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RailCologne [ドイツ鉄道 書籍]

 ドイツの大きな駅の書店に入ると、必ずといって良い程、鉄道コーナーがあり、所狭しと書店やDVDが並んでいる。日本の鉄道書に比べると、ドイツの鉄道書は一つのテーマを深く掘り下げたものが多く、資料性の高いものが多いように感じる。今回紹介する"RailCologne"はその名の通り、ケルンの鉄道、それもケルンの象徴である大聖堂を中心に、わずか数kmの範囲の鉄道に特化した本である。
 私は定期購読しているToday's Railwaysの書評欄でこの本の存在を知った。ドイツ語に加え、英語での解説も加えられているとのことで興味をひかれたが、マイナーな出版社から出ているためか、amazonなどでも扱っておらず、ドイツの鉄道書専門店に注文して、この度ようやく入手することができた。その内容は、これまで購入したドイツの鉄道書の中でも、最高と感じる素晴らしいものであった。

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 "RailCologne"の副題は"Eisenbahnstadt Koeln, Railway City Cologne"である。最初はケルンが鉄道の街?とも思ったが、この本を読み終えると、まさにケルンこそ鉄道の街、と思えるから不思議である。私自身も2005年から2007年の間にドイツに3回行った中で、MuenchenでもBerlinでもなく、Koelnだけは3年連続訪れ、行き交う列車を眺めたのであった。そんなケルンの鉄道に、様々な視点から迫ったのがこの一冊である。
 本書はドイツ鉄道の全面協力のもと、2年かけて制作された。240ページに280枚の写真が収録されており、一般人では立ち入れない場所からの貴重なものが大半を占めている。解説もドイツ語と英語の2ヶ国語となっている点が嬉しい。
 冒頭はケルンの様々な鉄道シーンを捉えた写真で始まる。

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 最初の章は、ケルンの鉄道の黎明期についての解説である。ケルンに最初に鉄道が開通したのは19世紀前半である。"RailCologne"は写真集と表現しても良いくらい写真中心の構成となっているが、さすがに19世紀の写真は限られているのだろう、この写真についてはテキスト中心の構成である。しかし、この章を読むと、現代のケルンの鉄道が様々な私鉄を統合した結果生まれたものであることが理解できるのである。それに旧ケルン中央駅の建造中の写真など、少ない写真はなかなか価値がある。

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 第2章は19世紀末から第二次世界大戦前までに、発展してゆくケルンの鉄道を扱っている、この時代になると、写真も増える。本ブログでも紹介したHohenzollern橋のオリジナルの姿も、図面と共に詳細に紹介されている。さらに、Ep.IIで活躍する蒸気機関車の数々を眺めるのも、なかなか楽しい。

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 第3章は、第2次世界大戦で壊滅的な打撃を受けたケルンの鉄道の、戦後から1950年代にかけての復興の歩みを紹介している。Hohenzollern橋も深刻な被害を負ったが、それでも1946年には橋の末端部分がケルン中央駅の入替用に使われている写真もあって、実に興味深い。さらに、41形が牽引するLorely-Expressが中央駅を発車する写真など、模型ファンにもたまらないだろう。

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 第4章は、この本の大きな特徴の一つである。この章はケルンの鉄道を空撮映像で紹介している。1枚1枚の写真を眺めるのは本当に楽しい、路線図と共にこの章の写真を眺めれば、ケルンの鉄道の構成が非常によく理解できることだろう。空撮映像を盛り込むという発想にはただ脱帽するほかない。

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 次の章以降はケルンに集まる各路線と要衝となる駅を紹介しており、この本のメインと言うことができよう。。以下に章立てを示す。
- Frechen-Koenigsdorf - Cologne-Ehrenfeld
- Stommeln - Cologne-Ehrenfeld
- Dormagen - Cologne-Nippes
- Cologne-Nippes Junction
- Leverkusen Centre - Cologne-Muelheim
- (Leverkusen-)Opladen - Cologne-Muelheim
- Bergisch Gladbach - Cologne-Muelheim
- (Cologne-) Porz-Wahn - Cologne/Bonn Airport - Cologne-Kalk
- Bruehl - Cologne-Eifeltor
- Marshallig Yard Cologne (Cologne-)Gremburg
- Cologne-Messe/Deutz - Cologne Deutzerfeld
- Marshalling Yard Cologne-Kalk North - Cologne-Poll - Harbour Cologne-Deutz
- Cologne-West - Cologne South - South Bridge
- Cologne Main Station
- Private freight lines and industrial sidings

