SSブログ
前の5件 | -

DB Baureihe 65.0 (Märklin 39650) [鉄道模型 Maerklin]

273968014_425757905907029_6799025010839442361_n.jpg

 65形は第二次大戦後、ドイツ連邦鉄道Deutsche Bundesbahn (DB)が製作した新型蒸気機関車の一つで、78形や93.5形を置き換える目的で開発されたタンク式蒸気機関車である。
 軸配置1’D2’ h2で、 Krauss-Maffeiにより1951年に65 001-013の13両、1955年から56年にかけて65 014-018の5両が製作された。バッファー間長15,475mm、全重107.6t、軸重16.9tであった。ボイラー圧は14 barで、出力1,089Wで、前後進とも最高85km/h走行が可能な性能を有していた。炭庫の石炭積載容量は4.8t、水14,0m3であった。なお、65 001-013は表面式エコノマイザーを搭載していたのに対し、65 014-018はHenschel製混合加熱器を搭載していた。1968年にはコンピューターナンバーの導入で、065形となった。

273868493_373998410835300_7898922597734227852_n.jpg

 65 001-007はBw Darmstadtに配属され、78形や93.5形と共に旅客列車だけでなく、貨物列車にも運用された。65 008-010はBw Düsseldorf-Abstellbahnhofに配属され、38形や78形ともに旅客運用に用いられたが、1954年初頭にBw Darmstadtに移った。65 011-013はBw Letmatheに配属され5710-35形に運用に就いたが、1953年7月にはBw Fröndenbergに移り、82形を置き換えた。しかし、1954年5月には65 011がBw Darmstadtへ、65 012-013がBw Essen Hbfへ移った。
 Bw Essen Hbfには65 012-013に加えて65 014-018も新製配置され、1956年までに全車がWendezug (プッシュプル列車)対応に改造された上で、Essen - Bottrop、Essen - Wuppertal - Remscheid、Essen - Kettwig - Ratingen - Düsseldorfで78形と共にWendzugに運用された。特に Essen - Kettwig - Ratingen - Düsseldorfの運用では、Essen南部Stadtwaldに勾配区間が存在したため、78形に比べて強力な65形が好まれた。ただし、Wendezugでは基本的に炭庫側が先頭に立ったため、鉄道ファンには不人気であったという。Essenでは1日の運用距離は350-400kmに達し、1カ月の運用距離が14,000kmを超えたこともあった。これはDBのタンク機としては唯一の例であった。1966年5月、Essen Hbfにおける65形の運用は終了し、全車がBw Limburgに転出した。

273751019_330893475648606_6675015722368388853_n.jpg

 Bw Essenと共に、65形が最も活躍したのはBw Darmstadtであった。65 001-007に加え、1954年に65 008-011が加わり、Frankfurt (M)・Aschaffenburg・Eberbach・Heidelberg・Worms・Mannheimへの列車に運用された。1966年はじめに65 008-011がBw Limburgに移ったが、1969年には065 012-014, 016-018が加わった。しかし、電化の進展で65形の運用は縮小しており、既に1965年には65 007を皮切りに廃車も始まっていた。1970年12月残っていた65形は全てBw Ascheffenburgに移籍した。
 Bw Limburgには1966年初頭に65 008-018が配属され、Gießen・Marburg・Koblenzへの旅客列車やLollar – Londorf間の旅客列車に運用された。しかし、運用にさして機関者数は過剰で、しばしば入換用に用いられた。1968年に65 012と015が廃車となり、1966年から1969年にかけて全車が転出した。転出先は65 008-011がBw Dillenburg、65 013-014, 016-018がBw Darmstadtであった。
Bw Dillenburgでは65 008-011は入換用に用いられ、1年程で65 008はBw Darmstadtに移り、残りの3両は廃車となった。
 65形が最後に配属されたのはBw Ascheffenburgであった。1970年12月にDarmstadtから065 001, 004, 008, 013, 014, 01, 018が転入し、64形と共にMiltenbergへの旅客運用に就いたが、この運用は走行速度が高く、65形には不向きでしばしばトラブルが発生し、1972年4月までに065形は運用から外されたが、暖房用として残った。1972年12月27日最後まで残っていた065 018が廃車となり、置き換えるはずだった78形より一足早く、登場からわずか20年で65形は引退したのであった。
 1975年初頭に065 018がDeutsches Dampflok-Museum ドイツ蒸気機関車博物館に歩残されることが決定した。1981年にオランダのRotterdamに移り、現在も動態保存されている。

 65形のHOモデルとしては、フライシュマンが長らく製品化していたが、2019年にメルクリンがインサイダーモデルとして1965年仕様の65 012 (39650) を発売した。さらに、2022年新製品として1970年仕様の065 001 (39651) をアナウンスしている (おそらくBw Darmstadt仕様)。

273787334_1229715427432069_2536386631343964077_n.jpg

 製品番号39650の1965年仕様の65 012といえば、まさにBw Essen Hbfに配属されていた時代の姿である。Essenの65形が運用されたEssen - Kettwig - Ratingen - Düsseldorfは現在はS-Bahn S6系統となっているが、私は幼少時にこの沿線に住んだ時期があり、Düsseldorfへ買い物に行く際に何度か利用した。また、沿線には旅行に来た祖母が気に入った古城ホテルがあり、5年前のDüsseldorf留学中には妻とここで小さな結婚式を行ったのであった。したがって、この製品は私には見逃せないものであった。

274022230_627519025012432_6304172496828207243_n.jpg

 高い位置に据え付けられた細めのボイラー、ランボードに吊り下げられた前照灯など、DBの新型蒸気機関車らしいスタイルアは格好良いとは言えないのかもしれないが、何とも愛嬌が感じられる。最近の製品らしくてディテールも繊細、サウンドも豊富で、特に汽笛やブレーキ音は素晴らしい。Wendezugを組んで、78形とともに走らせている。

