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S-Bahn Rhein-Ruhr S1系統で走る旧型車両 [ドイツ鉄道 列車]

 S-Bahn Rhein-Ruhrは11路線、全長676kmに及ぶネットワークを誇り、ドイツの人口密集地帯であるノルトライン=ヴェストファーレン州の都市交通の一翼を担っている。この地域でS-Bahnの運転が開始されたのは1967年のことである。当初は141形牽引のn-Wagenによる客車列車が用いられたが、1972年以降は420形に置き換えられた。しかし、駅間距離が長いルール地方では420形の車内設備は不評で、1978年以降S-Bahn用に開発されたx-Wagenによる客車列車に置き換えられた。牽引は当時の新鋭機111形が用いられたが、後に143形に置き換えられた。
 現在、S-Bahn Rhein-Ruhrの主力車両は422形である。422形はBombardier・Alstomにより423形をベースに開発された連接式の4両編成の電車で、最高140km/hの性能を有する。2008年から2010年末にかけて84編成が製作された。422形の導入に伴い、従来のx-Wagenによる客車列車は置き換えられ、わずかに残ったx-Wagenは波動輸送などに細々と使われるのみとなった。

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現在の主力422形

 この422形に2016年末に問題が生じた。2016年9月16日にEssen付近で架線が422形の屋上機器に接触し、火災が発生した。さらに11月18日にも小規模ながら火災が発生した。いずれも負傷者などはなかったが、422形のトンネル区間での運行認可を取り消され、422形は2017年1月より屋上電気配線に対する対策工事が開始された。この措置に伴う影響を受けたのがS1系統とS4系統である。
 S1系統はSolingen – Düsseldorf - Düsseldorf Flughafen – Duisburg – Essen – Bochum – Dortmundを結ぶ主要路線で、平日日中20分間隔、土休日30分間隔で運転されている。このうち、Dortmund市内には地下トンネルを走行する区間があり、422形での運行が出来なくなった。そこで、2016年11月23日よりS1は運転系統がSolingen – BochumとBochum – Dortmndに分割され、後者にはx-Wagenによる客車列車が投入されたのである。牽引には143形とともに111形も投入され、111形にとっては20年ぶりのS-Bahn Rhein-Ruhrへの復帰となった。一方、S4系統はUnna - Dortmund-Süd - Dortmund-Dorstfeld – Dortmund-Somborn -Dortmund-Lütgendortmundのうち、トンネル区間であるDortmund-Somborn -Dortmund-Lütgendortmundはバス代行となった。

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x-Wagen

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111形牽引のx-Wagen編成

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x-Wagen車内

 当初の暫定ダイヤはBochum Hbfホームの容量の問題もあり、Solingen発の列車が到着する直前にDortmund行の列車が発車してしまい、逆方向も同様で、接続が全く考慮されていなかったが、Dortmund発着列車はBochum Hbfを経由してEssen Hbfの2駅手前、Essen-Steele Ostまで延長された。
 Dortmund – Essen-Steele Ost間の列車にはx-Wagenによる客車列車に加え、420形も用いられるようになった。420形は2004年以降、Stuttgartで活躍していた比較的新しい車両がルール地方に再配置され、ラッシュ時に運転されるS68系統に使用されている他、時には422形の改良工事に伴う車両不足を補うため、S1にも投入されることもあった。主力車両である422形に加え、x-Wagenや420形も活躍するBochumはさながらS-Bahn Rhein-Ruhrの動態保存の展示場の趣きであった。

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420形

 8月18日夕方、Bochum Hbfに足を向けると、143形牽引のx-Wagenが姿を現した。X-WagenはEssenで過ごした幼い頃に乗った懐かしい車両である。車内は極めてシンプルだが、100km/h以上のスピードでも乗り心地は良好である。機関車に引っ張られる感覚が何とも心地よく、Dortmundまでの20分あまりの旅を楽しんだ。この日は他に420形も2編成が運用に入っていた。

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x-Wagen

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143形

 しかし、422形の改良工事が進み、8月21日からS4系統が、さらに8月28日からはS1系統が通常運行に戻ることが発表された。420形もx-Wagenもすぐに引退するわけではなく、S68系統に加え、波動輸送用に残るようであるが、一世代前のS-Bahn車両が活躍する機会が減少するのは、やや寂しくも思う。
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Wuppertal ohne Bahn - 列車が来なくなったWuppertal [ドイツ鉄道事情]

