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1日乗車券でドイツ周遊 (1) [ドイツ鉄道旅行 2017]

 私はドイツ鉄道のBahnCard 50を所有している。このカードを使うとドイツ鉄道のチケットを、正規料金Flexpreisなら50%引、早期割引料金Sparpreisなら25%引で購入できる。BahnCardにはポイントシステムがあり、支払った代金に応じてポイントが加算される仕組みであるが、このポイントがかなり貯まったので、DB Tageskarteと呼ばれる1日乗車券と交換した。この1日乗車券はICEなどの優等列車を含めたDBの列車の2等車と市内交通を当日から翌10時まで自由に利用できる。7月29日、早速日帰り旅行に出かけた。
 朝5時半に起床し、バスでDüsseldorf Hbfへ。まずはFrankfurt (M)空港駅へ向かう。当初は6時21分発ICE 525に乗るつもりであったが気が変わり、6時27分発Stuttgart Hbf行IC 2319に乗車する。101 068に牽引されて入線した列車はまだ朝が早いためか空いており、テーブル付の席にゆっくりと座る。

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 定刻に発車した列車は加速しながらDüsseldorf郊外を離れていく。ここで、通路を挟んで反対に座った男性に携帯の充電器をしばらく貸してくれないか、と頼まれる。ついでに、実家に帰ることができないとお金をせびってきたが、それは断る。それでも、スペインから来た学生でアーヘンで勉強しているなどと話しているうちに、列車は順調にLangenfeldやLeverkusenを通過し、もうKӧln近郊を走っている。ライン川をゆっくりと渡り、定刻の6時50分にKӧln Hbfの7番線に到着する。(IC 2319, Düsseldorf Hbf→Kӧln Hbf: 41km)
 ホームの向かいの6番線では既にBasel SBB行ICE 101が発車を待っている。ICE 3を2編成連結した16両編成 (Tz 317 “Recklinghausen” + Tz 312 “Montabauer”)である。ICE 101も空席が目立つ。先頭の21号車のラウンジ席に座る。運転室との仕切りガラスはスモーク状態であるが、外が明るければ前面展望は十分楽しめるのである。

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 6時54分に発車した列車はライン川を渡ってKӧln Messe/Deutz駅を通過し、南東へと針路を向けて加速していく。S-Bahnや貨物列車を追い抜きながら、最高200km/hでSiegburg/Bonnへ。ここで隣に年輩の女性が座る。Siegburg/Bonnを出発すると高速新線SFS Kӧln Rhein/Mainに入り、一気に加速していく。丘陵地を超える関係で、高速新線といっても勾配とカーブが連続し、スピード感は格別である。Montabauerの手前で工事区間があり一時120km/hの徐行を強いられたもの、それ以外は最高300km/hで駆け抜ける。安定感のある乗り心地を楽しんでいるうちに、列車はLimburg Südを通過し、ライン川左岸線との分岐点を超えるとまもなく減速、マイン川を渡ってフランクフルト空港の滑走路脇を走り、7時49分にFrankfurt (M) Flughafen Fernbf.の5番線に到着する。(ICE 101, Kӧln Hbf→Frankfurt (M) Flughafen Fernbf.: 169km)

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 ICE 101の発車を見送ると、すでに7番線にはLeipzig行ICE 1545が発車を待っていた。こちらはICE-T (Tz 1155編成”Mühlhausen/Thüringen”)による運行である。

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 ICE 1545も空いており、ラウンジの空席に座る。定刻の8時11分に発車した列車はFrankfurt市内を東に向けてゆっくりと走り、9分でFranksurt (M) Südに着く。私はここで下車する。(ICE 1545, Frankfurt (M) Flughafen Fernbf.→Franksurt (M) Süd: 11km)

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 Frankfurt (M) SüdはS-Bahnが頻発しており、Hbfから10分で到達できる。Frankfurt (M) Hbfは折り返し駅であり、駅の容量にも限界があるため、遅延防止の目的で一部のICEなどの長距離列車はHbfを経由せず、このSüd駅を経由しているのである。しばらく列車を撮影しながら時間をつぶす。

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 ここからBasel SBB発Kiel Hbf行ICE 972に乗車する。こちらはICE 1 (Tz 162編成 ”Geisenheim/Rheingau”)による運行である。この列車は非常に混雑しており、2等は満席で立客も出る程であった。予約してあった5号車のコンパートメントは家族用区画で、同室者は赤ん坊を連れた若い夫婦と、5歳くらいの子供とその父親、当然とても賑やかである。男の一人体で座るのは場違いな気もするが、この混雑では他に席を探しようもなく、そのまま腰を下ろす。列車は4分遅れの9時05分に発車する。

