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8月21日 松阪→熊野市 [紀伊半島 鉄道旅行 2008]

松阪駅は津駅などと同様に近鉄とJRの共同使用駅であり、南口をJR、北口を近鉄が管理する。繁華街は南口に近く、JR側の方が駅舎は大きく、人通りも多い。ホームも近鉄が2面3線、JRが3面4線とJRの方が大きい。しかし、特急、急行、普通がひっきりなしに発車する近鉄に比べ、JRはかなあ¥り本数が少なく、利用客も近鉄の方が圧倒的に多い。
一旦、松阪駅の改札口を出て、熊野市までの切符を購入する。ここで一つミスをした。自動券売機で何気なく「熊野市」と書かれたボタンを押して切符を購入したら、自由席特急券まで付いてきたのだ。特急券は確保済みである、みどりの窓口で申告したら、特急券だけすぐに払い戻してくれた。今日は朝から何も食べていない、それというのも松阪で駅弁を買うつもりだったのである。キオスクでは本来は予約が必要なはずの牛肉弁当御膳も一つだけ売られていて買いたくなったが、3150円はやはり高いため、最も一般的な元祖特撰牛肉弁当1260円を購入する。これで準備万端、JRの4番線ホームに向かう。お隣の5番線には名松線伊勢奥津行のキハ11が発車を待っている。名松線は2時間に一本しか列車が走らないJR東海きってのローカル線、沿線の道路事情が悪くバスの乗り入れが難しいのと、JR東海が新幹線で潤っているために廃止になっていない、などと言われるような路線である。実際、発車時間まで15分ほどあるとはいえ、乗客は誰もいなかった。しかし私は雲出川の渓流に沿って、美しい車窓風景が展開する名松線が好きで、学生時代に3回ほど乗りにきたし、その時の写真をホームページに残してある、
http://www.asahi-net.or.jp/~ny8h-ky/meisho/

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9時15分にこれから乗車するワイドビュー南紀1号が入線してきた。ワイドビュー南紀1号は8時11分に名古屋を出発し関西本線を通って桑名、四日市と停車した後、第3セクター伊勢鉄道に乗り入れ、鈴鹿に停車する。その次の津に停車してからはJR紀勢本線に入り、松阪に来る。ここまでは近鉄特急と所要時間はほぼ互角である。ワイドビュー南紀に使われるのはキハ85気動車、車体はステンレス製で、1989年にまず高山本線のワイドビューひだ用に登場、続いて1992年にワイドビュー南紀にも投入された。カミンズ社製の強力なエンジンを搭載して電車並みの性能を有し、それまでのディーゼル気動車のイメージを一変させた画期的な車両であり、登場後15年以上経過しているが、古さは全く感じさせない。ワイドビュー南紀は通常は普通車のみの3両編成あるが、本日は多客期で5両に増結され、グリーン車も連結されている。松阪は各乗車口から4、5人乗車する。
私は1号車に乗車する。1号車は普通車指定席の喫煙車である。夏休み期間とはいえ平日である、1号車は10人強しか乗っていない。私は喫煙の習慣はない。それなのにこの車両の指定席を取った理由は簡単だ、1号車1番B席、すなわち運転室直後の席を予約したのである。ドイツ鉄道に喫煙者が残っていたころ、喫煙スペースのICE 3の1等車ラウンジを予約したのと同じことだ。今となってはバリアフリーに逆行するが、キハ85の座席部分はハイデッキ構造で、天地方向に大きい側窓とあわせ、車窓風景を楽しむには素晴らしい車両だ。
席に座る間もなく、ワイドビュー南紀は松阪を発車する。電車となんら遜色のない軽やかな加速でスピードに乗る。発車してしばらくは近鉄に並行するが、近鉄の松ヶ崎駅付近で右に分かれる。車窓風景も住宅や商業施設が減り、緑が増える。80km/hほどで走り、まもなく減速、松阪から6分で多気に着く。

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多気は伊勢市・鳥羽へ向かう参宮線の分岐駅、本線はこちらであるが、日中は1時間に1本の快速みえに加え普通列車も走る参宮線に比べ、こちらの列車本数は圧倒的に少ない。駅の先では、新宮行となる気動車が発車を待っていた。
乗降客は殆どなく、列車は直ぐに発車する。利用実態を反映するかのように、多気の先で参宮線は真っ直ぐ走っていくのに対し、こちら紀勢本線は右にカーブし、山の中へと分け入っていく。単線非電化とはいえ、軌道はしっかりしており、乗り心地は悪くない。しかし、細かいカーブが多く、列車は加減速を繰り返しながら70~90km/h程度で走る。
早速、牛肉弁当を開封する。シンプルな緑色の箱を開けると、中身も同様にシンプルだ。ご飯と牛肉に、おかずがごく少し。しかし、この牛肉は柔らかく、冷めてもそれはそれで味わい深く美味しい。牛肉弁当と名のつく弁当は数多いが、やはり、この弁当は格別だ。箱の記載を見ると、松阪牛の規定が厳格になり、この弁当の牛肉はその規定からは外れてしまうらしいが、それでも十分に美味しい。ご飯に比べれば、牛肉の量は少ない気もするが、それでも十分に満足できる。価格も適当であろう。

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佐奈の先で伊勢自動車道をアンダークロスする。ちょうど勢和多気インター付近で、ここから紀勢本線の強力なライバルとなる紀勢自動車道が伸びている。列車は山を分け入るように走る。車窓には田畑が続くが、住宅が増え、スーパーやJAなどが現れ、まもなく減速、三瀬谷に到着する。

