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ICE 3 Redesign [ドイツ鉄道 電車]

 ドイツを代表する高速列車ICE 3は2000年6月にHannoverで開催された万博輸送で営業運転を開始した。現在は2002年開業に高速新線SFS Köln-Rhein/Mainを経由する列車を中心に、最高300km/hでの営業運転を行っている。流麗なスタイルと洗練されたデザインは現在も全く古さを感じさせないが、登場して17年が経過し、各所に傷みがみられてきたのも事実である。
 ドイツ鉄道は2005年にICE 1でRedesignと呼ばれる更新工事を開始し、以後ICE 2やICE-T (1次車)に対する更新工事をニュルンベルク工場で継続してきた。そして、2016年よりICE 3の更新が開始され、3月7日に更新車両の登場がプレス発表された。3月25日時点では403形3編成 (Tz 302 „Hansastadt Lübeck“, Tz 323 „Schaffhausen“, Tz 328 „Aachen“)の更新工事が完成しており、Tz 323は新たに搭載した信号システムEuropean Train Control System (ETCS)の試験に用いられているものの、3月22日にTz 302がICE 612 (München – Stuttgart – Dortmund) / ICE 611 (Dortmund – Stuttgart - München)で営業運転を開始し、続いてTz 328も営業運転に就いている。今後も3週間に1編成の割合で更新工事が進められる予定である。

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 ICE 3はDüsseldorfで最も見かけるICEということもあり、私にとってはHamburg – Münchenで試験的な営業運転を行っているICE 4以上に、ICE 3のRedesignは大きなニュースである。早速ドイツの掲示板の情報を元に、3月23・24日夕方にDüsseldorf HbfでICE 3の更新車を待ったが、運用変更でもあったのか、やって来たのはいずれも未更新車であった。しかし、25日にようやく更新車に乗ることができたので、その詳細を紹介したい。

【更新工事の概要】
 ドイツ鉄道は2.1億ユーロを投じ、2020年までにニュルンベルク工場でICE 3の全66編成 (403形50編成、406形16編成)の更新工事を行う。更新工事の主眼は客室設備をリフレッシュし、ICE 4を元にサービスレベルを引き上げることである。さらに、2017年末より高速新線Nürnberg–Erfurtを経由して、Berlin – München間を4時間以内で結ぶICEに投入されることから、ETCSも搭載される。

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【客室内】
 客室内の最も大きな変化は、座席がICE 4と同様なものに変更され、座席番号や予約表示もこれまでの荷物棚下から座席横に移された点である。1等席には読書灯も設けられている。個人的には荷棚下に表示した方が自然なように感じていた。しかし、本日乗車した未更新車で年配の乗客がかなり目を近づけて座席番号を確認しており!座席に表示する方式の方が好ましいのかもしれない。
 なお、1等車のコンパートメントは残されているが、1両のみにあった2等コンパートメントはオープン座席となっていた。

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1等車

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1等車

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1等車

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1等車

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1等車コンパートメント

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2等車

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2等車

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2等車

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2等車

 ICE 3の課題の一つは荷物置き場が不足していた点があげられる。デッキなどに大きな荷物が置かれて乗降の妨げとなることも珍しくなかったが、今回客室内に荷物棚が増設され、乗客から荷物に目が届きやすいように配慮されている。

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1等車

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1等車

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2等車

 これまでICE 3では客室端上部に設けられた赤字のLED表示で各種情報が提供されていた。デザインは非常に美しいものであったが、遠い席から確認するには難があり、また情報提供量にも限界があった。これに代わって、更新車では客室内に複数のカラー液晶モニターが設けられ、走行位置情報、遅延状況に合わせた最新の乗り換え案内、速度表示など乗客への情報提供の充実が図られている。デッキに設けられていた情報案内表示も、カラー液晶に変更された。また、1等コンパートメントにも新たにカラー液晶が設けられた。

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 両運転室後部に設けられているラウンジにも今回からカラー液晶モニターが設けられ、1列目には折り畳み式のテーブルが設置された。また、これまで2・3列目の座席は展望を考慮して嵩上げされていたが、更新車では嵩上げはなされていない。

