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7月31日 München → Nürnberg → Halle → Wernigerode [ドイツ・オーストリア鉄道旅行 2012]

 München Hbfのホームの正面はフードコートになっているので、遅めのランチを調達すべく見て回る。まず目に入ったのは、ミュンヘン名物Weisswurst白ソーセージ。昔は鮮度を考え午前しか食べなかった代物とのことだが、午後でもこれを食べればちょっとしたミュンヘン気分が味わえる。ただ、これだけではちょっと物足りない。もう少し見て回って目に入ったのが寿司パック。ドイツの寿司は車内で味わうことにする。
 21番線には14時49分発のICE 1104が停車している。ICEといっても、最後部は101形。実はこのICEはKöln – Hambueg間に2004年まで運行されていたMetropolitan METの客車が使用されているのである。わずか2編成しかないMET客車だが、1日1往復のみBerlinからはるばるMünchenまで乗り入れているのである。今回の旅の目的の一つがこのMET客車だが、ここでは乗らない。

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 代わりに、隣のホーム23番線から14時50分に発車するICE 622 Dortmind Hbf行に乗車する。編成は403形Tz 315 “Singen (Hohentwiel)”である。ICE 1104はAugsburg経由でNürnbergに向かうが、ICE 622はIngolstadt経由で高速新線を通るため、所要時間がかなり短い。そこで、ICE 1104に先行してNürnbergに向かい、しばらく撮影を楽しむことにしたのである。先頭の21号車(2等) ラウンジの17番席に座る。車内は満員の混雑、しかもせっかくのラウンジ席なのに、運転室との仕切りはスモーク状態である。

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 まずはBordBistroに行ってビールを調達する。グラスに入れてもらったビールを持ち、再び自席に戻る。列車が定刻通りに発車したところで、寿司パックを開ける。ネタはサーモンやエビなどで、バリエーションには乏しい。味は日本のスーパーと同等といったところか。

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 よく晴れているせいか、スモーク状態とはいえ、前面展望もそこそこは幸いである。一昨日通った路線を逆方向に、列車は北へと向かう。PetershausenでS-Bahnとの並走区間は終わり、複線区間となる。Rohrbachの先で減速、幹線上なのに複線の片側を封鎖して工事を行っているのである。工事区間を過ぎ、Baar-Ebenhausenを通過する頃には再び加速する。Ingolstadt Hbfを通過し、Ingolstadt Nord付近で高速新線に入ると、最高300km/hのトップスピードで駆け抜ける。

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 高速新線を走り抜け、在来線に入ったところで荷物をまとめてデッキへ。若い女性車掌と乗客の男性が夢中になっておしゃべりしている。まもなく15時57分定刻にNürnberg Hbfに到着する。

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 ここでしばらく撮影する。まずは乗車してきたICE 3を撮影するが、定刻になっても列車はなかなか発車しない。先頭ドアの前では先ほどの女性車掌と若い男性の乗客が相変わらず話し込んでいる。定刻から5分遅れた16時05分、ようやくドアが閉まる。とその前に、車掌と乗客がチュッ、確認合図を運転手に送る前にチュッ、動き出す前にチュッ。どうやら恋人らしいが、日本では絶対にありえない光景である。まさか、発車が遅れたのも、このためではない・・・・と信じたい。

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 気を取り直して撮影。まずは予定よりも大幅に遅れたとはいえ、ドイツ各地に大量に導入されているBombardier製 Talent 2、442形である。ここNürnbergでは従来の143形とx-Wagenに代わりS-Bahnに投入されている。

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 引退が始まったとはいえ、111形の姿も目立つ。Modus-Wagenとの組み合わせはこの地域ならではである。

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 列車が途切れたので、一旦コンコースへ下りて、構内のお土産店でレーヴクーヘンを探すが、残念ながら取り扱いはなかった。諦めてホームへ戻ると、16時29分に、先程München Hbfで見送ったICE 1104が制御客車を先頭に入線してきた。ここでICE 1104は方向転換し、101 130が先頭に立つ。

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 車内は2等車は大半の席が埋まっており、1等車も50%を超える乗車率である。最後部の1等車に乗り込み発車を待っていると、ホームの反対側にはMünchen HbfからIngolstadt経由でやって来たLübeck Hbf行ICE 584が到着、ICE 2である。
 相互に接続を取り、ICE 584とほぼ同時に、16時34分にNürnberg Hbfを発車する。しばらくICE 584と並走しながらFürth付近までデッドヒートを繰り広げる。

