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ICE 20周年 [ドイツ鉄道 列車]

 1991年6月2日5時53分、ICEの営業初列車がHamburg-Altonaを発車した。そして今日、ICEは20周年という記念の日を迎える。

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 Hamburg - Frankfurt (M) – Münchenの一路線でスタートしたICEのネットワークは、現在は旧東ドイツ圏も含めてドイツ全土をカバーし、さらにスイス・オーストリア・オランダ・ベルギー・フランス・デンマークといった周辺各国まで広げている。DBの公式ページによると、現在ICEは1日21万人以上が利用しており、ドイツ鉄道の長距離輸送の60%を担っている。そして、年間利用客数も1992年800万人から、2010年7800万人へと、10倍近く増加した。この20年間でICEは、名実ともにドイツ鉄道の中心的な存在に成長したのである。

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 ICEの存在を初めて知ったのは1980年台の終わりである。日本の鉄道雑誌で見たドイツに登場した新しい高速列車は、真っ白な美しい車体を持ち、新幹線ともTGVとも異なる個性を持っていた。幼少時を過ごしたドイツにこんな列車が走るのか、と胸を躍らせたのを今でも記憶している。
 そして、1991年の開業。新幹線に27年、TGVには10年遅れて走り始めた列車は、ずんぐりとしていてスマートではなかったが、何とも言えない愛嬌があった。そして、工夫の凝らされた車内、さらに天井の高い食堂車。私にとって、憧れのドイツが、そのままICEに重なったのである。しかし、ドイツに行ってICEに乗りたいと強く思ったものの、当時中学生の私にはドイツに行く機会などなかなか訪れるものではない。そうこうしているうちに、高校生になり、浪人をし、と月日は過ぎていったが、ドイツ鉄道への興味は増すばかりであった。

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 1996年に雑誌で見た、新型ICEのモックアップの強烈な印象も忘れがたい。洗練された美しい車体、そして運転室後部に設けられた展望ラウンジ。以来、この新型ICEの登場を心待ちにした。
 1998年に友人たちとRiGを開設してからは、ドイツ鉄道への興味と憧れはますます高まった。しかし、次に眼にすることになったのは、大惨事であった。1999年6月3日夜、ニュースを見ていると衝撃的な映像が眼に飛び込んできた。ICEが転覆し、無残にも押しつぶされていた。あのICEが・・・・。そう、Eschede事故である。犠牲者101人という重い現実。ICEは緊急検査のため、一時運用から外され、復帰しても短縮編成を組むなど、暗い時期が続いた。

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  重苦しい空気の中、一筋の光のようにデビューした新型、それこそがICE-T、そしてICE 3である。特に300km/h走行が可能なICE 3の登場は楽しみで、1999年末は毎日のようにWeb上でICE 3の写真を探し回ったのを覚えている。流麗で美しい外観、そして如何にも高品質な車内のデザインに強い憧れを抱いたのであった。2002年にはNBS Köln-Rhein/Mainが開業、ICE 3は300km/h運転を開始し、開業後11年目でICEは最高速度でようやく世界最速に追いついたのであった。

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 ドイツを訪れる機会がようやく訪れたのは2005年3月のことであった。20年ぶりのフランクフルト空港に降り立ち、空港駅ホームに降り立つと、程なくICE 3が入線してきた。その瞬間、ICE 3は私にとっては他の鉄道車両とは全く異なる特別な存在になったのである。

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 ICEはその後も進化を続けている。気動車バージョンのICE-TDも登場する一方で、高速新線の整備も進み、年々ネットワークも拡充されていった。その中でも、2007年のパリ直通は特に印象的な出来事であった。
もちろん、良い面ばかりではない。Eschede事故以後も、ICE-TDがトラブルが続発して一時運用を完全に外れたり、最近の空調や車軸問題など、トラブルも少なくなかった。しかし、そんな中でもICEがここまで成長してきたのは感慨深い。

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 幸いにも2005年以降、何度か渡独する機会に恵まれ、ICEは非常に馴染み深い存在になった。開業当時から活躍し、長い編成で未だに圧倒的な貫禄が漂うICE 1、目立たないが主要路線で柔軟な活躍をするICE 2、準幹線をカバーするICE-T、そしてドイツ鉄道のフラッグシップにふさわしいICE 3、それぞれに魅力がある。そして、これらの車両がこれからも長く活躍することを願う。