273911131_738053047158185_6665260358691379541_n.jpg
nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

ICE 30周年 [ドイツ鉄道 列車]

 1991年5月29日、Bonn・Hamburg・Mainz・Stuttgart・Münchenからの6本の特別列車がKassel-Wilhelmshöhe駅に集まり、Richard von Weizsäcker大統領臨席の元、ドイツ初の高速列車であるInterCityExpress (ICE)の開業式典が華々しく行われた。6月2日からICEの営業運転が開始され、以後高速新線や改良新線の開業や様々なICE用車両が開発により、ICEのネットワークはドイツのみならず周辺各国にも広がった。それから今日で30年、ICEはドイツ鉄道の長距離旅客輸送において中心的な役割を果たし、ドイツの旅には欠かせない存在となった。
1.jpg

 ICEを先駆的な存在となったのは、試験車両である410形InterCityExperimental (後のICE-V)である。1983年から1985年にかけて製作されたこの試験車は、1988年6月1日に当時に世界最高速度となる406.9 km/hも記録した。1998年に役割を終えて引退し、現在はMünchen のドイツ博物館、およびMindenの鉄道研究施設で保存されている。
31498635_1665639933517853_8801011927993024512_n.jpg

 1991年の営業開始当時の高速新線はMannheim-Stuttgart、Hannover-Würzburgの2区間であり、ICEの運転が最初に開始されたのはHamburg – Hannover – Fulda – Frankfurt (M) – Stuttgart – Münchenであった。最初の営業車両であるICE 1は1989年から1993年にかけて60編成が製作された。ICE 1は両端が動力車で、中間に11~13両の客車が連結された編成とされ、最高280 km/hとされた。ICE 1はドイツを南北に結ぶ路線を中心に投入され、1993年からは統一ドイツの首都となったBerlinへの乗り入れも果たした。さらに1992年からスイス、1998年からオーストリアへの乗り入れも開始した。
3.jpg

 ICEは快適な車内設備で好評をもって迎えられ、順調に旅客数を伸ばしたが、ICE1は長編成で大幹線以外での運用には向いていなかった。そこで、1996年から1988年に動力車1両と客車7両からなるICE 2が44編成制作された。ICE 2は2編成での併結が可能で、柔軟な運用を可能にした一方、コンパートメントが廃止されるなど車内設備は簡素化された。1998年9月にBerlin-Hannoverに高速新線が開業し、Berlin発着のICEのスピードアップが実現した。ICE 2はBerlin – Hannover – Hamm – Essen – Düsseldorf / Hamm - Hagen – Wuppertal – Kölnなど併解結を伴う路線で運用された。
4.jpg

 1998年6月3日Eschede近郊でICE 1が脱線して橋脚に衝突する事故が発生し、101名が犠牲になり、ドイツの鉄道史上最大の悲劇となった。原因は乗り心地向上のために導入された弾性車輪の破損であった。ICE 1は一体圧延車輪に戻されたが、検査や改修のため大規模な運休や編成両数削減、さらに103形をはじめとする旧型車両による代走などで、しばらく長距離鉄道ネットワークの混乱が続いた。
 1999年5月、ドイツ鉄道に新しいICE用車両であるICE-Tが登場した。ICE-Tは同時に開発が進められたICE 3と同様の動力分散式となり、またFIAT社の振子装置を搭載し、最高230 km/hとされた。ICE-Tは2005年までに5両編成の415形が11編成、7両編成の411形が60編成制作された。ICE-TはStuttgartとスイスのZürichを結ぶ列車でデビューし、その後旧東ドイツ地域への列車を中心に投入された。2006年からはオーストリアへの直通も開始した一方、スイスへの直通は2010年に終了した。
5.jpg

 ICE-Tより1年遅れて、2000年6月には新しいフラッグシップとしてICE 3が登場した。ICE 3は最高330 km/hに対応する高速性能を有し、8両編成で併結も可能とされた。ICE 3にはドイツ国内で運用される単電源式の403形と、4電源式で国際運用に対応する406形 (ICE 3M)があり、2006年までに403形が50編成、406形が17編成 (うち4編成はオランダ鉄道NS向け)が製作された。ICE 3Mは登場時からオランダに直通運転を行っており、2003年にはベルギーへの乗り入れも開始した。ICE 3とICE-Tは車内外とも共通のコンセプトでデザインされており、その上質なデザインは後のICEに受け継がれていくこととなった。
6.jpg

 2002年8月に最高300 km/hの高速新線Köln-Rhein/Mainが開業し、ルール地方から南方への大幅な高速化が実現した。12月15日のダイヤ改正ではICEネットワークが抜本的に見直され、ICE 3はこの高速新線を経由する路線に集中的に投入された。
7.jpg

 2001年6月には4両編成の気動車ICE-TDが登場した。ICE-TDは最高200 km/hで20編成が製作され、Nürnberg - Hof - Dresden、München - Lindau – Zürichに投入されたが、振子装置にトラブルが相次いだ上、2002年10月には車軸破損により脱線事故を起こし、振子装置の使用が停止され、2003年7月には運行認可も取り消されてしまったため営業運転を外された。
9.jpg

