車(407形)の解説も、想像図とともに収録している。力が入っているのは、Paris直通に向けての、試運転に関する記載である。この直通運転が実現されるまで、以下に大きなエネルギーが割かれたか、ということが伝わってくる。

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ICE-Tの項はPendolinoから始まる振子列車の開発史から筆を起こしている、面白いのは様々なデザイン案、特に先頭同士を連結した場合の貫通路の案は、実車が貫通路がないだけに非常に面白い。大きな変更が加えられたICE-Tの2次車の解説や、オーストリア直通を含めた詳細な運用に関する記載も詳しい。ICE-Tは風光明美な場所をはすることも多く、実際収録されている写真も特に美しいものが多い、この項で最も目を引くのは、DBがSBBで活躍するICNを導入することを検討した際に用意されたと思われる、ICE塗装を施されたICNの想像図である。なかなか悪くないデザインである。続く、ICE-TDの項では、デンマーク直通という最新の話題も、最新の豊富な写真とともに詳しく紹介されている。

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現役車両の解説に続いて、2階建て車両や広幅車体など、次世代ICEの様々な案が、定員や重量との試算とともに解説されている。次世代のICEの具体像はまだ見えていないが。様々な検討がなされていることが伝わってくるのである。
最後に用語解説と年表、さらに車両リストが収録されている。

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全体として、専門家でも満足できるであろう詳細な解説を行いながら、美しい写真を豊富に収録し、比較的気軽に楽しむことができる。ICEの解説本の決定版、といっても決して過言ではない一冊である。
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300B

こんにちは

やっと発売されて良かったですね。

以前から気になっていた本なのですが、内容の評価が不明でしたので発注は見送っていました。HUHさんの評価ではかなり良さそうな本ですね。

Amazon.jpでも近日発売となっていますので発注を掛けてみます。

貴重な情報をありがとうございました。
by 300B (2009-11-22 11:10) 

Akira

こんにちは、

何とこの本はICEの決定版と呼べそうな感じがします。特に興味深いのは、ICE3の次世代の記事です。ほとんど情報がないので...。
by Akira (2009-11-22 19:42) 

abe

ICE-Tの貫通幌ってワイドビューひだみたいですね。あっても良さそうですが、外国ではあまり必要ないのでしょうね。
by abe (2009-11-23 21:31) 

HUH

300Bさん
ようやく発売になりましたが、待ったかいがあったと思います。車両の開発の経緯から、開発段階での様々なプランまで詳細に記載されている本は他に思い浮かばないですね。

Akiraさん
それぞれおに特徴がありますが、現段階では決定版といえる気がします。ただ、ICE 3の次世代に関する記載は、来年登場予定の407形を除けば、それ程多くはないかもしれません。まだ、実際の姿は見えてきていないとおいうことなのでしょう。

abeさん
ドイツ鉄道で中間に貫通幌を付ける、というのは、見た記憶がないですので、このICE-Tでの検討案は新鮮でした。検討されるということは、必ずしも必要ないと考えられているわけではなさそうですが、コストなどを考えると見送られるのかもしれません。日本でも、貫通幌を付けた車両は少なくなってきたような気もしますし。
by HUH (2009-11-27 08:04) 

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