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ICE 4 - Der neue ICE-Zug [ドイツ鉄道 電車]

 2011年、DBはIC/ECの客車列車・ICE 1・ICE 2を置き換えるため、新型高速列車ICxをSiemensに発注した。ICxは今後の長距離輸送の標準車両として位置づけられ、現在までに130編成が発注されて、最終的には300編成を導入することも計画されている。ICxは2015年以降ICE 4と呼称されるようになり、形式は412形 (付随車は812形)とされ、7両編成と12両編成の2種が製作する予定である。

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 ICE 4ではICE 3と同様の動力分散式が採用されているが、動力車1両に変圧器・変換器・コンバーター・主電動機を集中して配置するPowercar conceptが採用され、路線事情に合わせたフレシキブルな編成を組むことを可能とした。車体は先頭車28.6m、中間車27.9mと従来の25mに比べ延長され、出入り口や機器を減らすことで車内空間を拡大させることで定員を増加させた。なお、ICE 4の7両編成の全長は、ICE 3の8両編成に相当する200m、12両編成は345.7mである。動力台車はICE 3で採用されたSF 500の改良型であるが、付随台車はインサイドフレームとなり大幅な軽量化に成功している。インテリアもICE 3以来のコンセプトをベースにしながらも、様々な新しい試みがなされている。最高速度は12両バージョンで250km/h、7両バージョンで230km/hに抑えられているが、加速性能に優れているため、最高250km/hでも最高280km/hのICE 1やICE 2と同様のダイヤでの運転が可能である。中規模の都市が林立し、停車駅の多いドイツの事情に合わせ、経済性を重視して製作された高速列車と言えよう。
 ICE 4は主にSiemensのErlangenおよびKrefeld-Uerdingen工場で2014年より製造が進められており、2015年9月から試運転が開始され、12月4日にはじめて報道公開された。その後も試運転が進められ、2016年9月16日にEBAから旅客営業が認可された。その2日前の9月14日にはBrerlin Hbfの地下ホーム2番線で華々しく公開されている。ICE 4の正式デビューは2017年12月に予定されているが、その前に試験的に営業運転にも投入されることとなった。
 ICE 4の試験的な営業運転の詳細について、DBからの公式なアナウンスはないが、インターネット上での情報では10月24日よりHamburg-Altona - München Hbfを結ぶICE 581 (木曜を除く毎日)、ICE 582 (毎日)、ICE 786 (水曜を除く毎日)、ICE 787 (毎日)に投入されるとのことであった。10月24日以降もICE 4が営業運転に就いたとの情報はなかったが、10月31日に上記の列車で営業運転が開始された。(ただし、今後もICE 1に変更される可能性はある。)
 ICE 4が営業運転を開始したとのことで、11月1日の祝日を利用して早速乗車することとした。祝日といってもドイツは週によって祝日が分けられることがあり、当日も一部の州のみが祝日とされていたため、DBは平日ダイヤであった。早朝5時半に起きて、まずはHamburgへの速達列車である6時39分発IC 1098に乗車するべく、Düsseldorf Hbfに向かう。しかし、DBのホームページを確認すると、車両故障によりIC 2902に列車が変更されていた。ただし、同じダイヤで走るとのことで一安心である。定刻に入線してきたのは何とICE-Tの7両編成。寄せ集めのボロ客車編成が来ることを想像していたが、逆にアップグレードされた形となった。
 列車はDuisburg Hbf・Essen Hbfと停車した後、2時間40分以上をノンストップで走り、Hamburg Hbfへ向かう。発車した頃は、外は真っ暗であったが、Essenが近づくころにはかなり明るくなる。直前の6時33分にDüsseldorf Hbfを発車したHamburg経由Kiel行のIC 2224がDortmund・Műnster・Osnabűck・Bremenなどの主要都市を丁寧に停車していくのに対し、こちらはGelsenkirchen・Osnabrückと直線的なルートを取って先行し、定刻よりわずかに遅れた9時50分にHamburg Hbfに到着した。

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 ホームからコンコースに上がり、14番線に入線してくるICE 787を待つ。私以外にも一人、鉄道ファンが入線を待ち構えている。程なくして現れた列車は期待通りのICE 4、12両編成のTz 9006編成である。すぐに階段を下り、私も乗車する。今回は1等のチケットを買ってあったが、まずは2等車から車内の様子を見て回ることにする。