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 車窓風景を眺めつつ、ドイツ語の勉強をする。仕事や勉強には、しっかりとしたテーブルがある座席は便利である。Haunau Hbfを通過すると、列車は在来線区間を北東へ向かう。Frankfurt近郊区間は終わり、車窓ものどかである。Fuldaを通過すると高速新線SFS Hannover – Würzburgに合流し、最高250km/hで走る。とはいえ動力集中式ということもあり、車内は静かで乗り心地も上々である。この高速新線はSFS Kӧln Rhein/Mainに比べて一世代古く、貨物列車も通過できるよう勾配が抑えられている。そのため橋梁区間が多く、高い場所からドイツの田舎の風景を眺められる。Kassel-Wilhelmshӧhe・Gӧttingenと停車する度に乗降があるが、それでも車内は相変わらずの混雑、コンパートメント内に唯一残っていた1席にも若い男性が座った。

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 Hannover Hbfが近づいたところで席を立ち、食堂車BordRestaurantへ。屋根が高く特徴的なICE 1のBordRestaurantは非常に魅力的な空間であるが、老朽化が進んでいることから、ICE 1を再改装し短編成化してBordBistroを設ける代わりに食堂車を廃車にする計画もあると聞く。そうなると、今のうちにできるだけ使っておきたいと思うのである。目論見通り、Hannoverでかなりの乗降があり、食堂車に無事に空席を見つけることが出来た。とはいえ、まだ昼食には早い時間にも関わらず、すぐに大半の座席が埋まり、なかなかの利用率である。
 Hannover Hbfでは反対側に12月の本格デビューを控えるICE 4が停車していた。ICE 972は11時20分にHannoverを出発し、最高200km/hの在来線区間をHamburgへと向かう。休日ということで、まずは生ビールを一杯。Rindfleisch-Gemüse-Eintopf (牛肉と野菜のシチュー)とサイドサラダで昼食とする。シチューにはパンが付き、ボリュームは十分。ゆっくりと車内での食事を楽しみ、最後にコーヒーをもらう頃には、列車はもうHamburg近郊であった。

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 到着を案内する車内放送が入ると、信号故障によりコペンハーゲン行EC 35が運休・・・・と聞こえて愕然とする。まさに、その列車に乗り、Vogelfluglinie 渡り鳥ラインと呼ばれるルートで列車の航送を体験するのが今回の目的だったのである。やや早いドイツ語であったので聞き間違いかもしれないと思いドイツ鉄道のサイトを確認するが、やはりデンマークでの信号故障でコペンハーゲン方面は運休と伝えており、万事休す。ICE 972はHamburg Hbfには定刻の12時35分に着く。(ICE 972, Frankfurt (M) Süd→Hamburg Hbf: 412km)

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 ここで友人と合流する。昔仕事を共にした友人で1週間前からハンブルクに単身赴任してきたばかりだが、生活必需品の買い物が難しくて困っているとのことで、一緒に旅を楽しみ、ついでにスーパーで買い物をしようということになっているのである。友人は航空マニアであるが、鉄道も好きだし、日本語で会話したいこともあって、同行することになったのである。
 まずはEC 35の運休が問題である。DBの窓口に行き事情を話すと、ここでは返金できないとのことで、封筒を渡され必要事項を記載して送るように言われる。これは後日行うこととする。友人は昼食がまだとのことで、フードコート内の魚料理店で友人の昼食に付き合い、スーパーで買い物をしつつ、これからの行動予定を考える。ハンブルク市内を散策するのも悪くはないが、今月初めに来たばかりだし、せっかくの1日乗車券なので、できるだけ列車に乗りたいところである。
 いろいろと検討した結果、まずはIC 2028に乗車してKiel Hbfへ向かうことにする。その前に停車していた218形を撮影する。Düsseldorfでは滅多に見かけない218形だが、非電化区間の多いドイツ北部ではまだ健在である。

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 IC 2028は制御客車を先頭に入線してきた列車はかなり混雑していたが、大半の乗客がHamburg Hbfで下車し、Kielへ向かう車内は空いていた。テーブル付きの座席にゆっくりと座る。下車に時間がかかったこともあり、列車は10分程遅れの14時26分に発車。直後に雨が降り出したが郊外に出ると雨は上がった。ドイツ北部らしい平坦な地形の中を北上し、Neumünsterを経て、終点Kiel Hbfには10分遅れの15時31分に着く。到着直前に再び雨が降り出したが、ホームの屋根は駅舎ホールに近い部分にしかかかっておらず、下車すると走ってホール内に入って一息。(IC 2028, Hamburg Hbf→Kiel Hbf: 110km)