 サッカー・ワールドカップドイツ大会に先立つ2006年5月には首都Berlinに新しい玄関駅Berlin Hbfが開業すると共に、最高300 km/h対応の高速新線Nürnberg – Ingolstadtも開業し、ドイツ南部でも高速化が図られた。
 2007年6月にはICEは悲願のフランス直通を果たした。Frankfurt (M) – Paris間に設定されたICEには、フランス直通対応に改造された406形 (ICE 3MF)が充当された。さらに、2007年12月からはHamburg – CopenhagenにもICEが登場した。このデンマーク直通運用には2006年春から細々と営業運転を再開していたICE-TDが投入された。Vogelfluglinie 渡り鳥ラインと呼ばれるルートにはフェリー航送区間もあり、鉄道ファンの注目を集めた。
10.jpg

 ドイツ鉄道が悩まされたのが車軸の問題であった。2008年ICE 3は低速で走行中に車軸が折損して脱線する事故が発生し、車軸超音波検査の間隔が短縮されると共に、全車の車軸が交換された。ICE-Tでも車軸に亀裂が発見され、振子装置の使用は2018年までの長きに渡って停止された。
 新型車両が次々と登場する一方、2005年から2008年にかけて、ICE 1はRedesignと呼ばれる更新工事が行われ、インテリアはICE 3に近いデザインとなった。続いて2009年から2013年にかけてICE 2の更新工事も行われた。
 SiemensはICE 3をベースとする高速列車をVelaroのブランドで開発し、スペイン・中国・ロシア・トルコにも輸出した他、London – Parisなどを結ぶEuroStarへのセールスにも成功していたが、2008年にはDBも新型ICE 3としてVelaroを発注した。形式は407形で、406形と同様に8両編成とされた。407形は4電源式で2011年12月よりフランス直通運用に用いられる予定であったが、トラブルが頻発して認可取得が遅れ、2013年12月にようやくドイツ国内でデビューし、2014年4月からは406形に代わりフランス直通のICEにも充当された。
11.jpg

 2015年12月にErfurt – Halle/Leipzig、さらに2017年12月にEbensfeld–Erfurtで相次いで最高300 km/h対応の高速新線が開業した。Berlin – Münchenを4時間で結ぶ速達列車も設定され、旧東ドイツ地域においても大幅な高速化が達成された。
51-54239.jpg

 デンマーク直通に使用されていたICE-TDは検査期限切れに伴い、2017年10月に運用を終了した。2編成は“advanced TrainLab“として試験用に残ったが、残りの編成は順次廃車解体が進められている。
 2017年12月にはICE 4が本格的な営業運転を開始した。(2016年から試験的に営業運転に用いられていた。) ICE 4の最大の特徴は、変圧器・変換器・主電動機などの主要機器をPowercarと呼ばれる動力車に集中配置し、路線事情に合わせて柔軟な編成を組むことを可能とした点である。最高速度こそ250 km/hに抑えられているものの、様々な新機軸が盛り込まれ、ドイツ鉄道の新たなフラッグシップに位置付けられている。ICE 4は7両・12両・13両編成の3つのバージョンが製作される予定で、最初に登場したのは12両編成であった。これらは主にICE 1の運用を置き換え、2019年12月からはスイス直通運用への投入も開始された。7両編成は2020年12月からICE 2の運用を置き換える形で投入が開始されており、さらに13両編成も2021年2月から暫定的に営業運転に就いた。ICE 4は最終的には12両編成と13両編成がそれぞれ50編成、7両編成が37編成導入される予定で、現在も製造が進められている。
12.jpg

 2018 年9 ⽉よりドイツ鉄道 はICE の運行は再⽣可能エネルギーによる電⼒でまかなわれていることから、ICEを”Deutschlands schnellsten Klimaschützer” (ドイツ最速の環境保護者) としてPRすることとし、先頭⾞の⾚帯を緑⾊に変更した。このデザイン変更は全編成が対象とされたが、現在も赤帯のままで走っているICEも少なくない。
 デビューから30年が経過したICE 1はインテリアを中心に再度の更新と、中間客車9両へと編成を短縮する工事が行われており、2030年頃まで引き続き使用が継続される予定である。
2.jpg

 ICE 3は2016年から403形を中心に更新工事が進められているが、406形については故障が多く維持コストも高いことから、2025年にも廃車が始まる可能性があると報道されている。ICE 2やICE-Tについては2025年頃までは使用される予定であるが、その後の計画は不明である。
 2020年7月にはドイツ鉄道はVelaroを30編成追加発注した。形式は408形で、ICE 3neoと呼称されており、2022年末から投入が開始される予定である。
 近年のICEの最大の問題は慢性的な遅延である。ドイツ鉄道の長距離列車の定時運行率が8割を割り込むことも珍しくなく、交通機関としての信頼性が損なわれている状態である。この遅延の常態化に様々な要因が絡まっているとされるが、特に問題として指摘されているのはドイツ鉄道のインフラ投資が不十分である点である。
 2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行により、ドイツでは厳しいロックダウンが行われ、結果としてドイツ鉄道も大きな打撃を受けることとなった。社会インフラとしてドイツ鉄道は一定の列車運行を継続したが、列車本数や編成両数の削減が行われ、それでも多くの列車が空気を運んでいる状態となった。その中で、2020年の定時運行率はこの15年間で最も高い85%を記録したのは皮肉なことであった。
 ドイツ鉄道は2030年を目標に、“Deutschlandtakt“ (直訳すると「ドイツの時計」)という名の元、ドイツ全域に渡って到達時間短縮や列車本数の増強を行うことを計画しており、それに向けて積極的にインフラ整備や車両調達が行われている。10年後、20年後のICEの変化も見逃せない。
8.jpg

