SSブログ

2月11日 Paris → Mannheim [ドイツ鉄道旅行 2011]

 Paris Gare du l’Est パリ東駅には6時20分に着いた。ここからはFrankfurt (M) Hbf行のICE 9551に乗車する。Frankfurt (M) – Paris間のICEには、フランス直通に対応するICE 3MFが使用されるが、元々6編成しかないところに、事故などで運用が外れた編成があり、しばしばTGV-POSによる代走や、運転区間の短縮が行われている。今回も心配でならなかったが、北駅と違って利用客がまだらなコンコースを抜け、ホームに行くと、白いICE 3MFの編成が目に飛び込んできた。これで一安心である。

1.jpg

 ICE 3MFに近づくと、ICE 9550 (Frankfurt (M) → Paris)と表示されているが、おそらく前日の表示が残っているだけで、これからICE 9551としてFrankfurt (M)に向かうのであろう。
 発車まで時間があるので、他のホームに目を向けると、TGV-POSやTGV-Rが停車中である。そのTGV-POSに目を向けると、何だか塗装が異なる。編成番号は4402、そして誇らしげな「574.8 km/h」の文字、そう、この編成は高速記録を樹立した編成なのである。記念すべき編成に出会えるとは、運が良い。

3.jpg

2.jpg

 構内の発車案内板に、ICE 9551は3番線から発車と案内が出た。やはり、先程から停車している編成がICE 9551になるのである。充当されるのは、406形Tz 4685編成、ICE 3MFのラストナンバー、愛称は“Schwaebisch Hall”である。せっかくなので、列車のいない2番線から編成を眺める。冬だけに汚れも目立つが、それでも夜明け前の暗い構内に、白く流麗な車体は美しい映える。

4.jpg

地下通路を通って、3番線に移動し、先頭から乗り込む。

6.jpg

5.jpg

7.jpg

 私が乗車するのは先頭の21号車、2等車のラウンジの17番席である。運転席のすぐ後ろの右通路側、ICE 3では私が最も好きな席である。今回はレールパス用の指定券がうまく購入できず、通常のチケットを購入したが、枚数限定の割引運賃が適用され、Paris → Frankfurt (M)で39 Euro、これは安いと思う。レールパスは1等車用を所有していたものの、今回2等車を選択したのは、言うまでもなくICE 3MFの旅を先頭で楽しみたかったからである。21号車を見る限りでは乗車率は50%にも満たない程度、私の隣の窓側も空席だ。
 既に運転席では、年配の運転手が発車準備を進めている。まだ夜明け前、ラウンジは運転手の視界を妨げないため、2、3か所の読書灯が点いているだけで暗い。運転席のすぐ後ろはボタン1個でスモークに変えられるが、幸いにも今日の運転手はスモークにはしていなかった。
 7時03分にピーピーピーという警報音と共に、扉が閉じられた。7時04分定刻に、インバータ音を響かせながら、ゆっくりとパリ東駅を発車した。構内を抜け、スピードが上がる頃、車内放送がフランス語、ドイツ語、英語の順で行われた。しばらく複々線区間が続く、並走するのはRER-E線のはずである。列車は150km/h程で走行、Pantin付近で右にLGV東ヨーロッパ線の拠点となる車両基地が広がり、TGV-POSやTGV-Rの姿が目に入った。
 パリ東駅から14km、Le Chenay-Gagny付近からさらに加速し、列車は200km/hに達する。この辺りは在来線と並行する複々線区間、RERを軽々と追い抜いていく。そこへパリへと向かうTGVとすれ違った。随分朝早くからTGVが設定されているものである。
 程なくして、列車はさらに加速していく。暗くて様子が分からなかったが、どうやらLGV Est européenne (LGV東ヨーロッパ線)の高速新線区間に入ったようだ、ちょうど、パリ東駅から22.7kmの地点である。列車は250km/hに達する。TGVと再びすれ違い、早朝でも運転本数はなかなか多い様子である。
 ようやく空が明るくなり、外の様子が分かるようになってきた。どんよりと曇っていると思ったら、雨も降り始めたが、幸いにもしばらくして止んだ。車窓には田園が広がるヨーロッパらしい光景が広がる。高速運転中でも揺れは小さく、乗り心地はいつもながら良い。ICEの2等席は簡易リクライニング、座席は堅めで、サイズも特別大きいわけではないが、なかなか快適で疲れを感じさせない。この座席の設計は本当に優れていると思う。
 ICEは250km/hほどと抑え気味の走りを続けていたが、7時40分頃にようやく300km/hに到達する。7時47分にChampagne-Aedenne TGV駅を通過、高速新線の入口から113kmを走ったのだから、速いものである。この頃、ようやくLGV Est européenneの営業最高速度である320km/hに到達する。





