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足尾弾丸ツアー [国内の鉄道]

 今年になって、いろいろと用事が多く週末も出かける機会がなかったが、今日は久しぶりにabeさんと弾丸ツアーに出かけた。朝から大宮で仕事上の集会があり、少し参加した後、11時にabeさんと大宮駅で待ち合わせ。
最初に乗車したのは東武野田線である。野田線を走る8000系電車は私鉄で最も多い712両が製作された。私も子供のころからずっとお世話になっており、最も馴染みの深い車両であるが、最近は廃車が進んでおり、昨年末をもって伊勢崎線の浅草口から撤退、私の実家近くを走ることもなくなった。古さは隠せなくなっているとはいえ、さびしい限りである。しかし、野田線は全列車が8000系による運転で、まだまだ健在である。

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東武野田線8000系とJR宇都宮線を鬼怒川温泉へ向かう東武スペーシア

 11時08分発の柏行は空いていた。8110Fは最も初期に造られたグループ、廃車もそう遠くないかもしれない。大宮公園で宇都宮線と別れ、列車はこまめに停車しながら住宅地の中を走る。車両の内外に古さは隠せなくなってきているが、乗り心地は相変わらず良い。人形の街であり、野田線の拠点駅の一つ、岩槻を過ぎ、春日部には11時29分に着いた。
 春日部では11時33分発、スペーシアきぬ111号鬼怒川温泉行に乗り換える。車両は100系105F、東武鉄道の看板車両も登場してから20年を迎えるが、古さは感じさせない。正面にはYokoso Japanのロゴが付いている。

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(abeさん撮影)

 車内は満席の混雑、abeさんは3号車、私は2号車と分かれて座る。売店に行くと、残念ながら弁当類は全て売り切れ、仕方がないので、焼きそば・シューマイと生ビールを購入する。電子レンジで温めるだけの冷凍食品だが、シューマイはなかなか美味しかった。観光客で満員の車内は賑やかな雰囲気、アルコールを口にする人も多い。座席は大柄で座り心地も素晴らしいが、一列前の座席から圧迫感があるのも事実。今の車両なら、もっとコンパクトなものになるだろう。各部の装飾も手抜きがなく、高級感を演出している。登場から20年経っても、特急車として揺るぎない地位を保つだけのことはある。
 スペーシアは関東平野を快走し、30分ほどで栃木に到着する。本来はここから両毛線に乗り換える予定であったが、大宮で会った時に急遽予定を変更し、このまま下今市まで乗り通すことにした。栃木で若干の降車があり、3号車に移動してabeさんと合流する。天気は快晴、車窓は農村の風景が広がり、男体山など日光の山々が美しい。

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 新鹿沼を過ぎ、杉並木が現れるとまもなくして下今市に到着する。12時39分である。
ホームの向かい側に停車中の6050系2両編成の東武日光行に乗り換える。スペーシアから東武日光行乗り換える客は案外少なく、大半はこのまま鬼怒川温泉方面に向かうようだ。
 東武日光まではひたすら上り勾配が続く。車窓も山岳路線の体をなす。

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 JR日光駅を左手にみて、12時49分東武日光駅に到着する。

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ここで昼食用の駅弁を調達、私は「ゆば御膳」「日光鱒寿し」を購入する。早速日光観光へ繰り出す・・・・わけもなく、駅前から13時01分発の日光市営バスに乗る。

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 小型のバスだが、乗客はわずか4人、ガラガラである。最後部に座り、「ゆば御膳」を食べながら、日光の町を眺める。メインストリートを5分ほど走ると、左手に神橋が見える。

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(abeさん撮影)

 このあたりは日光三社寺が集まる観光の中心地、お土産店が並び、人出が多い。バスはいろは坂・中禅寺湖へ向かう国道120号線から離れ、国道122号線を足尾方面へ向かう。山道にはわずかながら雪が残っている。

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(abeさん撮影)

 細尾峠の下を貫く全長2765mの日足トンネルを抜けると、渡良瀬川に沿って走る。わたらせ渓谷鉄道に出会うと、バスは一旦右折し、間藤の町中を走る。道路沿いには間藤の賑わいを紹介する看板が立てられ、実際狭い通りの両側には住宅や商店が並ぶが、多くは廃屋である。渡良瀬川両岸の植物の少ない山の風景、うらさびれた町の雰囲気から、足尾の過去の栄光と現在の衰退を実感させられる。
 間藤駅の先には、貨物専用の路線が足尾本山まで伸びている。この路線は実質的には既に廃線となっているが、わたらせ渓谷鉄道には撤去費用が捻出できないため、扱いとしては現在も休止路線のままである。そのため、旧線跡がそのままの姿で残り、不気味な印象も残す。その貨物線の終点、足尾本山駅付近でバスは折り返す。

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足尾本山駅(abeさん撮影)

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足尾本山へと延びる休止区間

 間藤駅前を過ぎ、再び国道122号線を走る。駅前に保存車両が留置されている足尾駅前を過ぎ、さらに通洞駅前を通って、13時52分銅山観光入口で下車する。abeさんはあまり気が進まない様子であったが、せっかくここまできたのだから、足尾銅山を観光したくなったのである。
 足尾銅山観光に行くと観光客の姿はまばら、私たち以外では年配のご夫婦一組だけだった。チケットを買うと、トロッコ列車に乗るように言われる。トロッコ列車15分間隔の運行である。列車はトロッコ車2両、そして先頭に機関車が連結されていた。まもなく発車、機関車がディーゼルエンジンを響かせ、ゆっくりゆっくりと急勾配を下りていく。

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 勾配を下りきったところで列車は停車、何とここで機関車を切り離すという。

