SSブログ

3月2日 Frankfurt/M → Amsterdam [ドイツ・オランダ鉄道旅行 2005]

Frankfurt Hbfから乗車するICEまではまだ1時間ほど時間がある。友人二人は市内見学に出て行ったが、私は発着する列車を眺めて時間をつぶすこととした。
頭端式で、何本ものプラットホームが並ぶ広大なFrankfurt Hbf、目当ての列車まで移動するのも一苦労であるし、構内はドームに覆われ暗く、至る所で改修工事が行われているとあって、撮影に向いているとは言い難い。それでもICE-Tや101形など、模型で親しみのある車両達を中心に眺めていると、あっという間に時間が経った。

f1.jpg

f2.jpg

発車20分ほど前になったところで、これから乗るICE 124が発車する19番線へ向かう。
 既にAmsterdam行のICE 124は入線済み、車両はICE 3M (406形)、DB所属のTz 4602編成である。ドイツ鉄道の顔にふさわしい流麗で美しい外観を眺めながら、最後部から先頭へと移動する。写真で見る限り、ICE 1やICE 2に比べ車体幅が狭いためか、やや車体が小ぶりな印象を受けていたが、近くで見ると案外に大きく感じ、貫禄も十分である。

ice124_1.jpg

ice124_2.jpg


ice124_3.jpg

大きなスーツケースを持った乗客が時々乗り込んでいくが、乗客は多くはないようだ。先頭まで行くと、既に運転手が乗り込んでおり、発車の準備を行っていた。ICEの扉は日本で言う半自動扱い、緑色に点灯したボタンを押して扉を開け、私も車内に入った。今回の旅の中でも私にとってのメインイベント、念願のICE 3への初乗車である。今日は運転席直後の展望席を予約済み、期待と興奮を抑えながら指定された左側通路側の13番席に腰を下ろした。
 ところが発車10分前になっても、友人達が姿を現さない。電話をしても、通じない。このICEに乗れないのではないか、と焦り始めたころに、ようやく走ってきた。どうやらレーマー広場まで行ったらしいが、思った以上に遠かったとのこと。何はともあれ、これで一安心である。車内は空いており、3割程度の席が埋まっている程度である。
15時ちょうどにICE 124は発車する。運転手がノッチレバーを倒すとインバータ音が響き、徐々に加速していく。

ice124_4.jpg

Frankfurt Hbfの広大な構内を、転線を繰り返しながらゆっくりと走り、左側に大きくカーブしてマイン川を渡る。右にS-Bahnが並行する。スピードは50~60km/h程度、ゆっくりとFrankfurt市内を走る。車内放送はドイツ語・英語の順で行われているが、聞いている限り、オランダ語では案内していないようだ、オランダ人は英語が堪能と聞くので、実用上の問題はないのかもしれないが。
Frankfurt Sportfeldで左に転線し、さらに空港方面へと分岐する頃にようやく加速、スピードに乗る。しかし、トンネルを抜けると、まもなく空港長距離駅Frankfurt Flughafen Fernbahnhofに到着である。
空港駅では、中央駅以上の乗車があったが、それでもまだ空席も多く、旅を楽しむには程良い混雑である。ここまでは左側の席に座っていたが、前面窓の大柄なワイパーに視界を妨げられる。そこで右側通路側17番席に座っている友人と席を交替してもらった。こちらは前方の視界が広い上、スピードメーターも確認できる。
 15時17分定刻に発車、これまでと打って変わって、一気に加速していく。スピードメーターに示される車内信号は「300」を示している。

ice124_5.jpg

マイン川を渡るとカーブと勾配が連続する。既に200km/hに達し、さらに加速を続けるが、上りこう配ではスピードがむしろ下がり、なかなか300km/hには達しない。ようやく300km/hに到達した時には、空港駅から20km以上走っていた。この高速新線はカーブと最大40パーミルの勾配が続き、線路条件が厳しいことは知っていたが、実際に乗車してみると想像以上、まるでジェットコースターに乗っている気分である、特に下りこう配を駆け下りながら曲線区間を走り抜け、トンネルに突入していく時などは迫力満点、少々怖いくらいである。並行する高速道路を走る車も、さすがICE 3の敵ではない。この時期のドイツらしい、薄曇りで雪の残る田園風景の中を、異次元の速さで駆け抜ける。列車に乗って、これほどの興奮を覚えた記憶がない、本当に素晴らしい走りである。

ice124_6.jpg

ice124_7.jpg

ice124_8.jpg


ice124_9.jpg

ice124_10.jpg

 とはいえ、車内の揺れは少なく、これだけの路線でありながら、乗り心地は良く、路線の厳しさを感じない。やや堅めだが、身体にフィット感があり座り心地の良い腰掛でくつろぎながら、前方に展開される光景に見入っていると、この高速新線で開始された、ワゴンによる車内販売が回ってきた。ビールを注文すると、瓶ビールにグラスまで差し出されるのがうれしい。ビール文化は、こんなところまで浸透しているのである。新幹線の通過駅と同様に、通過線の外側に副線が設けられたLimburg Sued、そしてMontabaurと続けて通過する。