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 Fürthの先で大きく右にカーブしてWürzburg方面と別れ、北へと針路を向ける。ここからは複線区間である。最高160km/h対応の路線だが、列車はそれほど速くは走らない。せいぜい100~140km/h程度だろうか。
 ここでBordBistroに行き、白ワインのミニボトルと水を調達する。元MET客車は7両編成にBistroが2か所設置されているが、営業しているのは1か所のみ、しかもBistro自体は小さく、他のICEやICのそれに比べるとメニューは少ないが、飲み物は充実している。

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 席に戻り、ゆっくりと車窓風景を楽しむ。列車はRegnitz川やMain-Donau運河に沿うように走るが、それらの姿はほとんど見えない。Nürnberg Hbfから69.4km、Bambergを通過する。Bambergは世界遺産となっている美しい街で、ICEの一部も停車する。クラシックファンにはバンベルク交響楽団もお馴染みである。

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 その先でマイン川に沿ってSchweinfurt方面に向かう路線が左に分かれ、北東へと向かう。マイン川が近づいたり離れたりする。ドイツの夏らしい光景を楽しんでいると、Ebensfeldの先で左に鉄道路線の建設現場が現れる。これは300km/h対応の高速新線NBS Erfurt – Nürnbergとなるが、まだ工事はあまり進んでいないようだ。

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 Bad Staffelstein付近では左手の山の中腹に巨大な教会が見える、Kloster Banzである。

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 その次のLichtenfelsの手前には古い廃車体が置かれている。何と、VT 11.5の中間客車まである。駅には111形が停車している。

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 ワインも飲み干しても何だか物足りなくて再びBordBistroへ。選んだのはフランツィスカイザーの白ビール。甘味のある白ビールもたまには良いものだ。

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 Hochstadt-MarkzeulnでKulmbach方面の路線と分かれ、列車はさらに北へと向かう。ここから50km余りはFrankenwaldbahnと呼ばれる勾配路線である。最高160km/hに対応しているが、最急勾配29パーミルと、カーブは最小半径300mと、線形はかなり厳しい。Gundelsdorfを通過すると上り勾配が続く。さらにFörtschendorfを通過すると急カーブが連続する区間となり、スピードは一層落ちる、もう100km/hも出ていない。Steinbach am Waldがサミットで標高593mである。ここからは下り勾配の区間となるが、相変わらず急カーブが続き、山深い中をLoquitz川に沿ってゆっくりと走る。振子式のICE-Tなら少しは速く走ることが出来るのかもしれないが、それも限界があろう。高速新線が建設される理由が理解できる。Pribstzella、Hockerodaを通過すると、今度はSaale川に沿って走る。勾配は一段落したが、相変わらずカーブが連続している。

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 市街地に入り、最徐行でSaaldeldを通過、ここからはSaalbahnの名の通り、Saale川に沿って走る。
Rudolstadt-Schwarzaを通過し、針路を北から北東へ向ける頃、ようやく加速する。といっても、やはりカーブが連続し、それほどスピードは上がらない。実際、この区間は最高120km/hでドイツの幹線としては、高速化の波に乗り遅れている。

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 すでに2時間程度走り続けており、車内にはけだるい雰囲気が漂う。MET客車の内装はICEやICとは異なる個性を放っているが、木目調の壁、本革張りの高級感のあるシート、あるいはサイレントカーといった試みは現在のICEにも引き継がれている。詳細に見えると、中途半端なBordBistro、重厚感はあっても重くて使い勝手の悪い木のテーブルなど車内設備の問題点は目につくし、何よりもMETそのものは失敗に終わったことは否定できないが、METの車内サービスはドイツ鉄道の現在に確実に息づいているのも間違いない。

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 西日が差し込み、寝ている乗客が目立つ。私もアルコールの影響か睡魔に襲われる。気が付いたら、Jena Paradiesに到着するところであった、18時52分定刻である。

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 18時56分に発車、列車は相変わらずSaale川に沿って100km/h程で走る。幹線は大抵高規格のドイツでは、これでもゆっくりに感じられる。それでもICE-Tや様々な貨物列車とよくすれ違う。こんなドイツの真中でSBB Cargoの電機も見かける、もはやヨーロッパ鉄道では国境はないのである。

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 Weimarからの路線と合流すると、程なくしてNaumburg Hbfに到着、19時24分である。反対側にDresden行IC 2235が到着し、接続を取った後、少々遅れて19時30分に発車する。