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 12両バージョンのICE 4の編成は先頭から以下の通りで、定員は830名 (1等205名、食堂車23名)である。
0812.0形 (制御車・1等・14号車)
1812.0形 (付随車・1等・12号車)
1412.0形 (動力車・1等・11号車)
8812.0形 (付随車・食堂車 Bordrestaurant・10号車)
6412.0形 (動力車・2等/サービス車・9号車)
9812.0形 (付随車・2等・7号車)
2412.0形 (動力車・2等・6号車)
2412.3形 (動力車・2等・5号車)
4812.0形 (付随車・2等・4号車)
2412.5形 (動力車・2等・3号車)
2412.8形 (動力車・2等・2号車)
5812.0形 (制御車・2等・1号車)

 ICE 4は車体長が延長されたため、各車両端部は絞られており、結果的に出入り口とプラットホームとの間隔が広がっているが、ステップがその分自動的に展開されるため、特に乗車しにくいというわけではない。行先表示はVelaro Dと同様、乗降扉に設けられている。これは乗客には見やすいであろう。デッキ部分もVelaro Dに近い印象で、木目調であるが、曲線が多用されたICE 3 / ICE-Tに比べ直線的なデザインで、高級感には乏しい。

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 客室に入って、まず気が付くのは、車体が長いため客室が広く感じられることである。車内レイアウトは基本的にはオープン客室のみであるが、テーブル付の座席も少なくない。またDBがPRしている通り、各所に荷物棚が設置されている。座席で目立つのは、席番と予約表示が窓上や網棚のではなく、座席に設けられた点である。従来の表示に慣れている客が多いのか、座席表示が目に入らず戸惑う乗客の姿もあったが、視認性という点では座席に付いている方が優れている可能性もあり、優劣はつけ難い。

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 7号車はサービスカーで、2等席の他、車椅子対応席や身障者対応トイレ、さらに子供連れ用個室やインフォメーションなどが設けられている。これらの設備は従来に比べ広々としており、好感が持てるところである。その隣の9号車はBordRestaurantであるが、売店部分は混雑しており、レストランも満席の盛況で、後で改めて見ることにする。

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 11・12・14号車の3両が1等車である。1等車も2等車と同様にコンパートメントはないが、テーブル席や荷物棚は幾つか設けられている。席番と予約表示が座席に設置されているのも共通している。12号車のテーブル付の席に腰を下ろす。座り心地はこれまでと同様で、上々と言えよう。1等席には新たに読書用が設けられているのも便利である。もちろん、各席にはコンセントも用意されている。

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 やや遅れてHamburg Hbfを発車したICE 787はHamburg-Harburgに停車した後、在来線を最高200km/hでHannoverへ向かう。走行音は明らかに静かになっており、揺れも少ない。客室内は壁の白味が強くなり、照明とあいまって、ICE 3やICE-Tに比べると高級感に乏しい印象も受けるが、十分に落ち着く快適な環境ではある。
 車掌が検札を終えた後、飲み物の注文の配達に忙しく動き回っている。DBの職員も何人か乗り合わせているのは、如何にも試験的な営業運転らしい点である。車内を見て回っている鉄道ファンの姿も見かけるが、新しい車両の旅を楽しんでいるという風情で、落ち着いた雰囲気である。
 ここでBordRestaurantに向かう。ビストロ部分は朝からビールを楽しむ客があふれている。カウンターは曲線的なデザインになりショーケースも設けられ、開放的で好感が持てるが、この日は紙でショーケース内は隠されていた。次々と乗客が現れては、飲み物や軽食を買っており、係員が対応に追われていた。定員23名のレストランも満席で、やはり朝からビールを飲む乗客の姿が目立つ。座席の色調などが変わり、以前より軽快な雰囲気である。本当は何か飲みたかったのだが、この混雑で諦め、自席に戻る。

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 トイレにも触れておこう。ICE 3ではトイレは通路の片側に設けられていたが、ICE 4では通路を挟んで両側に設けられた。その分、トイレはかなり狭くなっているが、通常通り使用する分には充分であった。鏡に花のシールが貼ってあるのはご愛敬。

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 列車は順調に走り、定刻の11時21分にHannover Hbfに到着する。5分ほどの停車時間を利用して、車外へ出る。決して評判が良いとは言えない前頭部の直線的なデザインだが、正面に近い角度から見ると、それほど悪くないような気もする。個人的にはVelaro Dよりは好感が持てるが、この辺りは好みもあろう。ただ、万人から好かれそうなデザインとは言えないのは残念なところである。