 最後に個人的なICE体験を記したい。幼い頃に過ごしたドイツに登場した高速列車には、少々武骨だが私好みのスタイルで、デビュー前から興味をひかれた。高校生を卒業する頃にはドイツ鉄道への興味は募るばかりとなり、最初に買ったヨーロッパ型の鉄道模型はフライシュマンのICE 1であった、浪人生活の傍らドイツの鉄道に関する情報を集めるようになったが、その矢先に起こったEschede事故は衝撃的であった。ニュース番組の冒頭で流された映像は今も目に焼き付いている。重苦しい空気の一方で、1998年10月にBerlinで姿を現したICE 3に魅了され、毎日のようにインターネットで画像を眺めたのも懐かしい。
 2005年3月、大学の卒業旅行で実に20年ぶりにドイツに降り立ち、最初に乗ったのはFrankfurt (M)空港からMannheimまでのICE 1であった。そして、何よりも素晴らしい体験だったのは、Frankfurt (M)からAmsterdamまでラウンジ席で乗り通したICE 3の旅であった。益々ICEに魅了された私はその後もチャンスを見つけてはドイツに飛ぶようになった。
 人生最大の幸運の一つは、2016年7月から2018年2月までDüsseldorfに留学する機会を得たことであった。留学期間中、暇を見つけてはICEに乗り、そして撮った。ICE 3の当時現役だった83編成全編成を撮影したことは、私の趣味歴においては最大の成果である。ICE 4の登場をドイツで迎えることができたし、BerlinからMünchenへのICE Sprinterの一番列車をICE 3のラウンジ席で乗車することもできた。
 帰国して3年、ICEは更なる変化を続けている。ドイツにいた時のような活動は到底できないが、それでもICEの動向を追いかけるのは楽しいものである。ICEは今も私の趣味の中心である。
E2ExavyVgAMCILQ.jpeg
nice!(4)  コメント(0) 

今年も宜しくお願いします。 [総合]

明けましておめでとうございます。
コロナ禍で仕事が落ち着かず、なかなか更新できない状態です。ドイツを再訪するのはまだ難しい状況ですが、実車も模型も時間を見つけて楽しんでいきたいと思います。
今年も宜しくお願いします。
111greeeting2.jpg
nice!(4)  コメント(0) 

DB Baureihe 01.10 (Märklin 37105) [鉄道模型 Maerklin]

3s.jpg

 私は元々蒸気機関車にはそれほど興味がなく、ナローゲージで乗車したことがあった程度であったが、Düsseldorfに住んだ直後にイベントで50形の姿を目にして以来、本線蒸機にも魅力を感じ、滞在中に何度か蒸気機関車牽引の特別列車に乗車した。その中でも、最も印象に残っている機関車が01.10形である。2016年9月3日、愛好者団体Ulmer Eisenbahnfreunden (UEF)によって動態保存されていた01 1066が牽引する列車でMannheimからTrierまで乗車したが、120km/h以上で疾走する姿に圧倒され、この大型急行用機関車に魅了されたのであった。

r1.jpg

 2016年12月には01 1066のさよなら運転にも駆け付けた。

r2.jpg

 その後、EK-Verlagから発売されている„Eisenbahnknoten Düsseldorf“という書籍を眺めていた際に、Düsseldorf Hbfに停車中の01 1066の写真を目にして、益々01.10形に親しみが湧いた。2017年ゲッピンゲンで開催されたIMAを訪れた際に、メルクリン博物館の売店で01.10形のモデル37105がバーゲン価格で販売されており、早速購入したのであった。いつもお世話になっているmasato-marklinさんが01.10形のモデルを紹介されているので、私も便乗して、この37105を実車の詳細と共に紹介したい。

【01.10形について】
 Deutsche Reichsbahn ドイツ国有鉄道は1920年代から急行旅客用蒸気機関車として01形や03形を開発・量産していたが、1930年代になると蒸気機関車の一層の高速化が図られるようになり、最高速度150km/h、さらに500tの列車を120km/hで牽引可能な機関車として開発されたのが01.10形である。最大の特徴は、01形が2シリンダーであったのに対し、3シリンダーとなった点である。外観も空気抵抗を軽減するため、流線型カバーに覆われたものとなった。
 01.10形は400両の導入が計画され、まず1939年から43年にかけてSchwartzkopf・Krupp・Borsig・Henschel・Krauss-Maffeiの各メーカーによって205両が製作される予定であったが、第二次世界大戦の影響で、実際に製作されたのはSchwarzkopfによる55両 (01 1001 / 1052-1105)のみであった。01 1001は1939年8月29日にWildauでドイツ国有鉄道に納入され、1940年9月までに55両が完成した。これらの機関車はドイツ各地、さらに現在はポーランドに属するKattowitzやBreslauにも配属された。しかし、戦況の悪化で物資輸送が優先され、01.10形は活躍の場を奪われていく。1941年には最高速度が150km/hから140km/hに落とされたが、既にこの頃には大半の路線で100km/h程度しか出せない状態となっていた。01.10形は西側に集約され、1945年のドイツ敗戦時にはBranuschweig・Hannover・Göttingen・Kasselに集約されていた。しかし、大半の機関車は運用から外され留置されていた状態であった。結果的に01.10形はドイツ分断時には全車が西ドイツに残り、1949年のドイツ連邦鉄道 Deutsche Bundesbahnに引き継がれることとなった。
 1945年から1947年にかけては10両に満たないKasselおよびGöttingen所属の01.10形が運用されるのみであったが、車両不足のため、その他の蒸気機関車も順次再整備を受け運用に復帰した。さらに、1948年から1951年にかけて車体を覆う流線型カバーが順次外された。これにより、01.10形は正面に給水加熱装置が張り出し、煙室扉の上部が欠き取られた独特なスタイルとなったなり、Witte式除煙板も設けられた。1949年7月の段階ではPaderborn・Bebra・Kassel・Hagen-Eckeseyに45両の01.10形が所属しており、1951年夏までには既に廃車となった01 1067を除く54両がOffenburg・Bebra・Kassel・Hagen-Eckeseyに出揃った。
 しかし、St 47 K鉄鋼で製作された罐の老朽化が想定よりも早く進行し、車齢がまだ若かった01.10形全車について罐の交換が行われることになった。新しい罐はHenschelによって製作され、1953年12月に01 1060の初めて装備され、1956年11月までに全車の交換が終了した。