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1等ラウンジ

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1等ラウンジ

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1等ラウンジ

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2等ラウンジ

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2等ラウンジ

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2等ラウンジ

 ICE 3の食堂車は、登場時はICE 1やICE 2と同様に“BordRestaurant“として中央の厨房を境に、24席のレストランと販売カウンター・立席スペースに分かれていたが、2002年に定員を増加させる目的で、レストランはテーブル付2等席12席(一次車。二次車は後に2等席16席で登場) と立席スペースに変更され、“BordBistro“と改称された。しかし、実際にはこの部分の2等席はレストランとして営業されており、“BordRestaurant“と同様の食事メニューが提供されていた。一方で追設された立席部分はあまり利用されていなかった。今回の更新では、“BordRetaurant“に再び改称され、20席を要するレストランとなり、供食体制の充実が図られている。

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 子供連れ用個室が新たなデザインとなった他、車椅子スペースが1席から2席に増え、高さの調整が可能なテーブルが設けられた。

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 乗客のオリエンテーションがつきやすいように車両内外のピクトグラムも改良されており、視覚障害者にも配慮されている。トイレは大きな変更はないが、ICE 4と同様に花のイラストが貼られてた。

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 全体としてはICE 3の良い意味での個性は残しつつアップデートされており、好感が持てる更新内容である。

【車両外観】
 車両外観の変化は小さいが、ICE 4と同様に、各種ピクトグラムが増えたのが目立つ他、食堂車側面には“BordRestaurant“の表記が復活した。行先表示のLEDは橙色となり、視認性の向上が図られている。また編成に付けられた都市名の表記は、これまでの編成両端の側扉横から、先頭車の中間寄りに移された。

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【旅行記】
 3月23日、Web上の情報で25日にICE 3の更新車がICE 798 (München -Dortmund)およびICE 795 (Dortmund – München)に運用される予定であることを知った。そこで、早速ICE 798の乗車券を確保した。

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 25日、Düsseldorf Hbfを8時20分に発車するICE 509に乗った。29号車1等ラウンジ席を予約していたが、今朝は編成が逆になり、21号車が先頭、29号車はもう一つの編成と連結する中間となっていた。21号車はAIRail Service用の席となっていたこともあり、テーブル付きの1等席でゆっくりと過ごすことにした。Köln Messe/Deutzでまとまった乗車があり、1等席も半分程の席が埋まった。ICE 509はここからフランクフルト空港までノンストップの速達便、高速新線に入ると順調に飛ばす。シートサービスで注文したコーヒーを飲みながら車窓風景を眺めるうちに、列車は定刻の9時34分にFrankfurt Main Flughafen Fernbahnhofに到着した。

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 駅に併設されたスーパーに立ち寄った後、発着するICEを撮影して、しばらく時間をつぶす。

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 10時09分にICE 202がKöln Hbfへ向けて発車すると、しばらくしてICE 798の接近を告げる構内放送が入った。待つことしばし、早着気味に入線してきたのは期待通り、更新車Tz 328編成“Aachen“であった。車両は塗装され直したばかりでピカピカで美しい、これだけ綺麗なICE 3を見たのは初めてである。

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 今回は1等ラウンジの2列目の席を予約していた。車内はなかなか混んでおり、私の隣を除けば、ラウンジ内の全ての席は埋まっている。車内探検は空いてから行うこととし、まずは自席で寛ぎつつ、前面からの展望を楽しむことにする。せっかくのラウンジとはいえ、運転席との間のガラス仕切りはスモーク状態とされていることも多いが、今日は幸いにも透明となっている。
 10時25分定刻に発車した列車は高速新線を快調に加速していく。目の前の液晶モニターでリアルタイムに速度を確認できるのが楽しい。列車は、最初は200~250km/hと抑え気味に走っていたが、しばらくして加速し、300km/hに達した。Limburg Süd・Montabauerといった中間駅も通過し、一時120km/h程で徐行したものの、概ね最高300km/hで快調に走った。