ice124_11.jpg

ice124_12.jpg

ice124_13.jpg

いずれの駅も近代的な駅舎を備えるが、駅の規模は小さく、駅周辺も建物が少ない。利用客はどれだけいるのであろうか。列車は250~300km/h程度を維持しながら、相変わらず連続する勾配と曲線を超えていく。

ice124_14.jpg

ice124_15.jpg

200km/hまでスピードを落とすと、まもなくSieburg/Bonnを通過する。ここからは改良新線区間となり、最高200km/hとなる。左からライン川右岸線が近づき、列車は3複線の中央を走る。既にKoelnやBonnの郊外、沿線には建物が並び、S-Bahnの423形の姿が見られる。

ice124_16.jpg

ice124_17.jpg

程なく減速し、S-BahnのKoeln-Steinstrasse付近で列車は本線から分かれ、左へ大きくカーブする。スピードは50 km/h程度に落ち、トラス橋でゆっくりとライン川を渡る。右には世界遺産となった大聖堂とHohenzollern-brueckeが望める。

ice124_18.jpg

ice124_19.jpg

左からライン川左岸線が合流し、Koeln Suedを通過して、今度は右に大きくカーブする。何線もの線路が並ぶ区間をゆっくりと慎重に走ると正面にKoeln Hbf、そしてその横の大聖堂が見えてくる。右に大きくカーブしながら、16時15分過ぎ、Koeln Hbfの一番大聖堂寄り、1番線に到着する。

ice124_20.jpg

この地域の中心都市だけのことはあり降車が多いが、乗車客も多く、車内はむしろ混んだようだ。
Koeln Hbfを発車すると、左へ急カーブし、Hohenzollern-brueckeでライン川をゆっくりと渡る、すぐ前をICE 3が走行中、回送であろうか、それともFrankfurt方面への列車であろうか。巨大なメッセ会場の真横を通りKoeln-Deutz/Messe駅を通過すると、左にカーブしながら速度を上げていく。

ice124_21.jpg

ice124_22.jpg

ここからは在来線区間であるが、最高200km/hとスピードは速い。しかし、路盤の問題か、高速新線に比べれば、やや細かい揺れが大きい印象である。左に複線のS-Bahn、そしてICEの走行する列車線も複線でICEとともにICやREも走行する。S-Bahnは143形牽引の客車編成と423形が活躍している、列車線を走るREには146形が目立つ。

ice124_23.jpg

Bayer製薬の巨大な工場を横にLeverkusen Mitteを通過すると、S-Bahnの駅にDuesseldorfの名が登場する。まもなく減速し、正面に大きなターミナルが見え、Duesseldorf Hbfに到着する。

ice124_24.jpg

Duesseldorfでは降車が多いが、やはり乗車も少なくなく、ルール地方からオランダ方面への輸送需要も高いことを実感する。Duesseldorf Hbfを発車すると、まもなくDuesseldorf Flughafen空港駅を通過し、滑走路の横をかすめる。車窓からは住宅が途切れることはなく、ヨーロッパの人口密集地であるルール地方らしい風景である。

ice124_25.jpg

Duesseldorfから次のDuisburg Hbfは近いが、200km/hが出ている。S-Bahnと並行しながら、2、3分ほどの遅れでDuisburg Hbfに到着する。

ice124_26.jpg

Duisburgを発車するとEssen方面と別れ、オランダ国境へと向かう。次のOberhausen Hbfまで5分で着く。

ice124_27.jpg

日がかなり傾き、外は暗くなってきた。Oberhausen Hbfの構内もDuisburg Hbfに近い規模があり、S-Bahnや643形が停車している。Oberhausenはこの列車の停車駅の中では、オランダとの国境に最も近い駅であるが、運転手は特に交代せず、このままAmsterdamまで担当する。
Oberhausenを発車すると、外は雪が降ってきた。正面から見ると、まるで吹雪のようである。周囲が暗くなってきたこともあり、前方の景色を見るのも難しくなってきた。