r7.jpg

 さらに1956年には01 1100が石炭燃焼式から重油燃焼式に改造された。重油燃焼式は経済的で操縦性も良く、機関士の作業軽減にもつながったため、01 1110に加えて、1958年までに01 1001 / 1052 / 1054-1055 / 1057-1061 / 1063-1064 / 1066 / 1068 / 1071 / 1073-1077 / 1079-1082 / 1084-1085 / 1088-1089 / 1092 / 1101-1105の33両が重油燃焼式に改造された。

r3.jpg

r6.jpg

r4.jpg

 1957年時点では01.10形はOffenburg・Bebra・Kassel・Osnabrück・Hagen-Eckeseyに配属され、重油燃焼式となった機関車の運用も開始され、主要幹線で華々しい活躍をみせた。が、1950年後半から幹線の電化が進行し、さらにE10形電機やV200.1形ディーゼル機関車の増備で、01.10形の運用範囲は徐々に縮小していく。1961年には01.10形の配属はBebra・Kassel・Osnabrückに集約されたが、1963年にはBebraの運用も消失し、Bebra所属機はKassel・Osnabrückに転属した。
 1968年にはナンバリングシステムの改訂で、石炭燃焼式は011形、重油燃焼式は012形となった。1968年3月12日付で012 079が廃車になり、以後01.10形の廃車が本格化する。1970年には01.10形はHamburg-AltonaとRheineの2つの機関区に配属され、Hamburg-Westerland、Rheine-Emden-Norddeichが残された活躍の場となった。1972年夏にはHamburg-Altonaの運用が終了し、Rheineの運用も徐々に縮小した。1975年5月31日01 1100が牽引したNorddeich Mole-Rheine間のEilzug 3260を最後に01.10形は引退し、最後まで残った012 055/061/063/066/075/081/100は6月26日に廃車となった。
 01.10形は55両と生産数が少ない割には引退が遅かったこともあって保存機は比較的多い。しかし、稼働状態にあるのはオランダの団体Stoom Stichting Nederlandによって保存されている01 1075 (重油燃焼式であったが、保存にあたって石炭燃焼式に改造された)のみである。前述した01 1066は2016年12月に検査期限切れで運転を終了し再整備を待つ状態である。01 1104も復活に向けて整備されており、当初は2018年から特別列車を牽引する予定であったが、その後延期され、具体的な復活運転の計画は明らかとなっていない。01 1100も再整備が行われれば、復活する可能性があるが、現在はDB Museum Koblenzで留置されている。01 1102は1996年にオリジナルの流線型スタイルに復元されたが、2004年に重大な損傷を負い、現在はチェコで留置されている。この他、01 1056/1061/1063/1081/1082が博物館などで静態保存されている。
 なお、所属機関区毎の01.10形の主な運用区間は以下の通りである。

BW Paderborn:
Hagen/Hamm/Köln - Kassel/Hannover/Braunschweig/Northeim

BW Hagen-Eckesey
Hagen - Kassel/Köln, Hannover - Braunschweig/Möchengladbach

BW Offenburg
Basel Bad Bf. - Frankfurt(M)/Ludwigshafen/Mannheim/Heidelberg

BW Bebra
Hannover - Frankfurt(M)/Würzburg
Treuchtlingen - Hamburg-Altona
Hannover - Ingolstadt

BW Kassel
Kassel - Hamm/Frankfurt(M)/Bebra

BW Osnabrück
Rollbahn Köln - Münster - Osnabrück - Bremen - Hamburg

BW Hamburg-Altona
Hamburg-Altona - Westerland

BW Rheine
Münster - Emden

諸元: 軸配置 2'C1' h3, バッファー間長 24.130 mm, 全高 4.550 mm, 先輪径 1.000mm, 動輪径 2.000 mm, ボイラー圧力 16 bar, 出力 2350 PS (石炭燃焼式) / 2.470 PS (重油燃焼式), 最高速度 140km/h (後進時 50 km/h), テンダー 2'3 T38

r5.jpg

【模型】

2.jpg

 メルクリンの37105は1966/67年の01 1054 (新しい罐を装備し、重油燃焼式となった姿)をプロトタイプとしている。メルクリンは1984年に初めて01.10形を発売し、バージョンを変えつつ、これまで何度か製品化されており、この製品は2014年の新製品として発売された。最新の製品ではあるが、基本的な設計はこれまでの製品と変わっておらず、ハイピングなどディテールでは最近の製品に比べて劣ることは否めないが、全体の印象把握は非常に良い。別パーツは殆どないので、私のようなずぼらな人間には扱いやすい。

6.jpg

2.jpg

7.jpg

11.jpg

12.jpg

5.jpg

 mfxデコーダーを装備し、フルサウンド仕様となっているが、サウンドの種類は長短の汽笛、ブレーキ音、エアポンプ音など現在の水準に比べると物足りなく感じるかもしれない。DCMモーターを使用しているため、牽引力は十分で走行性能も安定しているが、モーター音はやや大きい。ただ、スピーカーが大きいため走行音がモーター音にかき消されることはない。



 ファンクションで特徴的なのは動輪付近の作業灯で、特に機関区を再現したレイアウトでは印象的な光景となるであろう。

8.jpg

 なお、メルクリンの01.10形についてはmasato-marklinさんが29740を、Akiraさんが3つのバージョン (3310, 3790, 29010)を紹介されている。
 スタイルが良く、頑丈でよく走るということで、私にとって最もお気に入りのモデルの一つである。

