SSブログ

9月4日 Seoul → Busan [韓国鉄道旅行 2010]

 5時30分に起床、この時間のソウルはまだ暗い。身支度を整え、6時20分にSさんとともにロッテホテルを出発、すぐ隣のホテル・プレジデントのロビーでT師匠と合流する。朝のソウルは暑くはないが、蒸している。ホテルの真横の市庁駅から地下鉄1号線に乗り、隣のソウル駅で下車する。
 T師匠はハングルも韓国のことも何も分からないから、今回は「金魚のフンで付いていきます」と仰るが、ホテル周辺も地下鉄も鉄道も下調べは万全、前日ソウル到着後下見もしっかり済ませてあるのはさすが。結局、金魚のフンは私ということになり、T師匠に連れられるまま歩く。地下鉄1号線のソウル駅から地上へ上がると、Korailのソウル駅に出る。

1.jpg

 ソウル駅は1994年のKTX開業に合わせて新駅舎が建てられた。新しい駅舎はガラス張りのモダンなデザインで、新時代の韓国鉄道にふさわしい威容を誇り、Berlin Hbfが連想させる。まだ6時半過ぎだが、ソウル駅ともなると、この時間でも利用客は多く、賑やかである。

2.jpg

3.jpg

4.jpg

 今日は様々な列車を乗り継ぎながら、釜山を往復する予定である。チケットはKorailの英語版を通じて既に予約してある。プリントアウトした予約票を提出すると、係員は慣れた手付きで直ぐにチケットを発券してくれた。私達の乗る列車は7時30分発、まだ時間がある。

5.jpg

 広いソウル駅の構内はKTXの姿が目立つが、隅の方でムグンファが発車を待っているので、早速撮影に行く。牽引機は8200形、Siemensの152形をベースに、現代ロッテムが生産した車両である。スタイルはまさに152形そのもの、鉄道について言えば、まさに日本に一番近いドイツと言えよう。ドイツのそれとの違いはバッファーがなく、連結器が自動連結器となっている点である。塗装はKorailのCIに従い、白のベースに赤と青があしらわれている。

6.jpg

7.jpg

 駅構内にはハンバーガーショップ、韓国料理店、カフェに加え、うどん店まであり、どこも朝食を摂る人で賑わっている。駅弁といえるのかどうか分からないが、ランチボックスを販売する店も開店準備をしている。さらに各ホームにもコンビニが設けられ、雑誌や飲物、菓子類に加え、弁当も売っている。

9.jpg

8.jpg

 朝はKTXの出発ラッシュ、どの列車もかなり混雑しているようだ。我々が乗車するのは7時30分発、KTX109である。

10.jpg


● KTX109 (Seoul → Busan: 408.5km)

 ホームのコンビニで朝食用に弁当を購入しているうちに、7時15分過ぎにKTXが入線してきた。KTX109は従来のKTXをベースに、国産率が高められた新型、KTXサンチョン (KTX-山川)により運転される。サンチョン (山川)はヤマメを意味しており、言葉通り、KTXサンチョンはヤマメをイメージしたデザインである。開発時はKTX-IIまたはKTX-2と呼ばれていたが、営業運転開始に先立って愛称が公募され、サンチョンに落ち着いたとのことである。KTXサンチョンは2010年3月2日から営業運転を開始したばかりの最新鋭車両であり、現在はKTX京釜線・ソウル - 釜山間2往復、KTX湖南線・龍山 – 木浦 2往復、龍山 – 光州 2往復に運用されている。

11.jpg

 KTXサンチョンの最大の特徴は、短編成化が図られたことである。第1世代のKTXは両端の先頭動力車の間に18両の客車が連結されていたが、KTXサンチョンでは8両となった。これは湖南線など比較的需要の少ない区間でも効率的に運行できるようにする目的がある。今のところ単編成による運行のみとなっているが、将来的には2編成併結での運用も予定されており、より柔軟な運用が組まれることになるであろう。第1世代のKTXでは不評だった車内設備にも大幅に改良され、今後Korailのフラッグシップとしての活躍が期待される。
 KTXサンチョンは最初に6編成が製作され、その後も増備が続けられているが、本日のKTX109は02編成が運用されている。正面から見ると、TGVをベースとしながらも、ライト周りなどはICE 3を思わせる。客車も連続窓や側扉のデザインなど、ICEを思わせるデザインで、つい嬉しくなる。塗装は白をベースに青のアクセントが入った洗練されたものに変更されている。

