SSブログ

Wuppertal ohne Bahn - 列車が来なくなったWuppertal [ドイツ鉄道事情]

 Düsseldorfの東26kmに位置するWuppertalはその名の通りWupper川の谷に沿って広がる人口35万人の都市である。Wuppertal HbfはKӧln – Berlinを結ぶICE-Linie 10を始め、多くのICEやICが停車する。地域輸送も充実しており、以下の路線が乗り入れている。

- RE 4 “Wupper-Express”
 Aachen – Düsseldorf – Wuppertal – Hagen – Dortmund

- RE 7 “Rhein-Münsterland-Express”
 Krefeld – Neuss – Kӧln – Solingen – Wuppertal – Hagen – Münster (Westf) – Rheine

- RE 13 “Maas-Wupper-Express”
 Venlo – Düsseldorf – Wuppertal – Hagen – Hamm (Westf)

- RB 48 „Rhein-Wupper-Bahn“
 Bonn-Mehlem – Bonn Hbf – Cologne – Solingen – Wuppertal – Oberbarmen

- S 7
 Solingen – Remscheid – Wuppertal

- S 8
 Hagen – Wuppertal – Düsseldorf – Neuss – Mönchengladbach

- S 9
 Haltern am See – Essen – Velbert-Langenberg – Wuppertal

 このような交通の要衝であるWuppertalで信号システムの変更に伴い、信号やケーブル類の交換など大規模な工事が行われることになった。そのため、7月16日から8月31日までの1か月半に渡ってWuppertal周辺で列車の運行が全面的に取り止められることとなった。具体的には西側はDüsseldorf-Gerresheim、南側はSolingen Hbf、東側はWuppertal-Oberbarmenn、北側はVelbert-Langenbergを境とし、その内側では列車の運行がなくなり、バスによる代行運転が行われているのである。

1.jpg
(ドイツ鉄道サイトより)

 ドイツでは工事によるダイヤ変更や運休はそれほど珍しくないが、これほどの規模で長期にわたっての工事運休は珍しい。8月6日Wuppertalまでバス代行の様子を見に行った。Düsseldorf Hbfでは駅の真横のトラム・バス乗り場から代行バスが発着している。駅構内にはいくつもの案内表示が設けられている他、簡単な案内所も設けられ、アルバイトと思われる係員が立っている。構内アナウンスでも頻繁にバス代行となっていることを伝えている。

2.jpg

3.jpg

 バスはRE・RBとS-Bahnそれぞれに設定されており、中距離・近距離双方の利用者に対応しているが、まずはS-Bahnのバス代行の様子を見ることにして、Düsseldorf Hbf 14時30分発のS8系統に乗る。本来ならWuppertal経由でHagen Hbまで走るS8系統だが、本日は2駅先、わずか5分のDüsseldorf-Gerresheim止まりである。

4.jpg

 駅から案内表示に従って駅前に出ていると、すでに代行バスが発車を待っていた。S8の代行バスはS-Bahnに合わせ、平日は20分間隔、休日は30分間隔で運転されている。乗客が次々と乗り込み、大半の座席が埋まったところで、発車。住宅地を抜けたバスは田園の中を東へと向かう。

5.jpg

6.jpg

 S-Bahnでは各駅間は3分程度であるが、代行バスは住宅地を抜けると幹線道路に入り、街に入ると住宅地を通って駅前まで乗り入れるため、概ね10分程度かかる。線路を時に並行し、時にオーバークロスしながら進む。バスからは街の様子がよく見えて、鉄道とは違った面白さがあり、時には丘陵地に広がる田園や森の中を抜け、なかなか多彩な車窓風景である。Erkrath、Hochdal、Hochdal-Millrath、Gruitenと停車するごとに降りて行く乗客が多く、車内は大分空いてくる。

7.jpg

8.jpg

9.jpg

10.jpg

 Wuppertal市内に入り、Düsseldorf-Gerresheimから40分あまりでWuppertal-Vohwinkelに着く。S-Bahnなら15分で着くのだから、3倍近い時間がかかったことになる。バスはさらに各S-Bahn停車駅に止まりながらWuppertal市内中心部を抜け、Wuppertal-Oberbarmenへ向かう。

11.jpg

12.jpg

 Wuppertal-VohwinkelはS-BahnだけでなくREも停車する駅であるが、列車の発着がない駅舎内は売店も閉まって、ほとんど無人で静まりかえっていた。

13.jpg

14.jpg

 S-Bahnの駅から5分程歩くとモノレールのVohwinkel駅に出る。世界最古のモノレールとして知られるWuppertalのSchwebebahnモノレールは平日4分間隔、土曜日6分間隔、日曜祝日は8分間隔で運行され、現在もWuppertalの市内交通を支えている。現在は新型車両の導入も進められている。

15.jpg

 日曜日とはいえ、モノレールは旺盛な需要があるようで、停車する度に乗客が増えていく。Wupper川の上を走りながら市の中心部へと向かう。独特の乗り心地を楽しむうちに車内は混雑し、立客も出る混雑となった。Wuppertal Hbfには17分で到着する。