 Düsseldorfの東26kmに位置するWuppertalはその名の通りWupper川の谷に沿って広がる人口35万人の都市である。Wuppertal HbfはKӧln – Berlinを結ぶICE-Linie 10を始め、多くのICEやICが停車する。地域輸送も充実しており、以下の路線が乗り入れている。

- RE 4 “Wupper-Express”
 Aachen – Düsseldorf – Wuppertal – Hagen – Dortmund

- RE 7 “Rhein-Münsterland-Express”
 Krefeld – Neuss – Kӧln – Solingen – Wuppertal – Hagen – Münster (Westf) – Rheine

- RE 13 “Maas-Wupper-Express”
 Venlo – Düsseldorf – Wuppertal – Hagen – Hamm (Westf)

- RB 48 „Rhein-Wupper-Bahn“
 Bonn-Mehlem – Bonn Hbf – Cologne – Solingen – Wuppertal – Oberbarmen

- S 7
 Solingen – Remscheid – Wuppertal

- S 8
 Hagen – Wuppertal – Düsseldorf – Neuss – Mönchengladbach

- S 9
 Haltern am See – Essen – Velbert-Langenberg – Wuppertal

 このような交通の要衝であるWuppertalで信号システムの変更に伴い、信号やケーブル類の交換など大規模な工事が行われることになった。そのため、7月16日から8月31日までの1か月半に渡ってWuppertal周辺で列車の運行が全面的に取り止められることとなった。具体的には西側はDüsseldorf-Gerresheim、南側はSolingen Hbf、東側はWuppertal-Oberbarmenn、北側はVelbert-Langenbergを境とし、その内側では列車の運行がなくなり、バスによる代行運転が行われているのである。

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(ドイツ鉄道サイトより)

 ドイツでは工事によるダイヤ変更や運休はそれほど珍しくないが、これほどの規模で長期にわたっての工事運休は珍しい。8月6日Wuppertalまでバス代行の様子を見に行った。Düsseldorf Hbfでは駅の真横のトラム・バス乗り場から代行バスが発着している。駅構内にはいくつもの案内表示が設けられている他、簡単な案内所も設けられ、アルバイトと思われる係員が立っている。構内アナウンスでも頻繁にバス代行となっていることを伝えている。

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 バスはRE・RBとS-Bahnそれぞれに設定されており、中距離・近距離双方の利用者に対応しているが、まずはS-Bahnのバス代行の様子を見ることにして、Düsseldorf Hbf 14時30分発のS8系統に乗る。本来ならWuppertal経由でHagen Hbまで走るS8系統だが、本日は2駅先、わずか5分のDüsseldorf-Gerresheim止まりである。

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 駅から案内表示に従って駅前に出ていると、すでに代行バスが発車を待っていた。S8の代行バスはS-Bahnに合わせ、平日は20分間隔、休日は30分間隔で運転されている。乗客が次々と乗り込み、大半の座席が埋まったところで、発車。住宅地を抜けたバスは田園の中を東へと向かう。

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 S-Bahnでは各駅間は3分程度であるが、代行バスは住宅地を抜けると幹線道路に入り、街に入ると住宅地を通って駅前まで乗り入れるため、概ね10分程度かかる。線路を時に並行し、時にオーバークロスしながら進む。バスからは街の様子がよく見えて、鉄道とは違った面白さがあり、時には丘陵地に広がる田園や森の中を抜け、なかなか多彩な車窓風景である。Erkrath、Hochdal、Hochdal-Millrath、Gruitenと停車するごとに降りて行く乗客が多く、車内は大分空いてくる。

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 Wuppertal市内に入り、Düsseldorf-Gerresheimから40分あまりでWuppertal-Vohwinkelに着く。S-Bahnなら15分で着くのだから、3倍近い時間がかかったことになる。バスはさらに各S-Bahn停車駅に止まりながらWuppertal市内中心部を抜け、Wuppertal-Oberbarmenへ向かう。

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 Wuppertal-VohwinkelはS-BahnだけでなくREも停車する駅であるが、列車の発着がない駅舎内は売店も閉まって、ほとんど無人で静まりかえっていた。

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 S-Bahnの駅から5分程歩くとモノレールのVohwinkel駅に出る。世界最古のモノレールとして知られるWuppertalのSchwebebahnモノレールは平日4分間隔、土曜日6分間隔、日曜祝日は8分間隔で運行され、現在もWuppertalの市内交通を支えている。現在は新型車両の導入も進められている。

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 日曜日とはいえ、モノレールは旺盛な需要があるようで、停車する度に乗客が増えていく。Wupper川の上を走りながら市の中心部へと向かう。独特の乗り心地を楽しむうちに車内は混雑し、立客も出る混雑となった。Wuppertal Hbfには17分で到着する。