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 側面に回って、一見して気がつくのは各種サイン類が目立つ点である。黄色で強調された1等表示・席番・サイレント車の表示と賑やかで、視認性も向上している。近鉄特急でも同様の変化がみられたのを記憶しており、親切だと思う。ただし、これ以上サイン類が増えると外観デザインを損い、安っぽい印象を与えかねないのではないか。

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 列車はHannover Hbfを11時26分定刻に発車する。今度は先頭の14号車のテーブルなしの席に座る。こちらも前の座席に設けられたテーブルを使用できる。がたつきもないが、いろいろと作業するには小さ過ぎるかもしれない。

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 しばらく走ったところで、列車は急に減速し、ついに停止してしまった。10分程で再び動き出し、車掌から12分遅延しており、列車の接続については停車駅が近づいたら案内するとの放送が入ったが、原因は分からず仕舞であった。他の列車を待ったのか、あるいは技術的なトラブルでもあったのであろうか。
 幸いにも列車は高速新線を250km/h近い速度で順調に走る。インサイドフレーム台車を履く付随車も乗り心地は安定感があり良好である。結局、遅延を7分まで縮め、Göttingenには12時07分に到着した。

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 Göttingenを出発すると、鋭い加速でスピードに乗り、再び250km/hで高速新線を快調に走る。トンネルをいくつか潜るか耳ツンもない。ところどころで並行する在来線に貨物列車が行きかっているのが見える。減速すると、まもなくKassel-Wilhelmshöheに7分遅れの12時28分に到着する。私はここで下車する。

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 ICE 4の全体的な印象としては、ICE 3やICE-Tでみられたような品質感は感じられない点は残念であったが、静かで揺れも少なく、車内設備の随所に配慮がみられて快適であり、印象は上々であった。いわば普段着のような、日常使う列車としては、好感の持てる車両であった。

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 駅では2、3人の鉄道ファンが写真を撮っていた。新しい車両が走り始めたら、日本なら多くのファンが駆けつけそうだが、ここではそのような喧騒はなく、ICE 4の発車をゆっくり眺めることが出来た。



 撮影中の鉄道ファンに機関車の接近を教えてもらいながら待つことしばし、ICE 75は10分遅れで到着した。

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 この列車はICE 1で運転されている。本来はChur行であるが、本日はBasel SB止まりとなると案内されている。本当は食堂車で昼食を摂るつもりで2等席を摂っていたが、残念ながら満席。2等席も混んでいる様子であったが、幸いにもビストロ部で空席が出て、座ることが出来た。ビールと共に、Linsen-Orangen-Suppeというオレンジ味の効いたスープとフォカッチャで簡単な昼食とする。ICEの車内で飲むビールはいつも格別である。

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 ICE 75はFrankfurt (M) Hbfまでノンストップである。順調に走行し、Fuldaから在来線へ入って南西へと駆けるが、結局10分遅れのままである。実はFrankfurt (M) Hbfでは10分乗り換えなのだが、間に合わなければ次の列車に乗るだけのこと、焦っても仕方がない。とはいえ、Haunauを通過したところで最前部に移動しておく。乗り換えられるなら、それに越したことはない。結局Frankfurt (M) Hbfには10分遅れのまま、14時10分に着く。
 乗車予定のICE 720は幸いにも他のICEの接続待ちで数分遅れて発車したため、無事に乗車することができた。客室内に一歩足を踏み入れて、やはり車内の雰囲気、特に品疾患においてはICE 3の方が上であることを改めて感じる。
 予約してあった先頭ラウンジ席に座る。Frankfurt Flughafen Fernbahnhofを過ぎると、最高300m/hの高速新線に入る。美しい紅葉の中を駆け抜ける前面展望は格別である。ICE 720はICE Sprinterと呼ばれる速達列車、高速新線を降りてKöln Messe/Deutzのみ停車し、Düsseldorf Hbfには定刻の15時36分に到着した。

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masato-marklin

ICE3の方が音が良いですね・・食堂車はやはりICE1です。
by masato-marklin (2016-11-02 09:44) 

HUH

今のインバータ車はそもそも静かになりましたし、音の個性もなくなってきましたね。一般的は歓迎すべきことでしょうが、私もICE 3の方が好きです。
食堂車の雰囲気は仰る通りICE 1が一番です。楽しめるのは今のうちですが、デュッセルドルフには残念ながらあまり来ないので、なかなか乗れません。
by HUH (2016-11-02 16:09) 

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