12.jpg

 KTXサンチョンは1・2・4・5~8号車が一般室、3号車が特室であり、4号車には売店とボックス席も設けられている。KTX109は先頭が8号車で、我々は3号車の特室に乗車する。特室は一般席に比べ40%高い特別運賃が設定されており、ソウル – 釜山間の運賃は休日で71,700ウォン、日本円で5,000円強といったところである。釜山まで408.5kmという距離を考えると、日本に比べてかなり安い運賃体系と言うことができよう。
 ホームの高さが低いため、車両にはステップが設けられているが、大きな荷物を持っている場合はなかなか大変であろう。編成が短いだけに、見たところ車内は満席である。特室は1+2列で座席が配置されており、私は通路側の5B席に座る。

13.jpg

14.jpg

 KTX109は定刻にソウル駅を離れる。ノートPCも置けそうな大きなテーブルを出して、まずは先程購入した弁当を食べることにする。プルコギに、卵焼き・キムチ・煮物など数点のおかずが付き、電子レンジで温めたご飯・味噌汁のセットでなかなか充実しているし、味も良い。

15.jpg

 列車は在来線を60~100km/h程で走る。隣の電鉄線には次々と通勤電車が行き交い、その列車本数の多さには驚く。湖南線方面の拠点駅である龍山を通過し、まもなく漢江を渡る。

16.jpg

 ソウルの南の拠点、永登浦も通過する。この区間は最高135km/hとされており、助走区間が続く。仁川へ向かう京仁線が分岐する九老を経て、ソウル駅から17.7km地点、衿川区庁駅に近い始興連絡線分岐で在来線と分かれて地下に潜りトンネルに突入する。列車は一気に加速する、その加速感がなかなか心地よい。光明を通過し、さらにトンネルを抜ける頃には200km/hを超えるスピードで疾走していた。車窓風景も、随分とのどかになり、快晴の天気と相まって気持ちが良い。

17.jpg

18.jpg

 新線区間は最高300km/hだが、揺れは少なく、動力集中式なだけに静かで、極めて快適である。上下方向への軽い揺れはあるが、これはフランス式の軌道の造り方によるもの、という解説をT師匠にして頂く。T師匠の解説は、鉄道の旅を一層興味深いものにしてくれる。特室の乗客にはミネラルウォーターのサービスがある。ペットボトルにはKTXのロゴが入っており、飲むのがもったいなく感じられる。車内の数か所にはテレビモニターが設置され、列車情報の案内に加え、ニュースなども放映していた。韓国では、通勤電車からKTXまで、この種のサービスが普及している。

19.jpg

20.jpg


 まもなく列車は減速、高速新線上に設けられた天安牙山に到着する。天安牙山は長項線の牙山駅に隣接している。

21.jpg

 ソウルからそれほど離れているわけではないためか、乗降は少なく、すぐに発車、再び300km/h走行に戻る。

22.jpg

23.jpg

 デッキは濃紺をベースとしていて、少し落ち着かない気もする。特室では新聞の無料サービスが行われており、新聞ラックが置かれている。また、荷物置き場や補助椅子も設けられているのは、従来のKTXを踏襲している。車内設備の案内は分かりやすいのも好感が持てるところである。

25.jpg

26.jpg

24.jpg

 減速し甲川に沿って走る頃には大田の都市圏に入っている。大田操車場で光州・木浦方面の湖南線が右へ分岐していく。

27.jpg

28.jpg

 こちらは在来線と合流し、まもなく、ゆっくりと大田駅に到着する。構内にはDL牽引の貨物列車が停車中である。大田までは1時間弱、在来線経由の場合はセマウルでも1時間50分かかることを考えると、KTXの速達性は実に効果的である。

29.jpg

 大田は首都機能の一部が移転されており、Korailの本社も置かれた要衝、それだけに下車客も多いが、乗車もあり、車内は思った程は空かない。定刻の8時27分に大田駅を出発すると、15km程は在来線を走る。スピードは120km/hくらいだろうか、曲線が多くなかなかスピードは上がらない。大田駅から約15km走った沃川駅付近で高速新線に入り、一気に加速していく。この列車は大田から東大邱駅まで133.3kmはノンストップであるが、一部のKTXは在来線を経由し、金泉・亀尾にも停車する。

30.jpg

 高速新線は直線的に大邱へ向かうが、在来線は蛇行しながら周辺都市を経由するため、何度か交差する。8200形牽引のムグンファが走っているのが見えたが、あっというまに抜いていく。山がちのところを走っているせいか、空はどんよりと曇り、霧がかってきた。

31.jpg

 しばらくすると再び快晴に戻る、300km/hで移動しているとはいえ、韓国の天候は変化に富む。減速し、大邱北連結線分岐から東大邱までの18kmは在来線を走る。大邱駅を通過すると、間もなく東大邱に到着する。