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 Saale川が列車の左右を蛇行しながら流れる中、列車は100km/h程で走る。すっかり日は傾き、日の入りは近い。Merseurgを通過すると、まもなく建設中の高速新線と立体交差する。この辺りは高架橋が完成しており、工事が進んでいるようだ。その高速新線からの短絡線が合流すると減速、定刻の20時ちょうどにHalle Hbfに到着、3時間半の旅を終え、私もここで下車する。

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 ICE 1104の発車を見送った後、コンコースへ下りる。車内のショッピングモールで夕食でも買おうと思うが、閉店時間が近いせいか、あまり良いものがないので断念し、再びホームへ。

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 ここから20時21分発のGoslar行RE 3618に乗る。既に612形の2両編成が発車を待っている。スーツケースを持ち上げて車内へ入る。2等車は大半の座席が埋まっているが、1等車は誰もいないので、テーブル付の座席に腰を下ろす。612形はRE用の振子気動車、軽量化も重視されるのであろう、車内設備はオーソドックスで窓も最近の車両にしては小さいが、それでもなかなか快適である。

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 定刻に発車、大きく左にカーブして他の路線をオーバークロスし、S-Bahnと合流すると、北西に向けて一気に加速していく。S-BahnはHalle-Trothaまで、そこからは単線非電化区間となるが、最高160km/hの性能を持つ612形のスピードは全く衰えない。振子列車の特性か、細かいは揺れはあるが、高らかに響くディーゼルエンジンもあいまって、スピード感はICE以上。実にダイナミックな走りに、思わず胸が高まる。Halleから15分でKönnernに到着する。

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 Könnernを出発すると西へ向かい、まもなくSaale川を渡る。カーブでも全く減速しないのは振子列車の強みである。Hettstadtからの路線が合流し、北に向かったところで、Sanderslebenに到着する。

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 Sanderslebenの先で、Güsten方面とデルタ線になっている。Güstenからの路線が合流したところがAschersieben、20時54分と定刻通りの到着である。ここからはしばらく複線区間であるが、それもFroseまで。その先は再び単線区間となるが、列車は相変わらず胸のすくような快走をみせる。しかし、外はかなり暗くなっており、車窓風景は望めなくなった。Gaterslenに停車した後、Thaleからの路線が合流するWegelebenから複線区間となり、まもなくHalberstadtに到着する。ここでしばらく足止め、定刻になっても発車しない。どうやら接続待ちをしているようだ。HEXの気動車が到着したところで、ようやく発車する。

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 再び単線となる。ここからは最高120km/hの区間である。真西に向かった列車はHeudeber-Danstedtで左にカーブして南西へ進路を変え、定刻より8分遅れの21時40分にWernigerodeに到着する。朝5時30分にSalzburgを出発して16時間以上の鉄道旅を終え、私はここで下車する。

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 駅構内は乗客はある程度いるが、既に窓口は閉まっており、駅員もいない。幸いにも駅前にはタクシーが待機している。ドライバーがいないかと思ったが、タクシーに近づいたら、駅前にたむろしていた若者たちの一人がやって来た。Wernigerodeの中心部までは10分程、市庁舎のすぐ横にあるTravel Charme Gothisches Haus Wernigerodeが本日の宿である。
 古めかしい建物に入り、チェックインする。ドイツでも田舎のホテルということもあってか、フロントの女性は英語はあまり得意ではなさそうであったが、それでも簡単でも良いから食事が摂れないか、という私の要望に親身になってくれて、コールドミールしかないが、バーで食事を用意してくれることになった。
あてがわれた部屋で荷物をおろし落ち着いたところでバーへ行くと、既に食事の用意をしてくれていた。サラダから何種類ものハム・チーズ、パン、果物となかなか豪華で美味しい。ビールをお願いしたら、出てきたのはこの地方の名物ビール、Hasseröder。これが実に美味しく、思わずもう一杯。体が疲れているせいもあってか、酔いも回ってとても良い気分になる。バーの男性から、食事はどうだったか、と尋ねられ、とても美味しかったし、ビールは最高、と答えたら、如何にも嬉しそうに、そして誇らしげに、このビールは特別だ、と答えたのが印象的であった。バーを後にして部屋に戻り、長い一日を終えた。
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Berliner