10.jpg

【01 1054について】
 01 1054は1940年2月27日に登場し、Bw Leipzig Hbf Westに配属された。1943年にはBw Breslauに移されたが、1945年5月第二次大戦時には運用から外れ、Bw Hannoverに留置されていた。1949年に流線型カバーを外され再整備を受け、Bw Paderbornに配属された。1952年4月には03.10形と交換する形でBw Offenburgに移った。1954年4月に罐の交換が行われ、さらに1957年11月には重油燃焼式に改造されると共にBw Osnabrückに移籍した。
 Bw Osnabrückでは重油燃焼式の01.10形の運用が1957年秋より開始されており、HamburgやKöln・Würzburgには重油補給設備も設けられた。この頃のBw Osnabrück所属の01.10形はBonn・Bremen・Dortmund・Düsseldorf・Essen・Hamburg-Altona・Hamm・Hannover・ Köln・Münster・Hengrlo (オランダ)への列車に運用されていた。1961年時点ではBw Osnabrückには重油燃焼式20両、石炭燃焼式5両の01.10形が所属し、01.10形の配属が最も多い機関区であった。しかし、1962年以降は電化の進展で運用範囲は縮小していく。1964年にはKölnへの乗り入れが終了した一方で、Rollbahnの旅客列車の運用が増加した。
 1965年時点ではBw Osnabrückには重油燃焼式24両、石炭燃焼式13両の01.10形が所属していた。1966年9月にはOsnabrückより南の区間の電化が完成したが、1968年5月まではDortmundまで乗り入れていた。

9.jpg

 1968年1月1日、01 1054は012 054に改番された。電化の進展で、1968年にはBw Osnabrückは21両の012形のみが所属していたが、1968年夏を以て全ての運用が終了し、1968年9月012 054を含む11両の012形はBw Rheineに移籍した。1972年3月15日012 054は運用から外れ、1972年7月20日付けで廃車となり、解体された。

13.jpg


[参考文献]
- Eisenbahn Journal "Baureihe 01.10" 2008年
- Eisenbahn Journal "Die Baureihe 01.10" 1992年
- Jürgen-Ulrich Ebel. "Die Baureihe 01.10. Band 1: Lokomotivlegende zwischen Stromlinieära und Computerzeitalter" EK-Verlag 2010年
- BahnExtra "Von der 01 bis zur 61 Schnellzug-Dampfloks bei Bundesbahn und Reichsbahn" 2018年
nice!(4)  コメント(0) 

Rhein-Ruhr-Express (RRX) [ドイツ鉄道 列車]

2.jpg

 ドイツ北西部、Nordrhein-Westfalen (NRW)州はヨーロッパでも最も人口の集中している地域である。特にラインラント地方とルール地方の主要都市を結ぶKöln – Düsseldorf – Duisburg – Essen – Bochum – Dortmund間はドイツでも利用客数が多い路線の一つであり現状でも列車密度も高いが、慢性的な混雑と遅延が課題になっている。そこで、この路線をコアに周辺都市をカバーする地域輸送ネットワークを改良・整備し利便性を向上させるプロジェクトが開始され、Rhein-Ruhr-Express (RRX)と命名された。RRXプロジェクトは単なる新しい列車の導入計画ではなく、大規模なインフラ整備も含まれており、連邦政府からも優先度の高いプロジェクトと位置付けられ、ドイツでも最大級の鉄道プロジェクトである。NRW州の地域公共交通の輸送量は年々増加しているが、このプロジェクトが完成すれば自家用車から公共交通へのシフトが更に進むと予想されている。
 2000年代半ばに連邦政府・NRW州政府・DBの間でRRXプロジェクトに関する枠組み合意が締結された。インフラ整備の計画と実行はDBのインフラ部門であるDB Netzが中心となり、DB Station & Service・ DB Energieも参加して行われる。Köln – Dortmund間は(1) Köln – Leverkusen – Langenfeld、(2) Düsseldorf、(3) Düsseldorf - Duisburg、(4) Mülheim、(5) Essen – Bochum、(6) Dortmundの6つの区画に分けられ、連邦政府の出資で、DB Netzによって順次線増工事などが行われる予定である。また、Köln – Dortmund間以外の駅についても、NRW州政府の出資でDB Station & Serviceによって改良工事が実施されることとなっている。
 インフラ整備の完成は2030年~2035年になると見込まれており、その際には現在のREネットワークに代わり、以下のRRXネットワークが整備され、コアとなるKöln – Dortmund間では15分間隔でRRXが運行することが計画されている。

RRX 1
Aachen – Köln – Düsseldorf – Essen – Dortmund

RRX 2
Aachen – Köln – Düsseldorf – Essen – Dortmund – Hamm – Paderborn – Kassel

RRX 3
Köln/Bonn Flughafen – Neuss - Düsseldorf – Gelsenkirchen – Dortmund – Münster

RRX 4
Koblenz – Köln – Düsseldorf – Essen – Dortmund – Hamm – Bielefeld

RRX 5
Düsseldorf – Duisburg – Oberhausen – Wesel

RRX 6
Koblenz – Köln – Düsseldorf - Essen – Dortmund – Hamm – Bielefeld – Minden

RRX 7
Düsseldorf – Duisburg – Essen – Gelsenkirchen – Münster - Osnabrück

 このRRXネットワークの実現はインフラ整備の完了を待つ必要があるが、それに先立って2016年12月のダイヤ改正でNRW州をカバーするRegionalExpress (RE)のネットワークに修正が加えられ、2018年12月以降、段階的に以下のRE路線を順次RRXによる運行へ変更することとなった。