 どの章も、1ページ程度でその区間の歴史と現状を概説し、ポイントとなる個所の写真を数ページにわたって掲載する構成となっている。解説は決して詳細というわけではないが、多彩な写真とそのクレジットだけでも十分に楽しめる。また、写真は2008年以降に撮影された新しいものが中心であるが、何点か蒸気機関車の時代の写真も収録されているので、往時の雰囲気を味わうこともできる。
 これらの中でも興味深いのは、Cologne-NippesやCologne-Muelheimなどのジャンクションである。ケルン中央駅付近にいるだけでは到底理解できなかったが、ケルン周辺は様々な路線が入り乱れ、様々な旅客列車・貨物列車が複雑に合流・分岐すること、そして中央駅で見られるのは旅客列車のごく一部に過ぎないことがよく理解できるのである。また、Cologne-Grembergの操車場の写真は貨物列車ファンにはたまらないだろうし、ケルン中央駅の北西に広がる車両基地Betriebsbahnhof、Deutzerfeldの車両基地、Opladenの車両解体工場、私有企業による専用線なども非常に興味深い。中央駅についても、我々が普段から目にする駅構内は勿論のこと、信号所から、構内放送を担当する女性の写真まで収録していて、その視点の多彩さには驚かされるのである。巻末には廃駅などの写真も収録されている。

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 嬉しい配慮としては、付録としてこの本の内容に沿った地図が添付されていることである。地図を眺めながら、一ページ一ページをめくれば、間違いなく時間を忘れて没頭できることと思う。

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 なお、本書の紹介や、補足資料は以下に掲載されている。
http://rail-cologne.de/

 本書は「ケルンの鉄道」というテーマを通じて、まさにドイツ鉄道の魅力を感じられる良書である。本書を見終えて、私は次回ドイツに行く機会に恵まれたら、ケルン周辺をじっくり探訪しようと強く思っている。
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南那 轟

Bunte Bundesbahnに続いてまた買いたくなる本をご紹介頂きありがとうございます。金欠状態なので我慢ガマン(笑)。

便乗質問で恐縮ですが、アムステルダム~モスクワ・プラハ・コペンハーゲンのEN/CNLがケルン近郊で、Dusseldorf - Koeln Hbf - Wuppertal、または迂回でVenlo - Koeln Hbf - Dusseldorfという経路で運転されていますね。Koelnの停車時間は数分と短いので、おそらくKoeln Hbfでは方向転換していないのだと思います。いったいKoeln Hbfの周辺でどんな経路で運転されているのでしょうね?
by 南那 轟 (2010-12-10 14:58) 

HUH

南那さん、こんにちは。
仰る通り、Koelnでの折り返しはないようです。難しい質問で、全く確証はありませんが、可能性があるとしたら以下のルートでしょうか。

<Duesseldorf - Koeln Hbf - Wuppertal>

Duesseldorf - (Neuss) - (Koeln-Nippes) - Koeln Hbf - (Koeln-Mess/Deutz) - (Solingen) - Wuppertal


<Venlo - Koeln Hbf - Duesseldorf>

Venlo - (Moenchengladbach) - (Neuss) - (Koeln-Nippes) - Koeln Hbf - (Koeln-Mess/Deutz) - (Leverkusen) - Duesseldorf

または

Venlo - (Moenchengladbach) - (Rheydt) - (Grevenbroich) - (Koeln-Ehrenfeld) - Koeln Hbf - (Koeln-Mess/Deutz) - (Leverkusen) - Duesseldorf

といったところでしょうか。
by HUH (2010-12-11 15:10) 

南那 轟

ご教示ありがとうございました。こんなローカル線(?)をENが走るとは思ってもいませんでした・・・と書こうとして、念のためgoogleで空中写真を見たら、たとえばDuessldorf(スペル違いでした・・・汗)とNuessの間って立派な複々線なのですね。また眼から鱗が落ちました。

実は去る8月のワルシャワ訪問時に、このENをワルシャワ東駅で見たのでした。ずいぶんと複雑な入換をしていましたので、1両づつ見ていたらDBとPKPの車両はここで終着ですが、BCとRZDの車両は更に軌間を変えながらミンスク、モスクワと進むとありました。興味が湧いて、分割併合の様子を調べたら、フルダ、ハノーファ、ベルリン東のそれぞれの駅で、くっついたり離れたりしているのですね。Cookの時刻表では日によってアムステルダム発着の時刻が2時間ほど違い、それと連動してケルン付近では上にお尋ねしたように経路まで変わっており、興味が尽きません。数年前まではケルン中央駅止まりだったようですが、2008年以降は西欧側はアムステルダム、バーゼルSBB、ミュンヘンの3都市に別れています。アムステルダム~ワルシャワ間の列車にどーしてDBのBrcmzが繋がっているのか、などなど興味は尽きません。この件はいずれ改めて。
by 南那 轟 (2010-12-13 23:25) 

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