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 モノレールの駅は鉄道駅の北側にあり、両駅の間では大規模な再開発工事が進められている。今年中には完成しショッピングモールなどが完成するはずだが、現場を見る限り本当に完成するのか、疑いたくなる状況である。もっともドイツでは、工事の遅れは日常茶飯事のようであるが。
 バスターミナルはモノレール駅のさらに北西側の市街地に仮設されており、市内や周辺都市へ向かうバスが次々に発着している。ここからバスに乗り、妻の希望のカフェで一休憩し、再びHbfへ戻る。駅舎は以前から閉鎖されており、ホームの隅にプレハブでDBの窓口ReiseZentrumが設けられているが、日曜のこの時間は閉まっている。列車の発着がない駅構内は静まり返っており、信号機も全て消えて、少々不気味な雰囲気である。

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 案内に従ってWuppertal Hbfの代行バス発着所まで歩くが、これが案外遠く、線路に沿って西へ5分以上歩いた坂の上、市ホールの近くにあった。鉄道駅からは650m、モノレール駅やバスターミナルともかなり離れている。一時的とはいえ、かなり不便な状況であることは間違いない。
 ここからRE 4・13系統の代行バスに乗る。この代行バスは基本的に30分間隔で運転されており、Wuppertal Hbd発着の他、Wuppertalの東の拠点Wuppertal-Oberbarmen発着の系統も設けられている。都市間の輸送を目的にしているため、Düsseldorfまでをダイレクトに結ぶ。

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 到着したバスの最前部に座る。こちらも路線バスに使われる連接バスである。車内は座席が全て埋まり、立客も少し出た。バスが発車すると明るい女性の運転手が自己紹介し、Düsseldofまでの予定所要時間は45分程と伝えている。

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 モノレールに沿って市内を西へと走り、Wuppertal-Sonnborner Uferに停車する。ここからはノンストップでDüsseldof市内に向かう。運転手が再びアナウンス、「良いニュースと悪いニュースがあります。良いニュースはこの先Düsseldofまで渋滞がないことです。悪いニュースは立っている乗客がいる関係で、スピードが60km/hに制限されることです。」とのこと。ユーモアを感じさせるアナウンスの後、バスはアウトバーンへと入っていく。シートベルトもない路線バス用の車両が高速道路に入ることは日本では許されないかもしれないが、ドイツでは時々見かける光景である。アウトバーンは交通量が多いが、確かに渋滞はない。この辺りの区間は制限速度が120km/hと設定されているが、バスはきっちり60km/hで走る。20kmあまりをアウトバーンで走り、Düsseldof市内南部でアウトバーンを下りる。

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 Hbfまでは大した距離ではないが、信号で何度も止められるため、アウトバーンのようにはスムーズには走れない。終着が近づき、運転手が「スピードは制限されたけど、幸いにも時間通りにDüsseldof Hbfに着きます、いや、まだ3分余裕がありますね。」と最後までユーモアのあるアナウンス。その言葉通り、42分で到着した。本来のREであれば20分で着くので、倍以上の時間がかかったことになる。

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 その後、Wuppertalに住む人と話す機会があったが、やはりバスで毎日通うのは大変で、早く鉄道が戻って欲しいとのこと、バスの本数はある程度確保されているとはいえ、所要時間は2~3倍で、Wuppertalの発着場もお世辞にも便利とは言えず、その気持ちは理解できた。
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1日乗車券でドイツ周遊 (2) [ドイツ鉄道旅行 2017]

 2週間前、BahnCardのポイントで入手した1日乗車券を使って北ドイツを周遊したが、ICE-TDに乗るという目的を果たせなかったため、再び日帰りの旅に出ることにした。8月13日、早朝5時過ぎに家を出る。まだ暗い中、S-BahnでDüsseldorf Hbfへ。5時半前だがパン屋などは店を開けており、コーヒーと水を買っておく。17番線ホームに上がると、程なくしてKöln Hbf始発Westrland/Sylt行IC 2314が入線して来る。制御客車を先頭に、後ろから101 037が押している。

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 車内は空いており、予約しておいた4号車2等席に座る。定刻の5時33分に発車、Duisburg Hbf、Essen Hbf、Bochum Hbf、Dortmund Hbfと概ね20km毎に停車し、少しずつ乗客を増やしていく。この頃には外も明るくなった。Dortmundを発車、Lünenを過ぎるとMünsterの手前までしばらく単線区間を走る。1時間に1本はICが走る区間で単線は珍しい。Dortmund - Hamm - Münsterは複線で電化されているが、Münsterへ直行するこの路線の方が距離が短いため、ICは原則としてこのルートを走るのである。車内を歩いて最後尾へ、既に大半の席が埋まっている。Münster Hbfでの停車時間を利用して、機関車の写真を撮っておく。