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三瀬谷は大台町の中心駅であるが、乗車はなく、わずかに降車があったのみであった。列車は直ぐの発車、左に大きくカーブし宮川を渡ると右に三瀬谷ダムが見える。続いて紀勢自動車道をアンダークロスする。ここに大宮大台インターチェンジがある。紀勢自動車道は現在はここまでであるが、さらに南へと建設が進んでいる。現在でも松阪から三重交通の南紀特急バスが運行されているが、高速が開通したら、さらに大きな脅威となるであろう。列車は左手を流れる大内山川に沿って、80km/h程度で進む。

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大内山駅付近は大内山牛乳の看板が目立つ。大内山牛乳は三重県を代表する牛乳のブランド、津でもコンビニエンスストアに大抵置いてあった。私は牛乳はあまり好きな方ではなかったが、この大内山牛乳は美味しいと思う、よく飲んだものだ。
列車は相変わらず山に囲まれた渓谷沿いに進む。大内山川を渡り、梅ケ谷を通過すると荷坂トンネルに入ると、いよいよ荷坂峠超えにかかる。荷坂トンネルを抜けるとサミットを超え勾配を下っていく、短いトンネルが連続する。その合間に、連なる山々と長島の町、そしてその先の熊野灘が姿を見せる。この景色が特別に美しい。

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気がつくと列車はかなり高度を下げ、海面がすっかり近づいてきた。養殖場を眺め、漁村を眺めていると市街地が近づいてくる。

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10時10分紀伊長島に到着する。構内には上りワイドビュー南紀4号名古屋行と普通・多気行が停車している。

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紀伊長島を発車すると、列車はしばらく熊野灘に沿って走る。漁村と青々と光る太平洋の美しさ、車窓に目を奪われるが、カーブが続き、列車のスピードが上がらない。

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三野瀬を過ぎ、ようやく路線は直線的になったが、それでも最高85km/h程度で、キハ85はそのパワーを持て余しているようだ。船津を過ぎ、しばらくして左に船津川が並行する。その船津川の河口に近い相賀を通過する。ここは紀北町の中心に近い。海を再び眺めながら列車は走る。しばらく銚子川に沿って走り、尾鷲トンネルに入る。トンネルを抜けると、そこは市街地、住宅や商業施設が目立つ。まもなく尾鷲に到着する。

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尾鷲でも降車があり、列車はさらに空いた。尾鷲を出発すると、市役所などがある市の中心部の脇を通る。中川を渡り左にカーブすると、正面に中部電力の尾鷲三田火力発電所がそびえ立つ。矢ノ川を河口付近で渡り、尾鷲湾の海岸線に沿って走る。大曽根浦の先はトンネルが連続する区間である。トンネルとトンネルの 間に入江に沿って集落と漁港があり、それぞれに九鬼、三木里、賀田、二木島、新鹿、波田須と駅がある。昔は海上交通でしか往来できなかった集落もあるそうだ。

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新鹿は綺麗な海水浴場が広がっており、海水浴客が散見された。徐福伝説の残る大泊を通過し、木本トンネルを過ぎると市街地が広がる。大規模な商業施設が見えてく る頃、列車は減速し、熊野市に到着する。11時2分定刻である。

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私もここで下車、ワイドビュー南紀の発車を見送り、改札口を出る。

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コメント 6

HUH

少し手直ししました。文章に手を入れ、写真を追加してあります。
by HUH (2008-09-03 02:09) 

kumaことDaisaku

おお、牛肉弁当!なにやらキュビズムな牛さんの顔のパッケージが懐かしい…。それに名松線といえば、シーナリィガイドを思い出します(古いなあ)。

キハ85の前面展望は楽しいですね。いよいよ南紀、続きを楽しみにしています。
by kumaことDaisaku (2008-09-04 01:35) 

abe

かぶりつき×2でとっても羨ましいです。
本当に好きですね~ビールは無かったのでしょうか(w
by abe (2008-09-04 23:19) 

HUH

kumaことDaisakuさん>
シーナリーガイドは知りませんが、名松線はレイアウト向きかもしれませんね。旅行記は元気があれば後で更新するつもりですが、一時的に鉄道色が薄れます。少し真っ当になるということ??

abeさん>
近鉄5200系のかぶりつきは、席がなかったから仕方がなく、という面もあります。でも貫通扉の窓が大きいので、気持ち良かったです。
ビールは・・・・車販で買いたくなったことは否定しませんが、まだ朝ですので、さすがに止めました。これがドイツなら、確実に飲んでいたでしょうけぢ。
この日は実は、かぶりつきx3でした。おそらく、今後3回目の更新の際に掲載することになるでしょう。
by HUH (2008-09-04 23:48) 

kumaことDaisaku

機芸出版社の「シーナリィガイド」には鉄道模型趣味(TMS)誌に掲載された実物の記事をまとめられています。初版が1974年ですから取材はさらに古く、名松線の記事ではC11がダブルルーフの客車と貨車のミキストなど牽いて走る写真があります。隔世の感があります。

3つ目のかぶりつきは…もしかしてオーシャンアロー?
by kumaことDaisaku (2008-09-05 02:35) 

HUH

名松線を走るC11とは、見てみたいです。今はキハ11、というわけで「11」つながりですね。キハ11は小柄でシンプルなデザインと案外快適な車内設備で、名松線にはよく似合います。

3つ目のかぶりつきはお楽しみということにしておきますが、選択肢は二つくらいしかない(笑)
オーシャンアローには公開している通り、新宮→紀伊勝浦で乗車しましたが、正直あまり良い印象はなかったです。
by HUH (2008-09-06 15:04) 

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