16.jpg

17.jpg

18.jpg

 モノレールの駅は鉄道駅の北側にあり、両駅の間では大規模な再開発工事が進められている。今年中には完成しショッピングモールなどが完成するはずだが、現場を見る限り本当に完成するのか、疑いたくなる状況である。もっともドイツでは、工事の遅れは日常茶飯事のようであるが。
 バスターミナルはモノレール駅のさらに北西側の市街地に仮設されており、市内や周辺都市へ向かうバスが次々に発着している。ここからバスに乗り、妻の希望のカフェで一休憩し、再びHbfへ戻る。駅舎は以前から閉鎖されており、ホームの隅にプレハブでDBの窓口ReiseZentrumが設けられているが、日曜のこの時間は閉まっている。列車の発着がない駅構内は静まり返っており、信号機も全て消えて、少々不気味な雰囲気である。

19.jpg

20.jpg

21.jpg

22.jpg

 案内に従ってWuppertal Hbfの代行バス発着所まで歩くが、これが案外遠く、線路に沿って西へ5分以上歩いた坂の上、市ホールの近くにあった。鉄道駅からは650m、モノレール駅やバスターミナルともかなり離れている。一時的とはいえ、かなり不便な状況であることは間違いない。
 ここからRE 4・13系統の代行バスに乗る。この代行バスは基本的に30分間隔で運転されており、Wuppertal Hbd発着の他、Wuppertalの東の拠点Wuppertal-Oberbarmen発着の系統も設けられている。都市間の輸送を目的にしているため、Düsseldorfまでをダイレクトに結ぶ。

23.jpg

 到着したバスの最前部に座る。こちらも路線バスに使われる連接バスである。車内は座席が全て埋まり、立客も少し出た。バスが発車すると明るい女性の運転手が自己紹介し、Düsseldofまでの予定所要時間は45分程と伝えている。

24.jpg

 モノレールに沿って市内を西へと走り、Wuppertal-Sonnborner Uferに停車する。ここからはノンストップでDüsseldof市内に向かう。運転手が再びアナウンス、「良いニュースと悪いニュースがあります。良いニュースはこの先Düsseldofまで渋滞がないことです。悪いニュースは立っている乗客がいる関係で、スピードが60km/hに制限されることです。」とのこと。ユーモアを感じさせるアナウンスの後、バスはアウトバーンへと入っていく。シートベルトもない路線バス用の車両が高速道路に入ることは日本では許されないかもしれないが、ドイツでは時々見かける光景である。アウトバーンは交通量が多いが、確かに渋滞はない。この辺りの区間は制限速度が120km/hと設定されているが、バスはきっちり60km/hで走る。20kmあまりをアウトバーンで走り、Düsseldof市内南部でアウトバーンを下りる。

25.jpg

26.jpg

27.jpg

28.jpg

 Hbfまでは大した距離ではないが、信号で何度も止められるため、アウトバーンのようにはスムーズには走れない。終着が近づき、運転手が「スピードは制限されたけど、幸いにも時間通りにDüsseldof Hbfに着きます、いや、まだ3分余裕がありますね。」と最後までユーモアのあるアナウンス。その言葉通り、42分で到着した。本来のREであれば20分で着くので、倍以上の時間がかかったことになる。

29.jpg

30.jpg

31.jpg

 その後、Wuppertalに住む人と話す機会があったが、やはりバスで毎日通うのは大変で、早く鉄道が戻って欲しいとのこと、バスの本数はある程度確保されているとはいえ、所要時間は2~3倍で、Wuppertalの発着場もお世辞にも便利とは言えず、その気持ちは理解できた。
nice!(4)  コメント(4) 

nice! 4

コメント 4

abe

総武線が1ヶ月間区間運休なんて考えられないですね〜
by abe (2017-08-21 06:22) 

HUH

総武線とは利用客数が全く違いますから、一概には比較できないでしょうが、いくらドイツでも大幹線はそうそう止めないでしょう。Düsseldorf - Duisburg間の集中工事では複々線 (一部3複線)のうち、2線で工事を行い、残りの2線でやりくりしていました。最も列車本数は削減されるし、駅での待ち時間が長いし、遅延も多かったですが。
by HUH (2017-08-21 16:19) 

Gut

さすが、やることが違いますね(笑)
日本でやったら苦情の嵐でしょうねぇ。
欧米人と日本人の違いは本当に面白いと思います。
どちらがいいのかはわかりませんが、日本人は欧米人を見習うべきだし、欧米人は日本人を見習うべきだと思うんですよね。
まぁ、どちらがいいのかは、やっぱりわからないんですがね。
by Gut (2017-08-21 21:25) 

HUH

Gutさん、コメントを有難うございます。
日本もJR東日本など、時々列車を止めて工事をしますが、並行路線がある場合が多いと思います。最もローカル線では日中は何曜日運休とかを見ることもありますが。
ドイツでもこのWuppertalのような例はさすがに珍しいと思います。

それぞれの事情がありますので、どちらが良いか、という議論はなかなか難しいと思いますが、確かに他で行われていることが発想の転換という意味で、役に立つ可能性はありますね。
by HUH (2017-08-22 16:43) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。