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 車内に戻り、自席に戻る前にBordBistroへ立ち寄る。朝から何も食べていないため、サンドイッチでも買いたかったのだが、窓口が閉められて、職員が中で何か作業をしている。しばらく待っていると、技術的なトラブルでBordBistroは閉まっているとの車内放送が入る。厨房から出てきた職員に若者達が瓶ビールだけでも販売できないの?と尋ねているが、申し訳ないが何も販売できないと何度も謝っている。これは諦める他ない。
 自席に戻ると、列車はまもなくOsnabrück Hbfに着く。ここまで、ほぼ定刻で走っている。車内は満席でデッキには立客の姿もある。土曜朝に行楽地に向う列車ということで、念のため座席を予約しておいたが、やはり正解であった。
 ドイツ国内の大半の幹線の長距離列車はICEが主体となっているが、このライン・ルール地方とハンブルクを結ぶ路線は、ベルリンとドレスデンを結ぶ路線と並んで今でも客車編成のICが主体である。とはいえ、数年後にはICE 4への置き換えが予定されている。
 Osnabrückを出発すると、程なくして200km/h対応区間に入る。頑丈な路盤のおかげもあるのだろうが、乗り心地は極めて良好、客車ということで静かで、田園風景の中を滑るように走る。この辺りはICらしい走りが楽しめて好きな区間である。

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 Bremen Hbfでさらに乗客の入れ替えがある。相変わらずの混雑であるが、幸いにも列車は順調に走っており、並走するREもあっという間に追い抜く俊足ぶりである。9時ちょうどにHamburg-Harburgに着く。Hamburg-Harburgを出発すると南エルベ川を渡り貨物列車と並走しながら北上、北エルベ川を渡ると、まもなくHamburg Hbfである。9時13分定刻の到着、多くの下車客と共に私もここで降りる。(IC 2314, Düsseldorf Hbf→Hamburg Hbf: 425km)

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 これから乗車するKoebenhavn行ICE 1233は通常は7番線からの発車だが、6番線に変更になっているとのメールで通知されていた。その6番線で友人と合流する。ICE 1233は気動車ICE-TD (Tz 5514編成)による運行で、すでにホームで発車を待っていた。側面はかなり汚れており、大きな落書きも見られた。

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 ICE-TDは2等車2両、2等+Bordbistro、1等車1両の4両編成である。車内は混雑しており、事前に指定券を取ろうとしたらHamburgからは満席で、途中のOldenburgからの指定券しか買えなかった。そのため1時間ほどは立つことを覚悟していたが、ラウンジの2席に乗客が現れず、ここで座ることが出来た。
 列車は9時28分に発車、ICE-TDに乗るのは2回目だが、やはりICEでディーゼルエンジンの音を響かせての発車には違和感がある。2000年に登場と比較的新しいICE-TDだが、振子装置のトラブルで2002年には運用から外れた。その後、2006年のドイツ・ワールドカップ輸送で復活、2007年からはデンマーク国鉄DSBにレンタルされる形でHamburgとKoebenhavnを結ぶ国際路線で運用されてきた。しかし検査期限切れを迎えるにあたり、DBはICE-TDにこれ以上の投資を行わない方針を決定し、DSBに買い取りを提案するも拒否された。そのため、2016年12月のダイヤ改正で大半の編成は運用から撤退し、現在はTz 5507 / 5514 / 5517 / 5519の4編成が残り、わずか1往復に運用されるのみとなっており、この運用も2017年10月1日を以て終了してDSBのIC3に置き換えられる予定である。あまりに早い引退の前に、ICE-TDに乗ることが今回の目的である。
 Hamburg郊外を抜けた列車は最高140km/hで電化区間を北上していく。スピードに乗ればエンジン音も気にならない程度となり、乗り心地も悪くはない。Lübeck Hbfでもある程度の乗車があり、座席が埋まった。4両編成で航送の関係で増結が出来ないICE-TDでは収容力に限界があり、このこともICE-TDが引退に追い込まれる一因なのかもしれない。
 Lübeck Hbfを出発すると、まもなく単線非電化区間に入る。早朝からコーヒー1杯で過ごし、すっかりお腹が空いたので、BordBistroへ。ICE-TDのBordBistroは小さな立席テーブルがあるだけで狭いが、ここで朝食にフラムクーヘン、そしてビールを一杯。友人はChili con Carneを食べ、とても美味しいと喜んでいた。