RE 1
Aachen – Köln – Düsseldorf – Essen – Dortmund – Hamm

RE 4
Aachen – Mönchengladbach – Düsseldorf – Wuppertal – Hagen – Dortmund

RE 5
Koblenz – Köln – Düsseldorf – Duiseburg – Wesel

RE 6
Köln/Bonn Flughafen – Neuss - Düsseldorf – Gelsenkirchen – Dortmund – Hamm – Minden

RE 11
Düsseldorf – Essen – Dortmund – Hamm – Paderborn – Kassel-Wilhelmshöhe

272.jpg
DB RegioのRE

 RRXの運行は、Verkehrsverbund Rhein-Ruhr (VRR)、Nahverkehr Rheinland (NVR)、Nahverkehr Westfalen-Lippe (NWL)の3つの運輸連合が、Nordhessischen VerkehrsverbundおよびSPNV-Nordと協力して管轄する。RRXには専用の新型車両が用意され、運輸連合VRRが保有して運行会社にリースすることとなった。
 RRXの運行権は入札で決定され、2015年6月16日RE 1・RE 11の運行権をオランダ鉄道NS傘下のAbellio NRW、RE 4・RE 5・RE 6の運行権をイギリス資本のNational Expressが獲得したことが発表された。なお、運行権の期限は2033年12月である。DB Regioが落札に失敗した背景として人件費が高い点が挙げられている。NRW州においては、DB RegioはS-Bahnの運行権の落札にも失敗しており、将来的にはNRW州におけるDB Regioのシェアは50%未満に低下する見込みである。

1.jpg
 
 2015年3月16日、RRXに運用される車両の調達先としてSiemensが選ばれ、新型電車Desiro HC 82編成が発注された。車両調達に加え、32年間のメンテナス契約を結ばれ、17億ユーロに及ぶ大型契約となった。後に納入遅れに対する補償として無償で2編成が追加され、最終的に84編成が製作される予定である。
 Siemensは地域輸送用車両の電車または気動車を“Desiro“ブランドで展開しており、ドイツのtrans regioやオーストリアのÖBB向けに製造されたDesiro ML、スイスSBB向けの総2階建て電車Desiro DDなど様々なバージョンの車両を製造してきた。Desiro HCはDesiroファミリーの最新バージョンの電車で、形式は462形である。
 Desiro HCは乗客の快適性を高めつつ、高い収容力を確保することが重視され、先頭車が1階建て動力車、中間車が2階建て付随車となった点が最大の特徴である。Siemensは既に総2階建て電車を製造した経験があるが、先頭車を動力車とした場合、技術的な制約が多い割に収容力の点でのメリットが小さいと考えられたことから、このような車両構成が選択された。RRX向けのDesiro HCは2階建て中間客車2両を挟んだ4両編成となっているが、中間車を増やすことで5両編成または6両編成とすることも可能である。RRXでは通常2編成併結で運用されるが、最大3編成の併結運転も可能な設計となっている。

7.jpg

 Desiro HCの車体はアルミニウム製で軽量化が図られている。車体幅2,820mm、車体長は先頭車26,226mm、中間車25,200mmで、RRX用の4両編成では編成長は105,252mmとなる。軸配置はBo‘Bo‘+2‘2‘+2‘2‘+Bo‘Bo‘で、主要機器は先頭車の屋根に搭載されており、車内スペースを確保するとともに、メンテナンス性向上も図られている。編成重量は200tである。正面デザインはまず空気力学的に望ましい形状を決められ、その上でライト類など各パーツの配置が決定された。Desiro HCの正面デザインは全く新しいものであるが、従来のDesiro MLのイメージを踏襲している。側面については、編成としての統一感が損なわれないよう配慮され、1階建て先頭車と2階建て中間車の高さが目立たないよう先頭車はパネルで嵩上げされている。なお、車体はTSIおよびEN15227に準拠した衝撃吸収構造を有している。
 編成での出力は4,000kWで、最高速度160km/h、加速度は最大1.1 m/s2の性能を有する。台車は、動力車ではSF 100形、付随車ではSF 500形空気ばね台車が採用されている。Train Control Network 車内情報制御伝送系はイーサネットをベースとしている。
 車内もモジュール構造となっており、1等席・2等星・自転車用スペースなどを路線事情に合わせて設定できる。RRX用編成では片側の先頭車の2/3のスペースに2+2列で36席の1等席が設定された。2等席は364席で、座席定員は400名である。座席は1等・2等とも2+2列配列のクロスシートが基本であるが、2等2階席の階段付近に通路を挟んで座席を向かい合わせに配置された一画があり、また先頭車の一部は自転車などの搭載を考えて折り畳み椅子となっている。1等車では全席、2等車では2席に1席の割合で電源ソケットが用意されている。さらに1等席には読書灯・折り畳みテーブルも付属しており、2等席も一部では折り畳みテーブルが設けられている。インテリアは1階建て車両・2階建て車両に関わらず、極力統一感があるよう配慮されたが、特に2階部分は側窓がカーブしていることもあり圧迫感が大きく、またスペースの制約から荷物棚も小さいという欠点がある。

5.jpg

6.jpg

13.jpg

 折り畳み椅子が設けられたスペースには最大18台の自転車搭載が可能である。Desiro HCは、移動困難者でも快適に利用できるようEUが定めた規制であるTSI PRMに準拠している。乗客の移動や乗降をスムーズにするため、乗降扉は幅の広いものとなり、デッキや通路は極力広く取られている。乗降口の高さは先頭車800mm、中間車730mmで、ヨーロッパの標準である高さ760mmおよび550mmのプラットフォームに対応している。特に先頭車は760mmプラットフォームからフラットな乗降が可能で、車椅子や乳母車などを用いる乗客に対応している。トイレは中間車に1か所ずつ設けられた他に、2等車側先頭車には身障者対応のユニバーサルトイレが設置されている。