 一旦160km/h程度に減速、Tilloy et Bellayを通過する頃、乗務員がコーヒーと軽食を運転手に届ける。日本では考えられないが、ヨーロッパでは日常的に見かける光景である。列車は再び加速、300km/h以上を維持しながら、Meuse TGV駅を通過する。
 高速新線に入って263.4kmのPrény付近で250m/hまで減速、この先でMetzやNancyへの分岐がある。その後は再び320km/hでラストスパート。



8.jpg

9.jpg

 Loraine TGV駅を通過、再びTGVとすれ違う。

10.jpg

 8時22分、列車は減速、8時26分LGV Est européenneから左へと分岐していく。高速新線区間はここまで301.4km、本当に速い。

11.jpg

12.jpg

 在来線に入った列車は150km/hほどで走る。ここで少々お腹もすいたので、BordBistroに行くことにした。1等車だと軽食が出るが、2等車は車内販売もないし、BordBistroを利用するしかない。BordBistroは25号車、それにしても車内はひどい揺れで、移動には一苦労する。高速新線区間やドイツの在来線ではこのような経験はしないから、軌道の問題かもしれない。
 21号車は空いていたが、その他の2等車はなかなかの混雑であり、全体として7割程度の座席は埋まっている様子であった。BordBistroはコーヒーを飲む人がいたくらいで空いていた。ここで生ビールとグーラッシュを注文する。ここで食べるか、と尋ねられ、そうすると答えると、BordBistroの一角にある2等席部分 (実際はレストラン席として使用されていることが多い)に案内された。ビールはお馴染みのBecks、グーラッシュはパンもついてなかなかのボリューム、軽い食事には十分である。

13.jpg

14.jpg

 食事を済ませ、2等車の様子を眺めながら、再び21号車の自席に戻る。

47.jpg

48.jpg

15.jpg

16.jpg

17.jpg

 ICE 3の車内を歩くと、デッキから客室内までデザインに途絶がなく、統一感がある。無駄な装飾はないが、車両の隅までどこを見ても隙がなく、木目調の壁材と黒や紺のシートがマッチして、高級感を保ちながらも温かみを感じさせるデザインである。車内デザインの完成度がこれほど高い車両は私には思い浮かばない。
 自席に戻るともう列車は減速しており、まもなく最初の停車駅、Forbachに到着する。8時47分、定刻より1分遅れ、概ね順調である。

18.jpg

19.jpg

 Forbachは構内はある程度の規模があるが、駅舎はこじんまりとしている。Frankfurt (M) – Paris間の5往復のICE/TGVのうち、この駅に停車するのは3往復のみであるが、ICE 3MFのうち、Tz 4684編成の愛称は »Forbach-Lorraine«、すなわち、この街の名前からとられている。
 Forbachを8時49分定刻に出発すると、4km程で国境、フランスからドイツに入る。国境付近を通過する時に、運転室後部がスモークに帰られたが、直ぐに戻った。電源方式も交流25kV 50Hzから交流15kV 16.7Hzに代わり、左側走行から右側走行となた。Saar川を渡り、右に大きく曲がると628形と並走し、いよいよドイツに入ったことを実感する。