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 10時37分、Oldenburgに着いたところで、元々予約していたテーブル付きの座席に座る。車内には幾つかの空席が見られるようになった。しばらくすると列車はFehmarnsundbrücke フェーマルン海峡橋で海峡を越え、Fehmarn フェーマルン島へ上陸する。程なくして、11時05分ドイツ最後の駅Puttgardenに到着する。

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 ここでDBの車掌は下車、BordBistroも閉店して係員も降りていった。11時08分にドアが閉まり、列車はゆっくり発車、最徐行で係員の誘導に従って、ゆっくりとフェリーの中に吸い込まれていく。HamburgとKoebenhavnを結ぶVogelfluglinie 渡り鳥ルートのハイライトが、このPuttgardenから国境を越えたデンマークのRødbyまで19kmの航送区間である。多くのバスやトラックに混じって列車はフェリー内に停車する。

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 安全上の問題で、乗客は列車内に留まることが出来ず、一度フェリーに移る必要がある。列車が収容された階からは階段またはエスカレーターで移動するが、その前にフェリー内のICE-TDを撮影する。やはり珍しいシーンなのか、何人かの観光客が記念撮影をしている。船はデンマークに向けてすぐに出航する。フェリーは方向転換が不要な双頭船で、非常に効率的な運用を可能にしている。

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 階上に行くと、ビュッフェ・レストランやカフェテリア、免税店などが並び、どこも賑わっている。デッキに上がり、海風を浴びる。考えてみるとドイツへ来て13か月、海を全く見ていなかった。久しぶりに広々とした海を見ながら潮風を浴び、実に爽快だ。Rødbyまでは航海はわずか45分、あっという間に対岸が近づいてくる。

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 早めに下りて、ICE-TDを再度撮影すると、まもなく乗車が再開された。

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 乗客が戻ったところで、ドアが閉まる。ガクンという大きめの揺れを感じると接岸、すぐに列車は動き出し、ゆっくりとデンマークへ上陸し、Rødbyに着く。ここで折り返しても良いのだが、Hamburgへ戻るECまでは1時間半以上あり、今回は次のNykøbing Falster駅まで乗車することにする。

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 12時20分に出発した列車は西へと向かう。田園風景の中を快調に進む。すでにドイツ国内で一度検札があったが、ここで今度はDSBの検札がある。12時40分、定刻より3分速くNykøbing Falster駅に到着する。ICE-TDを見るのもこれが最後であろう、ディーゼルエンジンを響かせて発車するのを見送る。(ICE 1233, Hamburg Hbf→Nykøbing Falster: 208km)

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 Nykøbingは駅も街もこじんまりとしているが、構内にはセブンイレブンがある。せっかくなので店内を見て回ると、焼き鳥が売っている。照り焼き風の焼き鳥は日本のコンビニエンスストアで買う焼き鳥と比べてもなかなかの美味。そしてドイツでは見ることにないフリスクも売っており纏め買いする。こんなお店や商品の違いにも国境を越えて来たことを実感する。

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 Koebenhavn発Hamburg Hbf行EC 34は定刻通り入線して来る。こちらはDSBのIC3による運行で、3両編成を2ユニット連結している。EC 34も乗車率は良く、大半の座席が埋まっている。2等車はボックスシートタイプだが、大柄でゆったりした椅子の座り心地は上々。隣では小さな子供たちが賑やかだ。

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 13時14分に発車した列車は20分程でRødbyへ。ここでフェリーに乗り込むまで、しばらく待たされる。ようやくフェリーに収容され、車外へ出る。先程のICE-TDに比べて乗客数が多く、写真を撮りに行くのも大変そうなので、階上へ上がり、カフェテリアへ行き、ビールに白身魚フライで遅めのランチとする。長旅の中で、こういう瞬間は良い気分転換になる。

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 早めに階下に降り、停車中のIC3を観察する。ICE-TDはフェリー内で後部にかなり余裕があったが、IC3は2編成併結した状態でフェリーにギリギリ収納されている。おそらくフェリーと列車の規格が合うように考慮されているのであろう。ICE-TDでは収容力が不足し、といって増結も出来ず、中途半端なのかもしれない。

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 まもなく車内に戻るとフェリーはドイツ側に接岸する。列車はゆっくりとフェリーを出て、Puttgardenに到着する。ここでDBに車掌に交代、先程ICE 1233に乗務していた車掌2人が担当しているようだ。