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 Kiel駅の様子をちょっと見た後、6b番線へ行き、Husum行RE 21222に乗車する。REといっても648形気動車の2両編成で運転されるローカル列車である。

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 16時03分に発車した列車は、途中Feldeのみに停車し、Rendsburgへ向かう。ローカル線とはいえ、列車は軽快なディーゼル音を響かせながら120km/hを出しており、なかなかの俊足ぶりである。ロングレールが敷かれ軌道状態も良好で、乗り心地は良い。Neumünsterからの路線と合流し上り勾配に入ると、まもなくRendsburger Hochbrückeが見えてくる。この鉄道橋はご何時の技術遺産としても有名で、Nord-Ostsee-Kanal(北海バルト海運河)を超えることから、高さは42mに達する。運河を超えると、街を回り込むようにループしながら高度を落としていき、16時34分にRendsburgに到着する。(RE 21222, Kiel Hbf→Rendsburg Hbf: 40km)

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 Rendsburgからは16時43分発IC 1185に乗車する。デンマークのAarhus始発のIC 1185はDSB所属のIC3の3両編成により運行されている。座席予約が出来なかったことから予想はしていたが、列車はやはり混雑していた。それでも、何とか空席を見つけることができ一息。列車は再びRendburger Hochbückeを超え、南下して行く。

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 IC3の座席はボックスタイプで配置されている。2等席でも1等席と思える程大きく、ゆったりとしている。車内デザインも落ち着いた雰囲気で、好ましい。車内放送時のチャイムや車掌室などは、日本のJR在来線特急に近い雰囲気で、懐かしい気もした。列車は揺れもなく、順調に走る。座り心地の良さに、友人はうたた寝している。Neumünsterを通過すると、先程北上した路線を逆に辿ることになる。多くのICEが留置されているHamburg-Eidelstadtを横目に列車は減速し、S-Bahnと並行してゆっくりと走り、定刻より3分早い17時54分にHamburg Dammtorに着く。ただし下車する乗客は僅かである。Dammtorを発車すると列車は何度か一時停止を繰り返し、定刻の18時03分にHamburg Hbfに到着する。(IC 1185, Rendsburg Hbf→Hamburg Hbf: 118km)

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 友人がここで夕食を済ませたいとのことで、再びフードコートへ。Currywurstというのは美味しいものですねえ、と喜ぶ友人。私は普通のソーセージとビールを一杯。あとはDüsseldorfへ戻るだけである。
 友人と別れ、14番線ホームに行くと多くの乗客が待っていたが、101形に牽引されて入線してきたKiel発Koblenz行IC 2307に乗り込み、何とか空席を見つけることができた。列車は定刻の18時46分に発車。巨大な港を遠くに見ながらエルベ川を渡る。Hamburg-Harburgにも停車し、さらに乗客が増え、見える範囲では満席となった。

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 IC客車の基本設計は1960年代に遡り、各種設備は古さを隠せない部分も少なくないが、200km/hで走っても乗り心地は良好である。客車列車ならではの旅情が楽しめるのも良い。定刻の19時41分にBremen Hbfに到着すると、下車する乗客が非常に多く、車内はかなり余裕が出来た。

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 Bremenを出発すると、一部区間で工事に伴う徐行があったものの、概ね順調に南西へと向かう。20時を過ぎ、車窓には美しい夕景が広がる。立派な給水塔が残るOsnabrückを経て、Nordrhein-Westfalen州に入り、Münster Hbfには21時に着く。駅に着く度に降車客が多く、車内はかなり空いてきている。

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 Münsterを発車したところで、喉が渇いたので、BordBistroへ行く。IC 2307は11両編成、後ろから2両目に乗っていたため7両先のBistroに行くのは難儀であったが、それでも白ワインを調達し、自席に戻る。列車はまもなくDortmund Hbfに到着する、ここまで来ると、もう帰ってきたような気分になる。Essen Hbf・Duisburg Hbfと主要駅にこまめに停車し、定刻より3分遅れの22時28分にDüsseldorf Hbfに到着する。(IC 2307, Hamburg Hbf→Düsseldorf Hbf: 425km)

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 ドイツの北側半分を一周した日帰り旅行、乗車距離は1326km、約11時間半にわたって列車に乗り続けたが、思った以上に疲労感はなく楽しかった。とはいえ、今回は本来の目的を果たせなかったのは残念、近々再度挑戦することにしよう。