20.jpg

 まもなく、Saarbruecken Hbfに到着、8時57分定刻である。駅構内には425形や628型が停車中である。

21.jpg

22.jpg

 SaarbrueckenはSaarland州の州都、この地域の中心都市だけに乗降は多く、乗客は無むしろ増えたようだ。ここで警官が乗り込んできてパスポートチェックを受ける。フランスとドイツの国境でパスポートをチェックするとは、予想外である。
 Saarbruecken Hbfを9時ちょうどに出発する。拠点駅だけに、多くの貨物機が停まっている。

23.jpg

 ここからHomburgまではNeunkirchen経由の北側のルートと、Rohrbach経由の南側のルートがあるが、ICE 9551はHbfから右に大きくカーブして、南側のルートを取る。Saarbruecken Ostを通過するとSaareguemines方面の路線と分かれ左へ大きくカーブして、東へと進行方向を変える。

24.jpg

 しばらく細かいカーブが連続しスピードは100km/h にも達しない速度で走る。50km/h程度に減速してSt. Ingbertを通過、その次のRohrbachの手前では軌道工事が行われており、複線の片側が閉鎖され、単線で運用されていた。工事区間を抜けたRohrbachで貨物線が分岐する。

25.jpg

 Rohrbachの先で左にカーブすると、路線は直線的になるが、スピードは120km/h程度である。
Homburgを過ぎると160km/hまで加速する。ここからはS-Bahn Rhein-NeckerのS1系統も走る区間となるが、線路はS-Bahnと共有するため複線のままである。S-Bahnに充当される425形と頻繁にすれ違う。

26.jpg

 ICE 3らしい、軽快な走りでさらに東へと向かう。

27.jpg

 Einsiedlerhofを通過する時に、随分と車運車が止まっていると思ったら、オペルの工場があるのだった。程なく減速、TaurusのICとすれ違った頃、正面にサッカースタジアムが見えてきた。1954年の西ドイツ・ワールドカップ優勝に貢献した伝説の選手にちなんだ、Fritz-Walter-Stadionである。このスタジアムを本拠とする1.FC Kaiserslauternは1950年代のドイツ・ブンデスリーガを席巻し、今でもKaiserslauternの人々の誇りである。残念ながら最近は低迷しているが、ブンデスリーガ2部から昇格し、復活の兆しが少し見えているのは嬉しいことである。

28.jpg

 Fritz-Walter-Stadion のそびえる丘の麓がKaiserslautrn Hbf、9時35分定刻に到着する。

29.jpg

30.jpg

 若干の乗降があり、9時37分に発車、ちょうど185形の牽引する貨物列車とすれ違う。

31.jpg

 列車は150km/hほどに加速するが、それもBingen方面への貨物線が分岐するHochspeyerまで。その後は山岳区間の様相となり、小さなトンネルと急カーブが連続し、せいぜい100km/hしか出ない。ICEの走る国際路線上の区間とはとても思えない。

32.jpg

33.jpg

 Neidenfels Hpの先で右側から保存鉄道が分岐している。ここはNeustadt鉄道博物館の保存鉄道である。

34.jpg

 列車は相変わらず100km/h程度でスピードが上がらない。程なくNeustadt Hbfを通過する。と、→に写真でみた記憶のある機関車が。何と派手なTouristik-zug塗装をまとった103 220である。そういえば、Neustadt鉄道博物館に保存されているのだった。

35.jpg

 Neustadt-Boebigを通過すると、これまでと打って変わって、10km以上直線が続く区間となり、160km/hへスピードが上がる。そこへICE 3とすれ違う、Paris行のICE 9556であろう。

36.jpg
 
 Boehl-Iggelheimの先で短絡線へ入る。S-BahnはSpeyerからの路線と合流してSchifferstadtを経由するが、こちらは1.4km分ショートカット、Limburgergofで再び合流する。