32.jpg

33.jpg

 韓国第4の都市、大邱のターミナル駅ということもあり、東大邱の構内は広く、次々と列車が発着している。ソウルからのKTXの一部もここで折り返す。降車客も多く、車内も少し空いた。定刻では9時16分の発車であるが、KTX109はしばらく停車した後、9時20分頃に発車した。
 東大邱から釜山までは在来線を走るが、今年の11月には慶州経由の高速新線が開業し、大幅な時間短縮が予定されている。発車して間もなく、その新線が左側に現れる。既に試運転も行われてようで、架線が張られ、信号機も動いていたが、試運転列車は見かけなかった。

34.jpg

 隣の4号車に設けられた売店に行く。従来のKTXは車内販売が行われていたものの、売店などの設備がないことが不評であった。KTXサンチョンでは車内販売を廃止され、代わりにこの売店が設けられた。売店では飲み物・おつまみ・菓子の他、弁当も販売しており、時々乗客がやってきて利用していた。また一角には立ち席ながらテーブルも置かれ、気分転換できるスペースとなっていた。

35.jpg

36.jpg

 農村ののどかな光景の中を走るKTXもなかなか味わい深い。在来線区間だけに曲線も少なくないが、線形自体は悪くないようで、列車のスピードはなかなか速い。実際、京釜線は区間によっては150km/h運転も行っておいる。結局、次の密陽までの50km余りを30分で走破した。

37.jpg

38.jpg

 密陽は一部のKTXのみが停車する。駅舎もこじんまりとしているが、ここでもある程度の下車があり、車内はかなり空いた。密陽を出発すると、次は終点の釜山である。
 車内は壁が木目調とされ、ブラウンのシートと相まって、落ち着いた雰囲気を演出している。床は花柄の絨毯が敷かれており、シートも韓国伝統の模様が刺繍され、韓国らしさをアピールしている。シートは十分な大きさがあり、やや堅い座り心地だが、ホールド感があって身体にフィットし、長時間座っていても疲れない。リクライニング角度も43度が確保されている。足置きとテーブルは前のシートに固定されている。イヤホンを用いれば、オーディオサービスも楽しめ、また各席には車内誌も置かれている。韓国語のみで読めないのが残念なところである。残念と言えば、日除けが2列分一体になっている点も気になる、本来であれば、各列で調整できるようにすべきであろう。

39.jpg

40.jpg

 三浪津で晋州、順天方面へ向かう慶全線が右に分岐していく。晋州は私のルーツの土地、一度は行きたいものである。列車は洛東江に沿って南下していく。美しい車窓風景を満喫しながらくつろぐ。

41.jpg

42.jpg

43.jpg

44.jpg

 亀浦を通過すると、いよいよ釜山の市街地に入っていく。亀浦は釜山金海空港にも比較的近く、地下鉄も接続する、釜山の北の拠点であり、一部のKTXも停車する。列車は洛東江から離れ、一旦東に向かう。南に進路を変えたところで、釜山駅と並ぶターミナルである釜田駅からの連絡線、更に開業を間近に控える高速新線と合流する。左手に釜山港が広がり、無数のコンテナを見ながら、定刻より4分遅れの10時30分に釜山駅に到着する。

45.jpg

46.jpg

47.jpg


 ゆっくりと支度し、車内の様子を撮影してから降車する。

48.jpg
一般席

49.jpg
特室

 乗客がいなくなったホームを先頭部まで歩き、もう一度KTXサンチョンを撮影する。しばらくして、パンタグラフが下され、照明も消えた。しばらく、ここで小休止ということであろう。

50.jpg

51.jpg

 KTXサンチョンはTGVの良さを活かしつつ、性能・車内設備とも非常に高いレベルに昇華させた素晴らしい車両であった。今後のKTXサンチョンの活躍を確信しながら、3時間の充実した旅を終えたのであった。

52.jpg
nice!(3)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 3

南那 轟

もしや・・・と思ってお訪ねしたら、やはりもう始まっていましたね、韓国弾丸ツアーレポート。上野-成田-仁川-京城-釜山は、私も何度か通ったルートなので、たいへん興味深く拝見しています。KTX山川がTGVだけでなくICE3にも似てるというのは、なるほどそうですね。続編を楽しみにしています。
by 南那 轟 (2010-09-09 01:24) 

abe

追記です。

abeさんとNaOさんと良い気持ちで、10分の間に小ジョッキと中ジョッキを平らげたのでした。
by abe (2010-09-09 18:25) 

HUH

南那さん
この秋は空港鉄道が仁川空港-金浦空港-ソウル駅開業、そしてKTXも高速新線が延伸と、大きな変化が控えています。でも、在来線は在来線で面白く、何往復でもしたいと思う程です。韓国の鉄道の楽しみは豊富さは想像以上でした。

abeさん
そんな真実はぼかしたのに、ばらしちゃ駄目です(笑) ビールあるところに我あり、です、仕方がありません。
by HUH (2010-09-12 00:12) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0