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 フェリーに乗り込むのに時間がかかったためであろう、EC 34は10分程遅れている。フェーマルン海峡を越え南下して行く。気動車ならではの心地よいエンジン音、さらに早朝から行動しアルコールも入り、眠気を催す。

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 うたた寝をするうちに列車はOldenburg・Lübeck Hbfを過ぎる。列車は順調に走り、遅れを取り戻していく。Hamburg Hbf到着は4分遅れの16時26分であった。(EC 34, Nykøbing Falster→Hamburg Hbf: 208km)

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 Hamburgからは本来であればDüsseldorf Hbfへ直行するICで帰るところだが、1日乗車券での旅で単純往復はもったいなく感じられる。そこで、今回はFrankfurt (M)経由で帰ることとする。乗り換えまでしばらく時間があるので、カフェで一服した後、友人と別れ、17時24分発Stuttgart Hbf行ICE 833に乗る。ICE 1 (Tz 166編成“Gelnhausen“)による運行である。

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 予約していた2等コンパートメントに座る。この列車も非常に混雑しており、座席を探す乗客が行き交う中で列車は慌ただしく発車する。ICE 1の魅力の一つはこのコンパートメント、昔ながらの旅気分が味わえるのはもちろん、テーブルが付いていて便利である。私もノートPCを開いてしばらく作業する。Hamburg-Harburgを通過すると加速し、最高200km/hで南下して行く。外は小雨が降り出したようだ。Uelzenを過ぎ、程なくするとEschedeを通過する。1998年6月3日に発生し101名の犠牲者を出した事故の現場は101本の木が植えられ、慰霊のモニュメントとなっている。

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 Hannover Hbfでさらに乗客が増えたようだ。列車は高速新線に入り、最高250km/hで走るが、揺れも少なく静かで、快適な乗り心地である。Göttingen・Kassel-Wilhelmshöheと停車しながら南下する間に、20時が近づき、そろそろ外が暗くなってきた。

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 ここで席を立って、BordRestaurantへ行く。幸いにも4人席が空いており、腰を下ろす。屋根の高いICE 1の食堂車は雰囲気が良く、ICE 1の最大の魅力であろう。幾つか空席があったが、乗客が次々と現れ、全てのテーブルが埋まった。なかなかの盛況である。ここでサラダと今月からの新メニューFrikadelle vom Schwein und Rind mit Pilzrahmsoße und Kartoffelnを注文する。キノコソース・ハンバーグ、ジャガイモ添えといったところ。ビールも2杯、なかなか美味しく、楽しい夕食となった。

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 列車はFuldaを通過して在来線区間に入り、南東へと向かっていく。日は沈み、外はすっかり暗くなった。この列車の食堂車の営業はFrankfurt (M)までで打ち切るようで、到着が近づくと係員が全てのテーブルの会計を済ませ、慌ただしく片づけをしている。Frankfurt (M) Hbfには定刻の21時08分に到着する。(ICE 833, Hamburg Hbf→Frankfurt (M) Hbf: 416km)

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 ICE 833はここで方向転換して、Mannheim・Heidelbergを経由してStuttgartへ向かうが、Frankfurt (M)での乗車が多いようで、車内はデッキまで大混雑。ドイツでここまで混雑している列車はあまり記憶にない。

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 私は地下ホームから21時32分発Wiesbaden Hbf行S9に乗車する。しばらくすると車内で抜き打ちの検札が始まる。治安維持の目的もあり、このような検札は早朝や夜に行われることが多いと聞く。乗客は皆きちんと切符を所持していたようで、検札はスムーズに終了。Frankfurt (M) Flughafen Regionalbf. 空港近距離駅には21時42分に着く。(S9, Frankfurt (M) Hbf→Frankfurt (M) Flughafen Regionalbf.: 11km)

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 ここから連絡通路を通って、Frankfurt (M) Flughafen Fernbf.へ。Baden-Baden付近で列車の運行が出来なくなっているとの案内が流れていたが、Basel SBB発Dortmund Hbf行ICE 100は定刻通り入線してきた。編成はICE 3 (Tz 316 “Siegburg“ + Tz 328 “Aachen“)の16両編成だが、前の8両Tz 316のみが営業しており、Tz 328は回送扱いである。ICE 100も大半の8割方の座席が埋まっている。