11.jpg

10.jpg

 車内照明はLEDである。空調装置は三菱電機が受注し、乗車人数に合わせてエネルギー消費を最適化する機能を有していることが特徴がある。。車内各所には情報案内用の液晶モニターが設置されている。また、セキュリティ向上のため、高解像度のCCTV監視カメラが設けられている。RRXではWLAN設備が設けられ、無料WiFiサービスが提供される。

12.jpg

 RRXのカラー・コンセプトはグレーを基調にオレンジ色をアクセントとしており、ドットマトリックスを用いているのが特徴である。外観では、1等車側の先頭車正面がオレンジに、2等車側が黒色となっているのが目立つ。RRX用の外観デザインは2009年にはRE 3に運用されていたEurobahnのStadler製Flirtの外観に試験的に施されていたが、このデザインは実車の開発の過程で少しずつ変更が加えられている。インテリアデザインにおいては、当初案に比べオレンジ色の使用は抑えられてグレーを基調とすることで、高級感のある内装となっている。

9.jpg

 RRXのデザインを担当したのはTRICON DESIGN AGである。同社のRoland Dressel氏が記した専門誌の記事によると、RRX向けのDesrio HCのデザイン・プロジェクトは、「Siemensの新車両Desiro HCのデザインすること」・「Desiro HCのデザインをRRXの要件に合わせて調整すること」・「RRXのデザインコンセプトの実行すること」の3つの要素からなっており、全く新しいコンセプトの列車をデザインしつつ、RRXという新しいブランドの作り上げたこのプロジェクトは、デザイナーにとっても非常に魅力的であった、としている。その高品質なデザインは高く評価され、2016年iF Design Award、2017年German Design Awardを受賞している。
 Desiro HCの製造はKrefeld・Wien Simmering・Graz・Wegberg-Wildenrathの各工場で行われる。なお、Desiro HCはRRX以外からも発注されており、2019年7月現在、DB RegioがNetz Rheintal (Freiburg・Basel方面)用に4両編成15本、Go Ahead GermanyがAugsburg向けに5両編成12本、Ostdeutsche Eisenbahn GmbH (ODEG)がNetz Elbe-Spree 向けに6両編成21本・4両編成2本をそれぞれ発注している。さらにイスラエルからも24編成が発注されている。

14.jpg

 2017年3月31日Krefeld工場でRRX向けDesiro HCの先頭車が姿を現した。5月にはWienで製造された2両の中間車がSiemensのテストセンターがあるWegberg-Wildenrathに到着し、ここで先頭車と連結されて4両編成となり、試運転が開始された。7月12日にはメディア向けに内装・外観が公開され、11月20日には本線での試運転が開始された。さらに2018年9月にはBerlinで開催されたInnoTransでRRX用のDesiro HCが公開された。
 2018年6月、Dortmund-Evingに操車場の跡地を利用して、RRX用の保守基地が完成した。保守基地の面積は70,000m2で、基地内の線路長は5.5kmに達する。保守基地は、6線の整備庫、3階建ての倉庫、清掃設備などから構成される。高性能3Dプリンターも備えられ、スペアパーツの迅速な補充を可能としている。この基地は徹底したデジタル化が推進されている点も特徴である。この保守基地は今後32年間、RRXの保守整備を担当することになる。
 2018年12月、連邦鉄道庁EBAよりRRX用のDesiro HCの営業運転に対する認可が下り、予定通り2018年12月9日ダイヤ改正でRE 11系統でRRXの営業運転が開始された。運行を担当するのはAbellio NRWで、まずは15編成のDesiro HCがこの運用に就いた。2019年6月9日よりRE 5系統もRRXによる運行となった。運行を担当するのはNationalExpressである。なお、これに先立つ5月9日よりDB Regioが運行していたRE 5系統の1運用が乗務員の習熟のため、RRXによる運行となっていた。RRXはこれまでおおむね順調に営業運転を行っている。定評のあったDB Regioの2階建て客車に比べて快適性で劣るのではないか、という批判もあるが、乗客には概ね好評をもって迎えられている。

3.jpg

8.jpg

 2019年12月からはRE 6系統 (NationalExpress)、2020年6月からはRE 1系統 (Abellio)、2020年12月からはRE 4系統 (NationalExpress)がRRXによる運行となる予定で、RRXがNRW州の地域輸送で中心的な役割を担うことになる。

4.jpg

 RRXはヨーロッパでも最大級の都市圏の地域輸送を、運輸連合が主体となって整備する壮大な鉄道プロジェクトであり、今後の動向も注目される。

<参考>
Roland Dressel. ”High Capacity Design – Die Gestaltung des Triebzuges Desiro HC für Siemens und den Rhein-Ruhr-Express (RRX)”. EI-SPEZIAL, Sep. 2017.
Eisenbahn Kurier 各号
Eisenbahn Modellbahn 各号
RRX ホームページ (www.rrx.de)
Siemens Mobility ホームページ (www.siemens.com)
Deutsche Bahnホームページ (www.deutschebahn.com)
TRICON ホームページ (www.tricon-design.de)
RP ONLINE (rp-online.de)
Der Western (www.derwesten.de)
Railcolor News (railcolornews.com)
Railway Gazette (www.railwaygazette.com)
Railway Technology (www.railway-technology.com)
Drescheibe-Online (www.drehscheibe-online.de)
Lok Report (www.lok-report.de)
www.elektrolok.de
nice!(11)  コメント(2) 
前の5件 | -

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。