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VT08.5 Weltmeisterzug (Maerklin 39080+42080) [鉄道模型 Maerklin]

 3歳から7歳になる直前までEssenに住んだ私は、地元の弱小サッカークラブに入っていた。出場2試合、2ボールタッチ(笑)、記憶が正しければこれが私の全記録である。しかし、兄弟2人が今でもサッカーに熱中していることもあり、私もサッカーは好きである。そして、幼少時の刷り込みというものは恐ろしい、鉄道といえばDBであり、飛行機といえばLufthansaであったのと全く同じく、私にとってのサッカーはドイツ代表であり、ブンデスリーガなのである。したがって、ワールドカップでは、常にドイツが最も応援するチームということになる。
 ドイツはワールドカップ優勝3回を誇る、世界有数のサッカー大国である。ドイツが初めて優勝したのは敗戦からわずか9年、1954年スイス大会のことであった。ヘルベルガー監督と主将フリッツ・ヴァルターを中心とするドイツは、当時世界最強を誇ったマジック・マジャール、ハンガリ代表に予選リーグでは3:8の大差で敗れたものの、その後は勝ち上がり、決勝ではヘルムート・ラーンの決勝ゴールでハンガリーを3:2で破って初の世界王者の座に着いたのであった。このドイツの快進撃は「ベルンの奇蹟」として、決勝ゴールのTor! (ゴール!)という実況と共に、今に語り継がれている。
 そして、快挙を成し遂げ、帰国の途へ就く英雄たちをSpiezからMuecnchenまで送った列車が、Weltmeisterzug (ワールドカップ列車)である。Weltmeisterzugは当時最新鋭の特急用気動車、VT08.5により運転された。編成はVT08 502, VM08 509, VS08 502で構成され、中間車には”Fussball-Weltmeister 1954” (サッカー、ワールドチャンピオン 1954)と大きく記されていた。列車は沿線各地で計2万人以上の熱狂的な歓迎を受け、何度も立ち往生したため、Muenchen到着は大きく遅れたという。
2003年製作のドイツ映画「ベルンの奇蹟」は、1954年ワールドカップにおけるドイツの快進撃の中で、戦争の傷跡から再生していく家族の姿を描いた感動的な作品であり、ドイツでは360万人もの観客を動員した。映画の舞台がEssenということもあり、私にとっても思い入れのある映画作品である。そのラストシーンは、優勝を成し遂げた代表チームが乗せたWeltmeisterzug、VT08.5が走り去るシーンであり、私はその姿にすっかり魅了されたのであった。

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 メルクリンはドイツ・ワールドカップが開催された2006年のインサイダーモデルとして、VT08.5の3両セットVT08 502+VM08 502+VS08 502 (39080)に加え、Weltmeisterzug用に” Fussball-Weltmeister 1954”のロゴが入った中間車VM08 509 (42080) も発売した。今回、中古でこのモデルをみつけ、衝動買いしてしまったので、紹介したい。なお、Weltmeisterzugにこだわって、今回はVT08 502、VM08 509、VS08 502についてのみ触れたが、VM08 502もロゴがない以外はVM08 509と同様である。

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 モデルは3両編成での全長が85.6cmで、メルクリンモデルとしては全長が長く、重量感のあるダイキャストボディと相まって、存在感のあるモデルである。Cサインモーターを搭載し、走行は静かで滑らかである。ディテールはあっさりした印象であるが、魅力は何と言っても、美しく再現された流線形の前頭部、そして美しい塗装である。

● VT08 502
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● VM08 502 “Fussball-Weltmeister 1954”
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● VS08 502
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 ファンクションも豊富で、走行音や室内灯、前照灯/尾灯などに加え、1954年ワールドカップ決勝の実況まで収録されているのは、サッカーファンには嬉しいところである。



 モデルの詳細は名古屋メルぽッぽクラブのサイトで紹介されているので、そちらも是非ご覧いただきたい。なお、2010年新製品として予告されている39081は、先頭部分の塗り分けが変更された1959年頃の姿をプロトタイプとしている。

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 VT08.5は1952年に登場し、先頭動力車VT08.5が20両、中間車VM08.5が22両、先頭制御車VS08.5が13両製作された。動力車の出力は1,000PSで、最高140km/hを誇った。編成はVT+VM+VS、VT+VM+VM+VS、VT+VM+VM+VT、VT+VM+VM+VM+VTであった。 
 登場当初からFt-Zugに投入され、”Helvetia” (Hamburg-Zuerich)、”Paris-Ruhr” (Dortmund-Paris)、 ”Roland” / “Schauinsland” (Bremen-Basel SBB)、”Saphir” (Dortmund-Oostende)などの名列車に用いられた。さらに1957年からはTEEにも使用されたが、電化区間の拡大やVT11.5の登場で次第に活躍の場は狭まっていき、1963年からはオール2等車の近郊用に改造され、順次VT12.6と改称された。1969年には最後の長距離運用Frankfurt-Parisも消滅し、以後はHamburg、Braunschweigで近郊運用に就いた。晩年はBraunschweigに配属され、1985年に引退した。
 現在、VT08 503 / VT08 520 / VM08 510 / VM08 512 / VS08 530がBraunschweigを本拠とするBSW-Gruppeにより、オリジナルの姿で大切に動態保存されており、このうちVM08 510は映画「ベルンの奇蹟」の撮影に用いられた際に”Fussball-Weltmeister 1954”のロゴが入れられている。
 「ベルンの奇蹟」の立役者、ゼップ・ヘルベルガーは1936年から1964年までの長きにわたりドイツ代表の監督としてドイツ・サッカーの礎を築き、1977年にその偉大なる人生に終止符を打った。1954年ワールドカップを33歳で迎えた主将フリッツ・ヴァルターは、さらに1958年ワールドカップでもベスト4進出に貢献した後に引退、地元カイザースラウテルンでのワールドカップ観戦を心待ちにしながら、2002年にその生涯を終えた。決勝ゴールを決めたヘルムート・ラーンは1965年まで現役を全うした後、Essenでユーモアあふれる自動車セールスマンとして生き、2003年に鬼籍に入った。そして、伝説の英雄たちがもたらした「ベルンの奇蹟」を、今、VT08.が静かに語り継いでいるのである。

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300B

こんにちは

VT08.5の入線おめでとうございます

丸っこい顔つきに愛嬌が有って良いですね。私は39081を入線させましたがお気に入りの一つになっています。
by 300B (2010-06-19 20:34) 

HUH

300Bさん、こんにちは。
私はWeltmeisterzugのこともあり、オリジナルの39080のバージョンが好きですが、39081のようなV字形の塗り分けや、TEEバージョンも魅力的かもしれませんね。
それにしても、起動の際、ディーゼルエンジンの音が高まって、ゆっくりと動き出す様子は素晴らしいです。私もこのVT08.5はとても気に入っています。いつか、一緒に走らせたいですね。
by HUH (2010-06-20 19:13) 

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