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 旅の最後はいつものICE 3。22時09分に発車した列車は300km/hで快調に高速新線を飛ばす。Siegburg/Bonnまでは40分で到達し、ここからは200km/hで在来線を走る。Köln Hbfには23時07分に到着、ここで列車はしばらく停車する。方向転換した列車はライン川を渡って北上。Düssendorf Hbfには23時38分に到着した。(ICE 100, Frankfurt (M) Flughafen Fernbf.→Düssendorf Hbf: 210km)

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 デンマークまで足を延ばした日帰り旅行は前回を上回る乗車距離1,478kmに達し、船を含めて約15時間半にわたって列車に乗り続けた旅であった。
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DrachenfelsbahnとBonnを巡る [ドイツ鉄道旅行 2017]

 暇があると列車で出かけたくなるのは私の性分だが、近場でも案外行ったことのない場所は案外多い。その一つ、西ドイツ時代の首都Bonn近辺を巡った。
 8月5日土曜日、8時20分に家を出て、雨の中、バスでDüsseldorf Hbfへ。出発前にAndernachへ向かうツアー列車、E10 1309牽引のAKE-Rheingoldを撮る。ドームカーや食堂車を連ねた編成は存在感十分、何度見ても美しい。

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 朝食にサンドイッチを買った後、16番線ホームへ行くと、まもなく101 113に牽引されてMünster Hbf発Innsbruck Hbf行IC 119が入線して来る。IC 119はÖBB客車で組成されている。Düsseldorfに来るÖBB客車を用いた定期列車はIC 118/119とNightJetだけである。2等車の車内にはボックスタイプのシートが並んでおり、妻と共にボックスの一つを占める。Wienで6年間の学生生活を送った妻はÖBBの客室内のデザインに懐かしさを感じるようで、車内を眺めて喜んでいる。私はというと、圧倒的にDBのデザインに親しみを感じるのだが。

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 5分遅れの8時57分に発車したIC 119は、15分遅れで並行するS-Bahn用の線路を走るREを抜き、Düsseldorf郊外からLangenfeld、Leverkusenと快調に走る。減速するとKӧln近郊である。交通の要衝だけに多くの路線と複雑に交流を繰り返し、ゆっくりとライン川を渡るとKӧln Hbfである。ここで乗客が増え、7割方の座席が埋まった。Kӧln Hbfを出発すると長距離列車が並ぶヤードを回り込み、南下して行く。Brühlを通過し、Bonn Hbfには9分遅れの9時45分に到着する。

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 少々遅れたため、元々予定していたトラムには間に合わず、時間ができた。幸いにも雨はあがったので、街中を散歩することにする。中央駅から10分も歩くとMünsterplatzに出る。Bonnで生まれたベートーヴェンの像の上には鳩が一羽。居心地が良いのか、しばらく動かず、気難しい表情のベートーヴェンとは奇妙なコントラストである。

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 中央駅に戻り、62系統のトラムに乗る。ライン川を渡った右岸にあるBonn-Beuelまでは10分程、10時33分発のKoblenz Hbf行RB 12563にギリギリで間に合う。ライン川右岸線のローカル列車は4両編成の425形、車内はガラガラである。木々の間からライン川を眺めるうちに、10時42分Kӧnigswinterに到着する。

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 駅から10分程歩くと、登山鉄道Drachenfelsbahnドラッヘンフェルス鉄道のKӧnigswinter駅に着く。観光客が集まっていて、なかなかの賑わいである。ここで10ユーロの往復チケットを購入する。夏季は基本的に30分間隔で列車が運転されているが、今日は臨時便も出して15分間隔で運転されているようだ。駅構内には、鉄道模型のレイアウトも展示されている。

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 下山してきた2両編成の電車が到着すると、改札が開始される。団体客もあり、2両編成の電車の座席はあっという間に埋まる。列車は11時ちょうどに発車、すぐに急勾配を上っていく。Drachenfelsbahnは1883年に開業したドイツ最古の登山鉄道で、標高289mのDrachenfels山頂までの1520mの路線である。リンゲンバッハ式ラックレールが採用されており、最急勾配は200‰である。開業当初は蒸気機関車で運行されていたが、1953年に750V直流で電化され、現在は1955年~78年にかけて導入されたET 2~ET 6の5両の電車が単行もしくは2両編成で運行されている。緑色の電車は5両全てが共通デザインで、愛嬌があって好ましいスタイル。途中駅のSchloss Drachenburg (ドラッヘンフェルス城)を経て、山頂のDrachenfelsまでは7、8分で到着する。

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 ここは展望台になっており、ライン川に沿った雄大な光景を眺めることができる。生憎の曇りだが、それでも十分に美しい。カフェも併設されており、ゆっくり寛ぐこともできるし、ドラッヘンフェルス城を見学する観光客も多い様子である。