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 来年には新型の407形Velaro Dがデビューする。先頃、ICE 1やICE 2の後継車となるICxも発注された。新しい時代は確実に近づいている。次の10年、そして20年、ICEはどのように変貌するのであろうか。興味は尽きないのである。
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hikari

ICE20周年を記念して、夏の土曜日はICE祭りでしょうかね?
最後の一枚のような光景を再現したいですが、どうなることやら…
by hikari (2011-06-02 15:44) 

Akira

こんばんは、HUHさん。

奇しくも同じタイトルでブログを記すことになっていたとは...。私もなんだかんだでICEには縁のある身で、そのエピソードなどを記しましたが、HUHさんと言えば、やはりICEですね。
今になって思うのですが、20年前のこの日は今日のドイツの鉄道の変貌の最初のきっかけだったのかも知れません。電車(もどき?)の固定組成や純白に赤いラインの列車は今も同じです。(若干は違うが..)

この先ドイツの鉄道は更に進化をするでしょうが、ICEは当分走り続けるでしょうね。
by Akira (2011-06-02 20:25) 

HUH

hikariさん
是非、各ゲージ揃い踏みのICE祭りにしましょう!駅舎も楽しみにしています。
by HUH (2011-06-04 22:13) 

HUH

Akiraさん、こんにちは。
やはり考えることは同じでしたね。
おっしゃる通り、ドイツ鉄道の変貌のきっかけは、このICE登場と、そして民営化でしょうね。この先、どのように変わっていくのか、本当に楽しみです。
by HUH (2011-06-04 22:17) 

Y.N

私が初めてICEに乗ったのは91年の秋でまだ登場直後でした。
あの大きな椅子、リクライニングと言うよりお尻が沈み込む「ゆりかご」シートは快適でした。
似通った椅子はJRバスのダブルデッカーで採用されていますが良く利用する「東海道昼特急」でさ良く眠れます。
あと、LHのB747-400でも椅子を倒すと前が上がりました。

所で、登場間もないころのICE-1の1等オープン席の一方向座席は向きを変えられる車両がありました。Apmの様に簡単に向きを変えられず何度か挑戦しましたが判らずじまいでした。
ただ、友人が向きを変えて座っていたら車掌に「後で元に戻す事」と注意されたらしいです。

Eschede事故の二ヶ月後に渡欧した時は、代替列車だらけでした。旧DR
の急行客車や、他国の応援列車等・・・これらの列車には103が大活躍していました。

最近の渡欧時も必然的にドイツ内はICEばかりでした。
私個人的には、車内はリニューアル前のICE-1 外観はICE-3が最も好きですね。
by Y.N (2011-06-06 04:39) 

senichi

こちらでは初めまして、当ブログへのご訪問有難うございました。
ICEを初めて目の当たりにしたときの感動は、おぼろげながら覚えています。
あの時から約15年近く鉄道から離れ今また見直してみたら、ICEを含む欧州鉄道の変化に驚くのと同時に、あの時見たICE1が既に旧式扱い(まだ現役ですが)な事にショックを受けて最近までまさに浦島〇郎状態でした。

これからもICE3の様な魅力的なICEが出て来る事を願っています。
by senichi (2011-06-06 12:43) 

HUH

Y.Nさん
返信がすっかり遅くなり申し訳ありません。
ICEの昔話を有難うございます。私も初めて利用したのは改装前のICE 1でした。私は今のシンプルな椅子が好みですが、あの大きな椅子の方が好き、という意見もそれはそれで分かります。
今は定員も増えて転換できるシートもなくなりましたが、日本人は椅子が転換可能かどうか、という点にかなりこだわりますので、そういう意味でも昔の方が良かったかもしれませんね。(私は進行方向と反対向きに座るのも、列車のスピード感が体感できて嫌いではありません)

RiGの古い写真には、Eschede事故直後のものが結構多いです。編成の短いICE 1、引退するはずだった103牽引の代替列車などなど。あれから、もう12年も経過したのですね。
by HUH (2011-06-23 14:17) 

HUH

senichiさん
コメントを有難うございます。また返信がすっかり遅くなり申し訳ありません。
ICE 1は確かに旧型になってしまいましたが、2020年頃までは使用予定、まだまだ現役です。引退前に是非もう一度(2度でも3度でも)どうぞ。
一連の新型車両も悪くはないのですし、登場が楽しみですが、私はICE 3以上の車両はそうそう出てこないと勝手に思っています。それくらい思いれがあるということでしょうか。おかげで、模型でも8編成・・・・すっかり増えてしまいました。
by HUH (2011-06-23 14:49) 

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