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 Siegburg/Bonnを通過すると、最高200km/hの改良新線区間となる。車掌が回ってきて検札を済ませたところで席を立ち、食堂車へ向かう。昼食にはまだ少し早い時間ということもあってか、幸いにもレストランは空いており、先客は二人だけである。すぐにウエイターが来たので、ビールとスモークサーモンサラダを注文する。
 列車は徐行の影響か、やや遅れ気味でKöln Messe/Deutz駅に着き、かなりの乗客が下車した。慌ただしく発車した頃、生ビール、さらにサラダが届く。行動しやすいように先に会計を済ませたら、車窓を眺めながらゆっくり昼食。ドイツの鉄道旅行の楽しみの一つは車内でのビール (+ワイン)と食事である。

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 ここまで、ほぼ順調に走ってきたが、Düsseldorfが近づくと、列車は一時停止した。3月初旬から、Köln - Düsseldorf Hbf - Düsseldorf Flughafenの区間では大規模な工事が行われており、多くの列車に遅延が生じている。ICE 798もDüsseldorf Hbfの手前でしばらく停車し、結局10分以上遅れての到着となった。

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 2等車を見ながら最後部の21号車のラウンジ席に移動する。Düsseldorf HbfとDüsseldorf Flughafenの間は普段ICE・IC・一部のREが走る路線で路盤工事が行われており、REやS-Bahnには運休や運転区間短縮、ICEやICには迂回や運転時間の変更が生じている。慌ただしくDüsseldorf Hbfを発車したICE 798だが、徐行や一時停止を強いられ、結局Duisburg Hbfには17分遅れの12時06分に到着した。
 Duisburg Hbfを発車したところでゆっくり前方に移動、再び1等車へ。列車はルール川を渡り、Mühlheimを通過してEssen Hbfに停車する。車内の大半が空席になったので、車内の写真を撮りながら1等ラウンジに戻る。Bochum Hbfまでの区間は前面展望を楽しむ。Bochum Hbfを発車したところで、食堂車に向かうと客は誰もおらず、ウエイターがレストランで売り上げの計算をしていた。撮影の許可を撮ると、どこから来たの?と尋ねられ、しばし会話。そうこうするうちに列車はラストスパート。Dortmund Hbfには遅れを少しだけ取り戻し、15分遅れの12時45分に到着した。
 基地へと引き上げるICEを撮影した後は手持ち無沙汰になる。Webでの情報によると、Tz 328編成は15時25分発ICE 795で折り返す予定だが、それまでは間がある。写真もある程度撮れたので、このまま帰っても良い気もしたが、天気がとても良くて暖かいこともあり、ホームの端で発着する列車を撮影しつつ、日向ぼっこをしながら待つことにした。

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 15時過ぎ、ICE 3が車両基地からゆっくりと近づいてきた。遠くで一時停車し、REやICEを先行させた後、15時15分にゆっくりとMünchen Hbf行ICE 795が入線。こちらもWeb情報通り、先程のTz 328編成であった。反対ホームで写真を撮った後、ICE 795に乗車する。

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 車内は空いており、2等ラウンジに座る。15時25分に発車した列車は最高150km/h程でBochum Hbf・Essen Hbfと停車しながら西へ向かい、Duisburg Hbfにもほぼ定刻の16時04分に着く。途中Mühlheim付近では、今や貴重な存在のLudmillaの姿が見られた。健在なのは嬉しい限りである。

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 Duisburgからの複々線では本来のICE/IC/RE(一部)用の路線ではなく、S-Bahnが走る路線を走る。そのためか、やや速度は抑え気味である。Düsseldorf Flughafenの手前で一時停止し、その後は徐行気味に進む。閉鎖されている路線では枕木や線路の交換工事が進められている、4月初旬には終了する予定とのことで、今の状況が改善されるのが待ち遠しい。Düsseldorf Hbfの手前でも一時停止と徐行を強いられ、結局Düsseldorf Hbfには5分遅れの16時24分に到着した。

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 ICE 3の未更新車と更新車を乗り継いだ旅。ICE 3ならではの個性や魅力が薄れてしまったのではないかと懸念していたが、幸いにもそれは杞憂であった。むしろ、客室設備が現在のレベルに合わせてアップデートされ、食堂車の充実が図られたことは嬉しい変化である。ドイツ鉄道は今後さらに15年以上のICE 3の使用を見込んでいるという。15年と言わず、末永く活躍してほしいものである。
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