ice124_28.jpg

ice124_29.jpg

オランダ国境に近く、かつてはTEE “Rheingold”も機関車の付け替えを行っていたEmmerichを通過すると、電源方式がドイツのAC 25kV 50HzからオランダのDC 1500Vへ変わる。しかし、ここで列車は急に減速し、とうとう停車してしまった。運転手はしきりにタッチパネルを操作し、さらにどこかに連絡している。ICE 3Mは国境での電源切り替えがうまくいかないトラブルが頻発しており、遅れの原因になっていると聞いていたが、どうやらこの列車も同様のトラブルに見舞われたようだ。車内放送でも、そのように案内している。結局コンピューターを再起動したようで、空調や照明が一旦落とされた。ようやく列車が動き出しても、しばらく徐行が続く。ようやくスピードに乗ってきた頃には、外は既に暗くなり、雪はますます強く降っていた。通過する駅の駅名票はNS仕様に変わり、すれ違う列車も黄色のNSの電車に変わって、オランダに足を踏み入れたことを実感する。オランダに入って最初の停車駅Arnhemに到着したのは18時を優に過ぎており、もともとの5分程度の遅れは30分以上に拡大していた。
車掌のアナウンスに、多くの人が賑やかに話す声が混じる。車掌はBordBistroの一角から放送しているはずなので、Bistroがアルコールを楽しんでいる人々がいるのであろう。外が暗くなったので、前面からの展望も殆ど望めなくなったことだし、私も車内をまわりながら、BordBistroへ行くことにした。Bistroは想像通り、かなりの人がビールを片手に盛り上がっていたが、この車両の2等席部分に空席があったので、ここに座ってビールを注文した。グラス入りの生ビールは真に美味しく、旅気分も盛り上がるというもの。缶ビールではこうはいかない。
車内を観察しながら、自席に戻る。それにしても、インテリアの素晴らしさには感心する。1等車・2等車とも床は絨毯敷きで高級感を感じさせ、デッキ部分は木目調の壁材が使われ、トイレやゴミ箱も広告も、すべて一体感のある、温もりの感じさせるデザインである。

ice124_30.jpg

ice124_31.jpg

遅れが遅れを呼ぶということか、徐行を繰り返しているうちに、遅れが拡大していく。Utrecht Centraal、Duivendrechtと停車すると、もうAmstedam近郊である。ゆっくりと減速し、Amsterdam Cenraalに到着、時刻は20時、定刻の18時55分から1時間以上の遅れに拡大していた。
初めてのICE 3乗車はトラブルで1時間以上の遅れという事態に見舞われたが、迫力ある前面展望、そして快適で充実した車内設備は強い印象を残した。そして、Amsterdam駅に降り立った時、ICE 3は私にとっての最高の鉄道車両となったのである。

ice124_32.jpg

ホームでもう一度先頭部を眺めた後、友人達とホテルに向かった。治安が悪いと言われる駅構内を足早に歩き、雪の積もった駅前へ出ると、A-Train Hotelは目の前である。このホテルは経営者が鉄道ファンなのか、ホテル内も車内を模していたり、鉄道グッズが飾られていて楽しい。案内された部屋も広かった。
荷物を置いて、もう一度駅に戻り、夕食を摂ることにした。ファーストフードという気分にはなれず、構内のレストランに入った。ビールとサラダ、そしてステーキサンドイッチというものを注文した。その名の通り、ビーフステーキを挟んだサンドイッチだが、なかなか美味しい。食事を終え、ホテルに戻ると、今日一日疲れたのか、すぐに寝てしまった。
nice!(1)  コメント(5)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 5

abe

車内でのビールは格別ですね。缶ビールでも全然OK、ましてや生ビールなんか飲んだ日にゃ(以下自粛)
日本で生ビールが頂けるのは小田急VSEくらいでしょうか。
by abe (2009-12-13 21:56) 

HUH

そんなことはありません。東武スペーシアでも生ビールは飲めます。一時東海道新幹線や常磐線特急でも生ビールを出していました。でも、生ビールといっても、プラスチックか紙のカップですが。

車内でのビールは格別というのは賛成ですが、ドイツの車内のビールは比較にならないくらい素晴らしいです。グラスでの提供、そしてビール自体が麦の香りを存分に楽しめて美味しいのですから、最高です。ICEに乗ったら、とりあえずビール!
by HUH (2009-12-13 23:03) 

abe

それは失礼しました。(東武ファンの方すみません)

私もドイツではICやICEに乗る都度、食堂車でビールだけ頼んでいました。
また呑むの?と嫁さんは呆れていました。
ドイツのビールは美味しいんですよね。最近出たサッポロ復刻版の缶ビールが我が家ではブームです。
by abe (2009-12-13 23:40) 

まほろ

HUHさん、ご無沙汰しております。

>ICE 3Mは国境での電源切り替えがうまくいかないトラブル

これは、日本ではあり得ない事ですね。
(一部AC、DC切り替えはあるのでしょうか)
貴重な体験ですかね(?)。

上記のトラブルは、もう解消されているのでしょうか?
by まほろ (2009-12-14 17:17) 

HUH

まほろさん、返信が遅くなり申し訳ありません。

日本でも電源の切り替えはありますが(関東なら常磐線の取手~藤代など)、こういうトラブルは記憶にないですね。
この種のトラブルは最近は聞きません。それなりに順調に運行されているのではないでしょうか・・・・・と期待したいです。

ちなみに、私の持っているDVDで、ICE 3MFがドイツ→フランスで電源が切り替わるシーンがありますが、トラブルなく自動で切り替わっていました・・・・まあ、トラブルが起きたら撮り直すでしょうけど。
by HUH (2009-12-19 09:23) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

InterCityExpress - D..DB Baureihe 420 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。