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 再びDrachenfelsbahnで下山するため駅に行くと、単行の列車が発車を待っていた、どうやら臨時便のようで、乗客は我々の他は二人だけ。運転席のすぐ後ろに腰掛けるが、何と大きなスズメバチが運転席付近を飛んでいる。

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 運転士が乗り、すぐに発車させると、ハチの存在に気がついたようで、「僕も彼と一緒には乗りたくないよ」などと話しながら、ハチ近づいてくるとフーと息を吐いたりして、恐々と下山していく。Schloss Drachenburgで二人の乗客が降り、乗客は我々だけになった。ハチは相変わらず運転席機周辺を飛び回り、前面展望を落ち着いて楽しむどころではなく、別な意味でスリル満点であったが、幸いにも無事にKӧnigswinterに戻ることができた。

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 Kӧnigswinterの街はちょっとした保養地の佇まい、ゆっくりと街を散歩し、ライン川沿いに出る。

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 ここにBonnからのU-Bahn 66系統Königswinter, Clemens-August-Str.停留所がある。休日は30分間隔の運行である。12時16分の列車に乗る。ライン川を渡ってBonn市内中心部で地下に潜り、Bonn Hbfを経て、Stadthausに30分程で着く。

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 ここから歩いて5分程のところにAlter Friedhof墓地がある。お墓巡りが好きで学生時代「お墓ちゃん」と呼ばれたという妻のリクエストがあり、まずはロベルト・シューマンとクララ・シューマン夫妻のお墓へ。Düsseldorfにも所縁の深いシューマンには妻も私も思い入れが強い。そんな二人のお墓は小さいながらも、美しく整備されていた。この墓地には、他にもフリードリッヒ・シラーの妻シャルロッテやベートーヴェンの母も葬られている。

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 墓地を後に町の中心街を目指して歩き、Brauhaus Bönnschで昼食とする。ビールといえば。Düsseldorfならアルト、Kӧlnはケルシュ、そしてBonn名物のビールはこのベンシュということになるらしい。少し酸味があるが、ケルシュに近く飲みやすいビールである。ただし、Düsseldorf市民としてはアルトビールの方が好みか。ボリュームたっぷりのフラムクーヘン昼食を済ませ満足。

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 気温は20度に達しない程度、日陰では肌寒いくらいである。Münsterplatzからショッピング街を抜けてMarktへ。近くの鉄道模型店にも立ち寄りながら、街歩きを楽しむ。Bonnはこじんまりとしているが、雑然としているDüsseldorfやKӧlnに比べると随分と落ち着いた雰囲気で好ましい。Bonnから通う同僚に勧められたカフェ”VarieTee”に入り、アイスティーで一休み。ドイツでアイスティーを飲む機会は案外少ない。

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 15時を過ぎ、ベートーヴェンの生家、Beethoven-Hausへ。Bonn一番の観光名所ということもあり、観光客がひっきりなしで蒸し暑く落ち着かない雰囲気であったが、ベートーヴェンの遺書など心に迫る展示も多い。デジタルアーカイブでいくつかの曲を聴いているうちに17時半を過ぎる。

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 私の知人で留学中の法律家、さらに妻の留学仲間で今はボンで働く音楽家と合流し、4人でMarktに面したレストランで中華料理を楽しむ。”VarieTee”に移ってワインを1杯。もう21時を過ぎて、そろそろBonnの街も暗くなってくる。

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 Bonn中央駅に戻り、21時46分発のMünchen Hbf発ICE 1522に乗車する。ICE-Tによる運転で、7割程度の乗車率である。終点Kӧln Hbfまでは20分程、3分遅れの22時09分に4番線ホームに到着する。

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 ホーム向かい側の5番線にはMünchen Hbf発Münster Hbf行ICE 512が既に発車を待っていた。こちらはICE 3による運行である、こちらも7割方の席が埋まり、慌ただしく発車する。DBも時間通り走りさえすれば、このような拠点駅での接続がスムーズで便利なのである。外はもう真っ暗、その中をICEは200km/hで快調に走る。Kӧlnの発車が少し遅れた影響か、Düsseldorf Hbfには4分遅れの22時30分に到着した。

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 いつもの如く、ICE 3の発車を見送って、今日の旅を終えた。ちなみに妻曰く、ICE 3の発車音は「シのフラット→1オクターブと5度上のファ」で構成されているらしい。ピアノで聞くと確かにそのようにも聞こえるが、私には真偽の確かめようがない。


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