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 その機関車が離れたところで、今度はトロッコ車のみ2両で発車、こちらも動力が付いているのである。予想以上のスピードで通洞口から坑内に侵入、空気が急に冷たくなる。すぐにトロッコは終点に到着する。

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(abeさん撮影)

 この通洞は6km以上続いているというが、観光用に整備したのはごく一部だけなのである。坑道の雰囲気が味わえたし、機関車の解結があったりして、特に鉄道ファンには予想以上の充実ぶりと感じたが、この乗車区間の短さだけは残念であった。
 あとは徒歩で坑道を歩き、展示を眺めていく。基本的には人形を用いて、時代ごとの掘削風景を再現しているだけである。ただ、寒さ、そして天井からしたたり落ちる水から、銅山の様子を実感出来る。銅山全体を紹介する映像シアターもあり、思ったよりも面白かった。

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 展示室を出ると、先程乗車したトロッコ列車が機関車を解結する場所であった。ちょうど、わずかな観光客を乗せたトロッコ列車が通洞の中へと吸い込まれていった。

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乗客を降ろし通洞から出てきたトロッコ列車


(abeさん撮影)

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保存車両

 せっかくなので、このトロッコ列車を観察していたら、驚くべきことに気がついた。機関車を連結した急こう配区間はリンゲンバッハ式のラック鉄道なのであり、機関車はこのラックレール区間用に連結されているのであった。こんな短い区間なのに、ラック鉄道に乗れて、機関車の増解結まで見れて、、、と充実した鉄道シーンが展開されるのは全く予想外、銅山観光にあまり乗り気でなさそうだったabeさん共々大喜びし、次の列車がやって来るまで待って、写真を撮ったのであった。

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ラック対応の機関車を解結

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トロッコ車のみが発車


(abeさん撮影)

 銅山観光にすっかり満足して、通洞駅に戻る。まだ桐生方面の列車が来るまでは時間がある。駅前で客待ちをしているタクシーを拾い、足尾駅まで行く。足尾駅は無人駅、木造の古い駅舎が印象的である。

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そして、駅横には国鉄時代の塗装のキハ35が2両、さらに貨車が2両保存されている。

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 これらを眺めるうちに、15時11分間藤行が到着、我々はこの列車に乗り込み、終点までの一駅間を乗車する。


(abeさん撮影)

車内は外国人の団体、そして地元客がわずかに乗っているだけだった。15時15分間藤に到着、駅舎はモダンだが、誰もいないようだ。線路は足尾本山に向けて続くが、途中で一部が花壇となり、列車の運行はもはや絶望的である。

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 駅の近くの商店でビールを調達し、先程の列車の折り返しの桐生行に乗車する。車両は「わ89-310形313」、1990年製の車両である。外観は塗装が剥げた個所を補修した跡が目立ち、整備費用の捻出が大変なことが伝わってくる。車内は一部ロングシート、他はボックスシートで、乗客は10人にも満たず空いている、abeさんと私でボックスシートを一つ占領する。

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 15時35分定刻に発車すると、列車は渡良瀬川に沿ってゆっくりと南下していく。足尾・通洞と川沿いに、既に打ち捨てられたような大きな銅山関連の施設が並ぶが活気は全く感じられない。

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(abeさん撮影)

 公害の影響か、禿山になっている場所も多く、寒々とした光景である。既に日がかなり傾き、暗くなってきて、寂しさが一層強く感じられる。まだ残してあった日光鱒寿しを開ける。身の厚い鱒を載せ、中に湯葉を挟んだ押し寿司である。東武鉄道の駅弁では、浅草駅のあなご寿司とこの日光鱒寿司が特に素晴らしいと思う。

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 笠松トンネルと抜けると、栃木県から群馬県となる。草木湖を渡ると神戸駅に到着する。東武鉄道1720系DRCの中間車を利用したレストランが併設された神戸駅は、富弘美術館の下車駅ということもあってか、まとまった乗車があり、車内はいくらか賑やかになった。神戸駅からは女性のアテンダントが乗車し、車内改札・乗車券の発券を行う。
 水沼駅は温泉センターが併設されていることで知られている。温泉センターは21時までの営業で賑わっていた、おそらく自家用車で訪れる人が多いのだろうが、ここでも乗客は増えて、半分くらいの座席は埋まったようだ。外はかなり暗くなってきた。

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 ずっと渡良瀬川の渓谷を走ってきた列車が市街地に入ると、まもなく大間々に着く。ここでアテンダントは下車、外から車内の乗客に笑顔で頭を下げていたのが印象的であった。数分間の停車の後、大間々を発車し、運動公園を過ぎると、上毛電鉄のガード下をくぐる。右から東武桐生線が近づき、16時52分定刻に相生駅に到着する。

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 我々はここで下車する。相生駅は東武桐生線との乗り換え駅、わたらせ渓谷鉄道の委託駅となっており、出札や東武鉄道の特急券の販売までわたらせ渓谷鉄道の駅員が行う。木造の小さな駅の改札横の特急券乗り場には5人ほどが並び、我々も列に加わる。無事に特急券を入手し、東武鉄道のホームに行くと、まもなく浅草行りょうもう38号が入線してきた。車内は空いているが、次の新桐生でまとまった乗車がある。このまま東京へ帰るabeさんを残し、藪塚で私は下車。

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 明日は太田で仕事、今日は藪塚駅に近い温泉に一泊することとしたのである。こじんまりとした藪塚駅に降り立つと、外はもう暗い。冷たい風に吹かれながら歩き出すと、踏切でちょうど列車がやってきた。せっかくなので写真を撮り、すっかり満足して温泉へ向かったのだった。

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