こちらへのコメント有り難うございました。
振子列車のダイナミックな走りを楽しまれましたね。最後の写真ではPC枕木が真新しいですが、HalleからGoslerへと至る路線も改修されて高速化していましたか。ハルツ山地の北側を行く路線、一部を除いて未経験です。
Sachsen-Franken-Magistraleは、カーブが多いにも関わらず、在来幹線並の高速化を果たしていました。

Wernigerodeで降りたということは次はハルツ狭軌鉄道でしょうか。
by Berliner (2012-11-15 04:29) 

Akira

おはようございます。HUHさん。

ニュルンベルクからHalle迄の旅、楽しく拝見させていただきました。と言うか、私も今回ニュルンベルクからICE-Tでベルリンに同じルートで向かったのですよね。今回の移動で一番の思い出になった路線です。特に旧東独地域の山間からライプツィヒに掛けての路線は美しい車窓を楽しめました。
by Akira (2012-11-15 09:36) 

Mainz05

はじめまして。HUHさん。
いつも楽しく拝見しております。自分はドイツ鉄道とブンデスリーガに興味があります。
HUHさんのブログは現地の写真が多く勉強になります。
では宜しくお願い致します。
by Mainz05 (2012-11-15 19:38) 

HUH

Berlinerさん
コメントを有難うございます。夜でしたし、きちんと確認していませんが。単線非電化区間でも高速化改良はそれなりに進んでいるようでした。いくら振子列車でも、軌道がある程度良くないとあそこまでは飛ばせないと思います。
ご推察の通り、次回はハルツ狭軌鉄道編です。

Akiraさん
私もこのルートは初めてでしたが、なかなか楽しかったです。森の中を左に右に曲がりながらゆっくりと走り抜ける旅も良いものですね。
元MET客車の旅も中々でした。

Mainz05さん
はじめまして。コメントを有難うございます。私もブンデスリーガは好きで週末にはよく見ていますし、結果のチェックは欠かしません。
ここに書いているのは、私自身の覚え書きという部分が大きいのが正直なところですのでお恥ずかしいですが、雰囲気だけでも味わっていただけるようでしたら嬉しいです。
今後も宜しくお願いします。
by HUH (2012-11-15 22:40) 

HUH

hikariさん
以前正しい日本料理を広めるんだ、と息巻いていた政治家がいましたが、せっかくの海外旅行、寿司ならぬSUSHIを味わうのもなかなか楽しいものですね。考えたら、我々が日本で食べている他国料理も、その国の人から見たら別物ということは少なくないように思います。

問題の人は仰る通りウォーリー君です。問題のシーンが終わるのを待って動画を撮ったので、何だか慌ただしい写り方になってしまいました。

旧MET客車ですが、1編成に2か所小さなバーを作ったのが完全に裏目で、中途半端になってしまっていますね。それでも、いつでもビールが返るには有難い限りです。

私はWeissはあまり好きではなくて、圧倒的にPils派です。苦みの効いたどっしりしたものが好きで、そういう意味でもHasseröder Pilsはとても気に入りました。最後の晩の寝酒にも、スーパーでこれを買ったくらいです。

フランツィスカーナーは仰る通りですね。
by HUH (2012-11-17 10:39) 

Y.N

今回も楽しく拝見させて頂きました。

私も先日2週間の渡欧を終え帰国しました。乗った路線が同じ箇所も有り、昨日の様に蘇ります。

今回は遅れは殆ど無かったもののアクシデントが2回有りました、一つはケルン手前で先行列車故障の為乗ったICE-3が引き返し、もう一つは乗車したICE-1がフライブルク手前で故障立ち往生・・・・ただ、DBはトラブル時の対応が慣れている?(対応がうまい)のかそれ程問題も無く旅を継続できました。

次回はいよいよハルツのナローSL(と言っても1mゲージですが)の話題に期待しています。
私はベルリン滞在中の1日しか取れないSL訪問を悩んだ挙句「モッリー」にしたため、ドレスデン近郊の750mmゲージSLとMETには乗れませんでした。


by Y.N (2012-11-24 07:40) 

HUH

Y.Nさん、こんにちは。
ドイツ鉄道がトラブル時にも臨機応変に対応するのは確かに良いところですが、そもそもトラブルが多すぎるには困りものですね。
モッリーも是非一度乗りたいのですが、あまりにも遠くてチャンスに恵まれません。羨ましいです。
次回のハルツは馴染みがないだけに調べなければならない点もあるのですが、そのうち掲載したいと思います。
by HUH (2012-11-25 23:14) 

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