37.jpg

38.jpg

 間もなく減速、左側に425形などが大量に停車するヤードが広がり、徐行でLudwugshafen Hbfの最も右側のホームを通過する。

39.jpg

40.jpg

41.jpg

 正面右から左へと、MannheimからWorms方面へ140形牽引の貨物列車が駆けてゆく。徐行で右に左に急カーブをきり、Ludwigshafen Mitteを通過するとライン河橋梁である。

42.jpg

43.jpg

44.jpg

 渡りきったところで右に大きくカーブすると、10時17分定刻にMannheim Hbfの3番線に到着する。

45.jpg

 Paris Gare du l’Estから3時間13分、3年半ぶりのICE 3の旅は、心配した遅延もなく、快適で素晴らしかった。ホームに降り立つと意外にもそれ程寒くない。久しぶりのドイツの空気、ついにドイツに来たことを実感する。

46.jpg

 ICE 9551はMannheim Hbfで方向転換し、10時21分終点のFrankfurt(M) Hbfへと発車していった。
nice!(4)  コメント(5)  トラックバック(0) 

nice! 4

コメント 5

Akira

おはようございます。

読み応え充分の素晴らしいICE3添乗記ですね。まさに自分が一緒に乗車しているような気分になります。それにしてもパリ駅での速度記録TGV-POSに遭遇されるとはラッキーです。

続きを楽しみにしています。
by Akira (2011-02-23 07:55) 

P-ZUG

素晴らしい旅行をされた様でなによりです。私らは不幸にも1等車ラウンジで後ろ向きの眺望だったのでうらやましい限りです。速度記録TGV-POSはまだ同じ時間帯に運行しているんですね。一昨年パリ駅でICE3-MFの出発を待つ間に入線して来ました。
by P-ZUG (2011-02-23 21:35) 

タブレット

予定通り、ICEに乗れてよかったですね。

貴重な映像ありがとうございます。
社内のでHUHさんの様子が目に浮びます。

速度達成のTGV-POSが普通に運行されているのですね。
日本では試験車両の運行は考えられないのですが。

続きを楽しみにしています。
by タブレット (2011-02-24 01:42) 

lucky_k.k

HUHさん、おはようございます。

すばらしい乗車記、ありがとうございます。
私は、単に乗っているだけ。ここまで路線や車両の知識がないと書けませんね。

パスポートの検閲は意外ですね。
私は一度もありません。

マンハイムでの方向転換は、去年の12月では、パリ-からはなし、フランクフルトからはありでした。大幅に遅れたことも原因で経路を変えたんでしょうね。不思議でしたが。

続きを待っています!
by lucky_k.k (2011-02-24 06:28) 

HUH

Akiraさん>
ご覧いただき有難うございます。
ICE 3に乗車するのは疲れます。鉄道地図を持参しますので、チェックポイントが多くて、ゆっくり出来ないのです(笑)

P-zugさん、だんきちさん>
私はICE 3は2等車の方が好きです。十分快適ですし、ラウンジからの展望も2等の方が良いです。
速度記録を達成したTGV-POSの4402編成は、今は通常と同様の仕様になっているはずで、特別な運用は組まれておらず、他と共通で使用されているものと記憶しています。今回遭遇できたのは幸運でした。

lucky_k.kさん>
ドイツの鉄道路線は複雑ですから、大いに興味をひきます。それこそ、自分の列車がどこを通るのか、ということを想像するだけでも、なかなか楽しめます。
lucky_k.kさんの乗られた列車が迂回した理由は分かりません。遅延かもしれませんが、去年、Ludwigshafen - Mannheim間のライン河鉄橋で工事が行われましたので、その影響で迂回した可能性もあります。
こういう迂回運転を簡単に出来し、同じ行先の定期列車でも、走行ルートが異なることがあります。そのな点もドイツ鉄道の面白さかもしれませんね。
by HUH (2011-02-24 21:31) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。